アットウィキロゴ
Story  イギリス人 氏
あ、さて。今日もあの日がやってきました。
ご存知、薔薇乙女定例会議―――略して「サイ〇リヤでなんか食いながら適当にダベる会」でR。
(平成が始まって早18年…!今この表現はヤバい。ヤバいヤバい……年齢がバレるからヤバい……気をつけろ!)

「……みゃー、ですぅにゃー……」
翠星石がよくわからない言葉を発した。
僕らの中で薔薇水晶が、唯一肩をビクッと反応していた。

――――なんでさ。

「―――相も変わらず、暇ですぅ」
「そうだね。別に話すことって今特にないものね。定例会議と言ったって、この前したのは結局好きな洋楽アーティストの話だったし」
僕は持ってきた文庫本から目から離さずに答えた。こうなることはもうわかっていたからだ。
「なんか話題を提供するですよぉ~おめぇら~」
ジト目で僕らを見渡す翠星石。
「なんかって…アバウト過ぎるよ翠星石……」
答えはするけどそれでも本から目を離さない僕。 今、いいところなんだ…誰にも邪魔させる―――ものか!

「じゃあこの前の続きで……ンッ……ンッ……プハッ―――いいじゃない―――ゲフゥ…」
真紅が口の周りに白いひげをこさえながら言った。
最後に、乙女にあるまじき行為を織り交ぜて。
真紅…それは説得力皆無だよ、ていうかもう目のふちとか赤いし―――誰だよ!お酒を注文したの!?

「あらぁ戻ってきたら、なぁんか楽しそうこと話してるじゃない。混ぜて混ぜて♪」

ドリンクバーから紅茶と烏龍茶のハーフ&ハーフ(乳酸菌飲料に続く最近のお気に入りらしい。ちなみに現在7杯目……って飲みすぎだよ! どれだけドリンクバーの恩恵を享受してんだよ!?)を持ってきた水銀燈がノッてきた。
「その前に、この前も頼んだコレを頼むの。苺のミルクレープなのー!」
と言うなり雛苺が『呼』ボタンを“また”連打し始めた!

「ちょっと…雛苺!止めるかしら止めるかしら~―――――もうこうなったら……そぉいッッッ!!」

この前は一秒間に16連打をしていたが、今度は炎のコマを出そうとした雛苺の手を金糸雀が問答無用の“いわやまりょーざんは”で雛苺の野望を阻止した。
雛苺はこの後十秒ほど動かなかったが、ウェイトレスが来たら何事もなかったかのように平然とクレープを注文していた。

―――雛苺……恐ろしい子……!

「この前…って…イ…ッタラDE…?」
真紅の口調がかなりおかしくなってきた。そろそろ止めるべきか―――と思っていたら水銀燈が「ちょっと真紅ぅ大丈夫?」と先手を打ってくれた。
やれやれ、これで読書に再開できるな…と安心していたら、真紅がいきなり目を見開いて―――

「大丈夫よ、水銀燈。私は大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫……」

はっきりと喋るようになったと思ったら、後半の大丈夫をリピート。まるで音飛びするCDみたいに―――怖ェェェェェェェッッッ!!
しばらくそのままにしといた。が、限界は僕らが思ってより近かったようだ。

「大丈夫大丈夫大丈夫大丈――――オプ」

「「「「「「――――トイレへ、急げェェェェェェッッッッ!!」」」」」」

――――十分後。
僕たちは全身が何とも形容しがたい疲れに襲われていた。
何とかテーブルの上に思わぬ副産物をシェアすることは避けることができた。が――――。
真紅はもう―――トイレから動かない。その様は―――へんじがない、ただのしかばねのようだ。

真紅――――再起不能(下戸は無理するな)。

「た、大変だった…」
これじゃ本をゆっくり読むどころじゃないよ。
「何の話をしてたですかねぇ?」
「…確かこの前の…続きだって…」
「あ~あ~。そういうことなのぉ?この前は確か…気になるアーティストをお互い言い合ったのよねぇ。洋楽ばっかりだったけど」
「じゃあ、今度は邦楽に限定して考えてみるかしら」
「クチャ…順当…クチュ…なの…ゴックン!」
雛苺…口にモノ入れたまんまで喋るのは止めようよ。乙女としてそれはどうなの?

―――と、いうわけで。前と同じで僕から始めようということになった。

「そうだね、僕は“bloodthirsty buchers”それと“eastern youth”が好きかな」
「日本のエモシーンの二台巨頭じゃなぁい。もしかして―――割にミーハ―なとこ…ある?」
「うるさいな…いいんだよ、好きなんだから。両方とも文学的な歌詞がいいんだよ。ブッチャ―ズは無理矢理メロディ付けたような曲とかあるけど、
 それがよかったりするから不思議なバンドだよ。イースタン・ユースの中で一番好きな曲で“たとえば僕が死んだら”っていう曲があるんだ。
 あれは―――いい曲だよ…!心が打ち震えるね」
「え…でもその曲って森田童子のカバーじゃ…」
「なにかいった?」
うかつな発言をした方を向いて、見ただけで殺せる蝶素薔薇しい笑顔を振り撒く―――臓物撒き散らしてみる?
「いえ、なにも」
相手は沈黙した。それでいい。
僕の番はこれでオシマイ。さて次は―――。

「あ…じゃあ次は私ねぇ…。私はねぇ、今も昔も邦楽っていったら“コレ”しかないでしょ!?」
立ち上がって大声で言う水銀燈。
「す、スゴイ気迫ですぅ……」
「一体どんなアーティストを口にするのかしら」
「クレープが美味しいのー!」
一人全く空気を読んでいない事を確認し、少し間を溜めて水銀燈は僕たちに向かって見得を切った。そして―――。

「私がコレしかないと言えるアーティストは……」
「―――アーティストは?」

「筋肉少「次、誰の番だっけ?」
「確か私ですぅ」
「……どうぞ」


「無視すんなぁぁぁぁぁっっっっっ!!」


生粋のメタラーはさておき。次々と順番は巡る。翠星石はどんなアーティストを挙げるのだろうか。
「次は私ですぅ!私はですね…今は“THE BACK HORN”がいいですぅ。昔はちょっと軽めのオシャレ系ギターポップとか好きでしたけど」
「意外だね。最近相も変わらずブラストの利いたバンドばかり聞いてると思ってた」
「う、うるせぇですよ!そ、それも聞きますけどぉ…基本的にメロディがカッコいいバンドが好きなんですぅ!!」
僕とたいして変わらない理由を顔を真っ赤にして必死に説明する翠星石――――イイ。
今夜のオカズはあれで決まりだな(?)。
「バックホーンはロックの元素である“毒”を含有している希少なバンドだと私は思ってるですぅ」
「確か映画に曲を提供していたわよねぇ」
「おお、水銀燈知ってるですか?」
「詳しくは知らないけどぉ…いい曲作ってるじゃなぁい、そいつら」
「あったりめぇですぅ、バックホーンはサイコーですぅ!イヤッハ―!!!」

ハイハイ、それぐらいにしようね。熱くなりすぎるとろくなことしないんだから、君は。
では次の人にバトンを渡そう。次は―――薔薇水晶か。

「私ね…あまり邦楽って…聞かないなぁ…」
「そうなんだ。じゃ、印象深い日本語の曲とかだったら?」
「…うーんと…」
目を瞑って考える薔薇水晶。うーんうーんと唸ってる。
それにイライラし出した翠星石が――――キレタ。
「だーもういいかげんにしやがれですぅ!ささっと手早く答えるですぅ!!」
「翠星石、落ち着いて…」
「……これ日本語かどうかわかんないんだけど」
「ほら翠星石、薔薇水晶が答えるよ」

「昔…テレビで見たの…誰の曲か分からないけど…“ちょ”って曲が面白いって…思った…英語みたいな譜割りで…」
久しぶりに長く喋って疲れたのか、自分の飲み物を手に取って一息ついた。
そして手を差出し、次をうながした。
え、それでおしまい!?オチてないよ……薔薇水晶。

さて次は雛苺か、と思いそっちを向くと―――見事なまでに皿に顔を突っ込んで爆睡している。
急性心不全で亡くなられた人みたいだなぁ…と少々不謹慎なことを考えてたら耳に地面を這いずるような低音が聞こえてきた。
発信源は――――雛苺だった。何でイビキがウガイボイスなんだ。なんでさ。
この子はここまで……!訳も分からず涙が溢れてくる。
不憫を通り越して尊敬の領域まで持ち上がったよ、雛苺。
ここにいる誰もがそう思った。そして、こう結論づけた。
「どうせチビ苺のことだから日本語でも“そっち系”ですよ」
「だね」「もういいわねぇ、それは」「かしら~」「…乙」
雛苺、お疲れ。

雛苺―――再起不能(寝る子は起こすな)

じゃ、最後は金糸雀に締めてもらおうか。

「わ、私かしらっ?」
「まぁ順番だから」
「さっさと言うですぅ」
「早く言いなさいよぉ…」
「…吐けば…楽になる」
「で、でもぉ前回カナ日本のバンドをあげたかしら」
「あんな『パクっていこーぜ』をバンド内の標語にしてるバンドはいいのよぉ…」
「さくっと言えばいいですぅ、何をそんなにためらうですか?」
「だって、またオチ扱いされるのはイヤかしら…」

「話は聞かせてもらったのだわ……」

突然降ってきた声の方を振り向いた。そこには―――明らかにおかしい顔色をした真紅が立っていた。
「し、真紅…?」
「フフフ…私?私はあなたのよーく知ってる美少女よッ!!」
だめだ、会話が成立していない。
「ちょっとそこのデコの子、聞きなさい」
金糸雀をご指名だ。僕らは黙って真紅の前に金糸雀を突き出す。
「みんな非道かしら~」
「いい、デコッ子。これぐらい恥ずかしがってはダメなのだわ。関係ないかもしれないけど、とあるSS職人は
 初めて女の子と飲みに行った時、普段の自分とは真逆のキャラ作りをしていったわ」
「そ、それで?」
「それは女の子と飲むという嬉しさと恥ずかしさが混ざり合ってよく分からない結果としてそうなったらしいのだわ。
 結果――――これ以上は言えないのだわ…」
「そこはぼやかしたらダメな気がするかしらー」
「いい…私が言いたかったことは、無理はしてはいけないということ―――――ピュッ」

「「「「「誰か…助けてください!!」」」」」

何だこのオチ。投げっぱなしジャーマン的落ち。
後悔はしていない、反省もしていない(オイ!)。

~おしまい~

最終更新:2006年05月21日 10:29