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「うぃ~・・・うんしょ、うんしょ・・・」
「何してるですか?チビ苺のやつは。何か重そうなもん運んでるみたいですけど」
「なんでも今日のライヴで試したい機材らしいんだけど・・・」
「それは・・・・・・何か不安ですぅ」
「僕もそれは同意・・・」

そして、ライブ本番―――

いつものとおり順調に曲を重ねていき、何回もオーディエンスたちを快感のピークに突き上げた。
その盛り上がりは最初のアンコール時にも起こった。
まず最初に衣装を代えた水銀燈が上手から現れ、マイクを取り一言。

「・・・みんなぁ乳酸菌摂ってるぅ?」

―――イィィィエェェェッッッッッ・・・・・!!!
―――ぎ・ん・ちゃーん!!
―――結婚してくれ―ッ!!
―――私をも・・・もみくちゃにしてー!!

湧き上がる様々な歓声。ボロボロの身体を震わせて立ち上がるオーディエンスたち。
その姿はまさしくリビング・デッド(生ける屍)も裸足で逃げる勢いだ。

そして続々とステージに現れるメンバー達。
その格好はアンコール前の華美で豪奢な衣装と打って変わり、ジーパンに各々がデザインしたツアーTシャツといったとてもラフな格好だった。
そんな安っぽい格好をしていても、ファンはそこからそれぞれの私服をイメージして頭に思い浮かべる。
ましてや、その前に豪華な衣装を目に焼き付けているのだから―――そのギャップから生じる想像は計り知れない。

すでに観客の頭の中じゃ萌え萌え。
そんなメンバーたちがステージに現れ各自楽器の準備をしている時、蒼星石がこの場に一人足りないことに気づいた。

「あれ・・・雛苺は?」
「知らないのだわ」
「ふざけるなですぅ!まだ本番中だっていうのに」
「・・・大変・・・失踪事件・・・ププ」
「あなたぁ・・・笑う所おかしくなぁい?」
「それは置いといて・・・どうしたんだろう、雛苺は」
「どっかその辺に転がってるんじゃなぁい?楽屋途中の通路とか」
「水銀燈!おめぇーもふざけるのは大概にしやがるですよ、全く・・・」
「あらぁ、ごめんなさぁい」
「はいはい、二人ともそれぐらいにしてね。で、真紅どうする?」
「とりあえずこれ以上待たせるわけにはいかないから、曲を入れ替えてやりましょう」
「ハァ・・・仕方ないわねぇ」
「仕方ないですぅ・・・。それじゃあいくですよ、みんな――」
翠星石がスティックでカウントを取り出したその時!

♪パーパパ― パッパッパパッ パーパパー パッパッパパッ・・・

突然会場に鳴り響くどこかで聞いたことのあるイントロ。
「これは、ステッペン・ウルフのBorn To Be Wild・・・一体誰が―――」

ドガァァァ―――ンッッッッッッッッッッッ!!!

派手な爆発音と共に下手の壁が破壊された。
ステージ上は壁が破壊された際にホコリと煙で作られた煙幕に覆われてしまった。

ドゥルドゥルドゥルドゥル・・・・・・
できた壁の穴から何かのエンジン音が流れてくる。

「いいいいいい、一体全体これは何が起こったですかぁ~?」
「ゲホッ・・・何なのぉ、これぇ」
奇跡的なことに下手側にいたメンバーとオーディエンスには怪我らしいものは見当たらなかった。
ただし、ステージ上と観客のスペースは―――阿鼻叫喚と表現するのが最もふさわしいだろう。
壁の穴からゆっくりと現れたのは―――アメリカンすぎるハ―レー。
しかもそれに乗っているのは雛苺ともう一人―――肩にまだ煙噴くバズーカを携えた男がいた。
その男は上下をレザーで固め、頭部は磨けば鏡のように輝くに違いないスキンヘッドという風貌。
日常において、あまりお近づきになりたくないタイプの人間ではある。

「うぃーありがとねーロブゥ」
「No problem, Hina」
「――雛苺!あ、あなた・・・」
「あっ、真紅。ごめんなのー遅れちゃってー」
「この人は・・・誰?」
「んーとね、ロブっていうらしいのー」
「らしいのー・・・って」
「このライブハウス近くで倒れてたの・・・だからヒナが助けたのよー」
百万ドルの笑顔で無邪気に答える雛苺。

その笑顔にメンバー全員が危うくコロっと騙されそうになるが、そうは問屋が卸さない。

「あのですねぇ、チビ苺――」
「でねでね、お話してたらどこか休める所はないかって言うから、とりあえずここに連れてきたの」

あまりにもありえない話に頭を抱えてしまう真紅。
「(ズキズキ)そう・・・それで?」
「みんなに見つかるとまずいかもって思ったから、大きな袋に入れて隠して引き摺ってここまで運んだのー」
「あの重そうな機材と言ってたものは、ハゲチャビンを隠すためだったですか・・・」
「しかし・・・どうするんだい、雛苺。この事態の収拾は?」
「・・・滅茶苦茶・・・ハチャメチャ・・・トゥダ―イ・・・」
「大丈夫なのー。ロブが全部何とかしてくれるのー!」
「I was helped by Hina. So I want to do something for her」
「雛苺のために何かしたいってさ」
「じゃあとりあえず―――ここの修理代受け持ってくれません?私たちもまだまだ駆け出しの身分ですので・・・」

―――これが最大の譲歩なのだわ・・・もしもこれを拒否するのならば!封印された右・・・"絆ックル"を使うしかないわ・・・・・・ウフフ。

相手の返事を心待ちにして右手をワキワキしていると―――

「OK!」
それはあまりにもハイトーンで、快活な返事だった。

「――――ハッ!・・・All right, Mr.Rob. Thank you so much」
あまりにもハイトーンかつ快活な返答だったものだから、一瞬時が止まってしまった。
真紅は急いで便宜上のお礼を言うとまた――――

「OooooKeeeeeeeeeee・・・・・・・iii,Yeah!!」
さらにハイトーンかつ明瞭、腹が立つくらい素敵な声量で答えてくれた。
続けてさらにロブは口元を大胆に歪め、爽やか過ぎるくらいのサムズアップをした。
その目はサングラスに覆われて確認できなかったのだが
「・・・・・・・(グッ)」
何故か薔薇水晶は分かったらしくロブにサムズアップを返していたのだった。

―――そんなこんなで本日のライブは終わった。

この日のライブはある意味観客の心に残るライブだった、心にも身体の方にも・・・・・・。
後に今日のライブに参加したものは皆こう語る。

あれは人生で初めて死を身近に感じた一時だった、と―――

その日のホテルへの帰り道での会話――――
「今日はこれでよかった・・・・・・のかな?」
「いいんじゃなぁい?たまにはこーゆうのも。毎日同じことの繰り返しじゃ、退屈しちゃうわぁ」
「終わり良ければ全て良し・・・ということにしておくのだわ。ちょっとカナリア、午後ティー買ってきてちょうだい――あくまでもストレートよ。それ以外は徹頭徹尾許さないから・・・!」
「ヒィィィ!い、行ってくるかしら~」
「・・・・・・結果オーライ・・・フフ・・・」
「納得できねぇ・・・翠星石は色々納得できんですぅ~!!」
翠星石の当然のつっこみはまだ冷たさが残る春の夜風にさらわれ、一瞬で遥か彼方へ消えていった・・・・・・。

その頃、件の二人は―――

「ロブゥ~高い高いして~」
「HaHaHa OK, Hina」
「ロブゥ、"Pain Killer"歌って~」
「HaHaHa! OK, My angel」

このようなやり取りがあの後一日中続いたとか続かなかったとか。
どっとはらい。

 おしまい

最終更新:2006年07月06日 18:32