アットウィキロゴ
萌えるような緑、突き抜けるほどの青空。
初夏の心地よい風に僕たちの音が乗って、踊っている。
今、僕らを取り巻いている世界は、素晴らしい。
 ・
 ・
 ・
僕らは今、とある野外イベント会場にきている。
「ほんっと、いい天気でよかったわぁ」
と、ヤクルトの容器を傾けて、とても心地よさそうに言う水銀燈。
「うわー、すごいひろいのー!」
「うっひゃー、ここ全部にお客が入るですか!?」
「すごいわ・・・こんなところで演るなんて」
雛苺と翠星石と真紅はそれぞれ会場の広さに驚いている。
無理もない。僕たちローゼンメイデンは今までライブハウスを中心に活動してきたからね。かくいう僕も鳥肌が立っているよ。
「・・・・見ろ・・・人がゴミのようだ」
薔薇水晶はイメージを膨らましている。内容については突っ込まないでおこう。いつものことだ。うん。

「・・・さ~って」
ひときわ元気なマネージャーが口を開く。
「ついにやってきたのかしら!これもひとえに今までの活動の賜物かしら!」
「そうね。でもまさか自分たちがこんなイベントに呼ばれるなんて思ってもみなかったわ」
僕たちはまだデビューして1年ちょっと。万単位が入る会場でなど演奏したことがなかった。
「せっかくの機会だから思いっきり暴れてくるかしら!」
「そんなの言われなくてもいつもの事じゃなぁい・・・ねぇ?」
「ちょっ、水銀燈、何見てるです!こっち見んなですぅ!」
「まぁまぁ。こんな大きな会場でやれる機会もそうそうないから、おもいっきり楽しもうよ」
「わー、雛も楽しみなのー!会場いっぱいに雛の声を轟かせるのー!」
雛苺、その意気込みは結構だけど、「響かせる」にしておいてほしいな。なんせあの密度にこの気温だ。倒れる要因は熱中症で十分だろう。
「でも、まさかあの人から呼ばれるなんて、ローゼンメイデンも偉くなったかしら~♪」

ほんとに。今の今になってもやっぱり信じられないよ。
さっき楽しもうなんて言っちゃったけど、僕は今不安でしかたがない。

ところで、何で僕らがこの野外フェスに呼ばれたかのいきさつを話しておかないとね。
話は少し前に遡るんだ。

梅の花が最終コーナーを曲がり、目の前で今や今やと待っている桜に、バトンを渡そうとしている、初春。ある晴れた日のことだった。
だけど、僕の状態は魔法以上に愉快な感じとはほど遠いものだった。
いわゆる、スランプってやつだ。
デビューから一年が経ち、ようやく軌道に乗ってきたその時、来なくてもいいのにそいつはやってきた。
作曲も手が着かないし、演奏も思うようにいかない。こんな感覚は初めてだった。

「あらぁ、どうしたの?そんな浮かない顔して。乳酸菌足りてないんじゃなぁい?」
「何か演奏にも身が入ってなかったようね。何かあったの?」
「うーん、何でだろう。僕もよく分からないんだ・・・」
「蒼星石は無理しすぎなんですぅ!」
「たまには休まないとだめなのよー」
「こんどの連休はスケジュール空けておくかしら」
「・・・・・はい、ポーション」
ありがとう薔薇水晶。気持ちだけ受け取っておくよ。

いつもはフザけあったり、喧嘩も絶えないローゼンメイデンだけど、こう言う時はみんな優しい。つくづく良い仲間を持ったと思う。
思えばデビュー以来、1stアルバムのレコーディング、そしてそれをひっさげたツアーなど、スケジュールは朝の通勤ラッシュ並みに詰め詰めだった。
リーダーとして、お騒がせばっかりのメンバーに常に気を張っていたしね。そりゃ疲れる。真面目な性格が恨めしい。
今度の連休に温泉にでも行こう。月並みだけど、疲れは取れるだろう。
こうしてみんなの優しさを大いに受け、練習を早上がりした僕は、とある河川敷に来ていた。
昔っから、一人になりたいときはここに来ていた。川のせせらぎを見ていると、心が落ち着く。
このまますべてを忘れ去りたい気持ちだった。どっか違う世界にでもいってしまいたい。
そんな現実逃避な妄想をしていると、目の前にサッカーボールが転がってきた。

「すんませーん!」

どうやら草サッカーの練習みたいだ。
向こうから30代後半だろうか?割と体格の良い男性がボールを追いかけてきた。
僕はボールを拾うと、彼に手渡した。

Illust ID:6blwO7EM0 氏(33rd take)

「いやぁ、ありがとう・・・・ん?」
「どうかしましたか?」
「君、音楽やってるの?それ、ベースだよね?」
「ええ、まぁ。ローゼンメイデンっていうバンドなんですけど・・・知ってます?」
「ローゼンメイデン・・・・ああ!あの!アルバム買ったよ!ラジオで聴いて気になってね」
「それはそれは、ありがとうございます」
「君たちはいいものを持ってるね。いつか生で演奏を聴きたいと思ってたんだ」
「えっと・・・5月にライブがあります」
「うん、じゃあそれに行くことにするよ」

『おーい、はやくしろー』

「おっと、呼んでるみたいだから行くね!ライブ、楽しみにしてるよ!」
「あ・・・・」

行ってしまった。30代後半とは思えない速さで。
一体彼は何者なんだろう。でもどうやら僕らの音楽を気に入ってはくれているみたいだ。
そう思うと、なんだか嬉しくなった。
今思えば、これはすごい出会いだったんだよなぁ・・・・。

(以下執筆継続中)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2006年06月14日 15:03
添付ファイル