Story  ID:yNjdhz5t0 氏 (336th take)
 あるライブツアーのアンコール。

「アンコールありがとうございます!」
「どうもありがとねぇ」

 着替えて出てきたメンバーに客が歓声を上げ、それに手を上げ答えていく。

「えー…このツアーに何回か来てくれてる人はもう知ってるかもしれないけど、今回のツアーではアンコールでメンバーのリクエストした曲をカバーしておりまして…」

 それに客はおおー、と声を上げる。

「今回はばらしーがリクエストした曲をやろうと思います!」

 真紅がそう薔薇水晶を指差し、はにかんだ笑顔で客に手を振って「かわいー!」「ばらしー!」と歓声が沸き起こった。

「それじゃあ行きましょう。ばらしー、曲紹介をして頂戴」
「うん…私がリクエストしたのは…。P-MODELで『フル・へッへッへッ』だよ…じゃあ、バスドラ、カモン…!!」


 薔薇水晶がそう翠星石に合図を送ると、低いバスドラの一定のリズムがフロア中に響き渡る。
 それに観客も乗って体を揺らし始め、大体会場が一体になってきた頃、薔薇水晶が両手を上げた。

「クラップ!!」

 その合図とともにパパン、パンと手拍子をし、会場も合わせて手拍子をしていく。
 それを少し続けて真紅が調子を掴むとマイクに口を近づけ歌い始めた。

「フルへッへッへッへッへッへッ(←紅)」
「へェーウェーエエェー…(←雛)」

 そこで二人とも区切り、メンバー全員がパパン、と手拍子をする。
 その異様な歌に観客は一瞬どよめいたが、すぐに調子を取り戻し皆テンションが上がってきた。

「もーほぉー(←紅&雛」
 パン、パパン、パン!!

 薔薇水晶の手拍子に、会場も合わせて手拍子していく。会場もメンバーも息はピッタリだ。
 だが、当然この曲はこのまますんなり行く曲ではない。

「フルへッへッへッへッへッへッ…(く、苦しい…!)」

 薔薇水晶のカラオケで分かってた事だが、後半になるとかなり苦しくなってきた。
 最初は雛苺も一緒に歌ってたが後半はほとんど真紅のパートだ。

「フルへッ…ヘ、へッヘフッへッハッ…ホッ…!」
「へェーウェーエエェー…(真紅、顔が名前どおり真っ赤なの…)」

 雛苺が歌いながら真紅の顔を見ると、もう目が血走って額には血管が浮かんでいる。もう酸欠寸前だ。
 それは観客にも分かり、歌の合間に「ガンバレー!」とかの応援が聞こえて来た。

「フ…へッ…ウェッハッホッホ…へッへ…!!」

 だが真紅は頭がくらくらし、更に目の前が白くなってきて訳が分からなくなってきている。
 分かるのはしっかり歌い終わらなければ薔薇水晶が怖いと言う事だった。
 そして。

「……ッへッへ…フッホッへ…ウエェッ!!」

 クラクラな頭で地面を思い切り踏みつけ、それと同時に歌い切った。
 最後まで歌いきった真紅に大きな拍手と歓声が湧き上がる。
 それを聞きながら、ゼイゼイと息を切らしフラフラになりながら真紅は思った。
 こんな歌は絶対作りたくない、と。

 ちなみにこの模様は新作CDの初回特典DVDに収められ、多くのファンに衝撃を与えたとか。




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最終更新:2008年07月18日 10:14