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Story  ID:27yhN7OW0 氏(18th take)

(無題)
Lyrics 青玉 ◆cEc2P5uewI 氏
〇月×日

深夜、水銀燈のマンションにて。

銀「懐かしいわねぇ。こんなの作ってたわねぇ。」
紅「ええ。どの曲もとても懐かしいものばかりなのだわ。」
銀「あ、これって確かデビュー曲候補だったやつよねぇ?」
紅「そうね。最後の最後までどちらにするか悩んでた気がするわ。」

私は長年住み慣れたマンションに別れをつげ、引越しをしたばかりだ。
その準備の際にクローゼットの奥からデビュー前に自分が作った曲が見つかったのである。

銀「あの頃は真紅もこんな真っ直ぐな詞を書いてたのね……。」
紅「……それは一体どういう意味か詳しく説明して貰おうかしら。」
銀「じ、冗談よぉ。」

銀「それで、出て来たのはこれで全部かしら?」
紅「とりあえず形になっている曲はこれだけね。」
銀「他にもあるの?」
紅「詞だけの曲ならもうひとつあるわ。」
銀「どれかしら?見せて見せてぇ。」
紅「確かバックの中に……、ああこれよ。」

私はシワだらけのルーズリーフを取り出して水銀燈に手渡す。
水銀燈はその紙を見て、嬉しいような恥ずかしいような表情をしてこういった。

銀「やだ、これって……。」
紅「思い出したかしら?」
銀「私が高校生の時に書いた子じゃない――。」

銀「今更こんなのが出てくるなんてねぇ。」
紅「最初見た時は私も驚いたわ。」
銀「まさか真紅が持ってたなんてねぇ。」
紅「それは私の台詞よ。」

そういってお互いの顔を見て笑いあう。
その表情はとても穏やかなもので、まるで数年振りにあった友人に向けるようなものだ。

紅「そういえばなんでこの詞には音をつけなかったの?」
銀「なんでだったかしらぁ……。」
紅「この詞は今見てもとても見事なものよ。」
銀「そ、そう?」
紅「もちろんよ。音さえつければ今すぐ発表出来ると思うわ。」
銀「珍しいわね、あの真紅がここまで素直に褒めるなんて。」
紅「あら、心外ね。私だって良いモノには素直に良いというわ。」

紅「――それだけに貴女がこの曲を完成させなかった理由が解らない。」

銀「……ただの気まぐれよ。それ以外には何もないわ。」
紅「じゃあなんであの詞が私の家にあったの?」
銀「あら、真紅が持って行ったんじゃなくて?」
紅「この紙がなんでこんなにぐしゃぐしゃなのかわかる?」
銀「さあ?わからないわぁ。」
紅「あくまで言わないつもりね。」

紅「これはね、ごみ箱に捨てられていたものを私が拾ったの。余りに見事な詞だったから。」
紅「そして捨てたのは他でもないこの詞の生みの親。」
紅「水銀燈、貴女よ。」
銀「……それ、くんくん?」
紅「ち、違うのだわッ!」
銀「今週のくんくんと台詞廻しが同じなんだけど。」

・・・・・・しまった。

紅「う、うるさいわね!そんな細かい事よりなんで曲を書かなかったの!?答えなさい!!」
銀「図星だからって興奮しちゃだめよぉ。」

銀「私が曲を書かなかった理由ねぇ……。」
紅「す、素直に白状しなさい。」
銀「1番素直じゃないのは……ってわかったわよ言うわよ。」
紅「よろしい。」
銀「たいした理由じゃないわよ?」

銀「その時の私には自分で書いたこの子が眩しすぎたの。」
紅「水銀燈……。」
銀「それだけよ。」

気がつけば時刻は既に深夜。
最初はすぐに始めるつもりだったのだけれど、少し話に夢中になりすぎてしまったようだ。
私は荷物の中からペンケースと楽譜、そして長年使い込まれてきたギターを取り出す。

銀「で、大体予想はつくけれど。」
紅「なに?」
銀「その見覚えのあるギターは何かしら?」
紅「え?ただのギターよ?」
銀「私が昔あげたやつじゃない……。わざわざもってきたの?」
紅「どうせ曲を作るならこの子がいいと思ってね。」
銀「呆れた……。鳥が囀るにはまだ早過ぎる時間よ。」
紅「私の家ではね、鳥は夜行性なの。」

紅「貴女が乗り気ではないのであれば私が全部曲をつけてしまってもいいけど?」
銀「あら、いってくれるわね。」

銀「我が子の巣立ちを見送るのは親のつとめよ。人間も鳥も、歌だってそれは変わらない。」



銀「――この子には苦労をかけた分しっかり幸せになって貰うわ。」

「無題」
Lyrics:水銀燈 Music:水銀燈×真紅 

銀色に輝いた雪の結晶がこぼれ 凍える空に貴方の笑顔映している 
金色の夕焼けを雀が飛び交うよ やがて黒くなりゆく空埋める星たち 

翠色の大きな海に小さな舟浮かべ いつか貴方の許に着けること信じて 
蒼い空には雲もなく 時は静かに流れ落ち 空っぽの心満たしてく 

紅い金魚の絵を描いて池に浮かべて眺めてた
穴だらけの心には 暖かな風が吹き抜ける 
苺を一粒もぎ盗った 小さな頃の小さな罪
心に深く突き刺さる 私を今でも締め付ける 

水晶のように透き通る あなたの瞳に映るのは
私の荒れ果てた心 今もあの日のまま 
きらめく湖面は夕陽を映し 茜色に染まりゆく
忘れかけていたこの景色 今日はなんだか違って見える 


私は笑顔を取り戻す 沈んだ夕陽の向こう側 
黒く塗り潰された心にも いくつもの星が瞬いて 
今日は私も夢を見る 心に光を射したのは いつか消えゆくひとつの命 
何気なく過ぎた私の『今日』は 誰かが死ぬほど望んだ『明日』 
だからこそ見えたものがある 綺麗なだけじゃ生きられない 
あなたの後ろ姿見つめるだけの 私の『今日』も終わりを告げた 
これからは私も独りで歩こう 綺麗なだけじゃない世界だとしても 


最終更新:2006年05月06日 11:38