僕は桜田ジュン。「RozenMaiden」の衣装コーディネイト担当だ。
「……………………はぁ」
RozenMaidenのマネージャー、金糸雀の溜息が響く。
「どうしたんだ?チケットの売り上げが落ち込みでもしたのか?」
「売れ行きは上々の上なのよ。ただ、もうちょっと支出……というか、衣装代を抑えられないかしら?」
そうなのだ。
RozenMaidenのビジュアル面は、ゴシックやロリータを基調としているため、素材が高価だったり、構造が複雑だったりする。
一方でパフォーマンスの妨げにならないよう、形や縫製にも色々な工夫がしてある。当然ワンオフのハンドメイドで、既製品を使い回してコストを抑えるのも困難だ。
そんな中で、もっとも衣装代がかかっているのが――
「特に、雛苺」
――である。
なにせ、あいつのクローゼット――別名「苺畑」――は、RozenMaidenの中で最大規模を誇っているのだ。
……意外だって?
確かに、単純に制作コストだけ言うなら、素材自体が特に高価な物を大量に使う真紅のものや、色々な意味で作りが複雑な水銀燈のものに比べれば、比較的ましな部類だけど。
実は雛苺。
他のメンバーとは比べものにならないくらいの衣装持ち……
というか、同じモノを大量に作っておかざるを得ないのである。
なにせ、とにかく大変な勢いで、新しい衣装が必要になるから。
ちなみに。
真紅の名誉(と、僕の身の安全)のために、ここで誤解のないように強く主張しておくが、真紅と雛苺で、それほど「大きさ」に差がある訳ではない。
ただ、雛苺は今まさに成長期であり、まことに悲しいことに真紅はそうではな(ブツップープープー
――大変申し訳ありませんがしばらくお待ち下さい――
*
数日後のステージにて。
ライヴの熱気も、いまや最高潮。
オーディエンスの悲鳴にも似た絶叫の中、アンコール曲の演奏が終わり、いつも通り、締めのMCが始まった。
「みんなー!今日も本当にありがとなのー!たのしかったのよー!!」
「もう9時を30分も回ってしまったのだわ!夜は眠りの時間よ――」
「ヒナはねー……」
げ。
まずい、この流れはまずい。
ステージ上でも、蒼星石の顔色が変わったのが見て取れた。
「ヒナは……」
やっと真紅が気づいて振り返った……が、時既に遅し。
「ヒナはみーんながだーいすきなのよーーーーーー!!!」
Illust 845 氏
あっという間もあらばこそ。
絶叫。
悲鳴。
小さな体が、一瞬にして人の波に呑まれていく。
阿鼻叫喚の中から、雛苺が引っ張り出されるまで、時間にしたらおよそ5分程度だったろうか。
※今回の被害状況報告
頭のリボン(いつものことだ)
胸のリボン(毎度のことだ)
背中のリボン(当然の有様だ)
右の靴下(今回は左が残っただけでも奇跡的だ)
上着の左袖まるごと 右袖半分
スカート左半分
靴
Illust 845 氏
……毎回毎回、よくこれで怪我をしないもんだ……。
「うぅ……また会場警備の人に怒られたかしら……」
「まったく、毎回毎回助け出す方の身にもなれです」
「うょ?」
おわーる
最終更新:2006年07月28日 16:20