Story 60’s好き 氏
ザワザワとざわめく観客席。観客たちは突如登場し、相反するはずのクラシックとロックの美しい融合を魅せた彼女らに賛美を送っていた。
ステージ上にいるのはもちろん真紅たちだった。
「ウフフ、みんな私たちに拍手してるわぁ。あれほど馬鹿にしてたのにねぇ」
「じゃあもっとびっくりさせる?水銀燈」
蒼星石の言葉にニヤリとする一同。
真紅たちが次の曲の準備に入ると、館内は一気に静寂になる。
ステージ上ではマイクが雛苺とともに後ろの方へ置いて、ステージの真ん中に水銀燈、左右に真紅、金糸雀が立つ。
メンバーが互いに目を合わせ、翠星石がシンバルで薄くカウントを刻む。
金糸雀がおもむろにメロディーを弾く。
カノンのメロディーだった。蒼星石の白玉ベースとあいまって美しい旋律を奏でる。
続いて真紅が更に複雑なメロディーを重ね、美しいハーモニーへ……
突如、攻撃的なリフが館内に轟く。水銀燈だ。
同時に翠星石のドラムも突入する。
数小節のブレイクの後、水銀燈が主旋律を弾く。
目一杯歪ませたギターが奏でるカノンは、あまりに情熱的で、美しかった。
真紅のギターがサポートするようにバッキングを弾き、時に共にメロディーを弾く。
水銀燈はいよいよハイテンションになっていき、アドリブを加えたスリリングなプレイとなっている。
転調、そして早弾き、特にタッピングの場面では歓声も漏れた。
また主旋律に戻ったとき、一度金糸雀のバイオリン以外の楽器の演奏が止まる。
金糸雀のバイオリンが本来のカノンのメロディーを刻み…
そして畳み掛けるような轟音が舞い戻る。
情熱的に飛んだり跳ねたり、のけぞったりしてプレイする水銀燈、真紅は対照的に落ち着いて、ただし情感的なプレイが
互いに溶け合う。
ついに曲は終盤を迎える。
高速ギターは少しずつゆっくりとなっていき、バイオリンのメロディーが浮かび上がる。
そして名残惜しそうに響くチョーキングビブラートで曲は終わりを告げた。
しばらくの静寂。そして氷河が溶けるように拍手が、会場全体を包み込んで行く。
「ふぅ、やった…やっぱりロックはさいこうねぇ♪」
「そうね、イングヴェイ・マルムスティーンみたいだったわよ」
「それ、どーゆー意味ぃ?」
「言葉のとうりよ、他意はないわ」
そんなやりとりもいざ知らず、会場の空気は彼女たちのものへとなっていた。
最終更新:2006年05月03日 15:37