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薔薇女子高を眼下に眺める小高い丘の上、庭一面が薔薇で覆われた美しい屋敷があった。
花の咲く季節になると、辺りに薔薇の香りを届ける所から、近所の人たちは『薔薇屋敷』と呼んでいた。
その館には初老の男と双子の姉妹、少数の使用人が住んでいた。

「蒼星石何してるですか?」
「見たら分るだろ、天気もいいし洗濯してるんだよ。
全く、姉さんも少しは片付け手伝ってよ。」
「私はとても忙しいのですぅ。」
姉の翠星石は、徐にノートパソコンの蓋を開けるとなにやら、フンフン言っている。
「何が忙しいんだか。」
「ちょ、チョット見るです、蒼星石。」
「なんだよ、僕は姉さん程暇じゃないんだから…」
「だから、その暇な姉さんより暇な人を見つけたです、
な、何を言わせるですか、私は忙しいです。」
「はいはい、分ったから何を見つけたの?
うーん、ナニこれ?」

見ると
バンドメンバー募集! 
 楽器の出来る人で、近所の人、 
後、美味しい物の話が出来る人急募します。 
定員は、5~6名位なの~。 
ちなみに、ヴォーカルは真紅が担当します。 
     連絡は 雛苺まで。 
と書いて有る。
「ナニこの出たら目な募集要項は?
大体連絡先も無いし、近所かどうかも怪しいね。」
困惑している蒼星石を尻目にニヤリと笑う翠星石。
「よく聞きやがれです、私はこの雛苺という奴を知っているです。
いいですか、この『定員は、』の所をよく読むです。」
「定員は、5~6名位なの~? 定員は…?」
蒼星石は小首を傾げている。
「なの、なの~? あ!!これ」
「そうですぅ。」
翠星石は自慢げに首を縦に振っている。
「うわぁ~これ隣のクラスの子だよ、あの大きなリボンを付けた。
所で、姉さんこの真紅って子は?」
「全く、ニブイ奴です。  
いつもその雛苺と一緒に居る髪の長い子です。」
「よく知ってるなぁ。」
「当たり前です、自分より人気が有りそうな子の事は
総てチェックするのが女の子ってもんですぅ。」
「そうかなぁ。」
「そうに決まってるです、大体蒼星石も少しは
女の子らしくしたらどうですか。」
「はいはい、姉さんも少しは女の子らしく家の事とか
やった方が良いと思うんだけどナァ。」
「何か言ったですか?」
「いいや、別に。」
取り敢えず、話題を変える蒼星石。
「ところで姉さん、この応募広告がどうしたの?」
「フフフ…。」
微笑を零す翠星石。
「・・ま、まさか姉さん?・・。」
「そのまさかですぅ。応募してやるです。」
「でも姉さん、楽器なんて出来たっけ?」
翠星石はニヤリと笑う。
「楽器なんて~出来なくてもいいですぅ♪」
鼻歌交じりの翠星石
「そう、バンドの華はヴォーカルですぅ。
そして、もっとも相応しいのは翠星石です、ですぅ。」
遠くを見つめ目を輝かせる翠星石、
「です、です。..って、ヴォーカルは真紅って子がやる
って書いてあるし、バンドっていたら楽器だけでも、
ベース・ギター・ドラムに欲を言えばシンセサイザー
これだけの人が要るんだよ、姉さん解って言ってるの?。」
「そんなに要るですか。」
「そ、そんなにって…。」
「あわてなくてもいいです、真紅って子は器用そうだから
ギター位出来そうですし、雛苺って奴は…ま、頑張れば
何か出来るです。」
「頑張ればって、無責任な。」
「始まってない事に無責任も何も無いです。
それに、ベースには心当たりがあるです。」
「ふーん、誰?」
「私の目の前に居るです。」
「どこ?」
辺りを見回す蒼星石。
「ボケはいいです、お前です蒼星石。」
「ボ、ボケって、僕は出来ないよ。」
「ウソ言うなです、私はちゃんと知ってるです、
おじじから貰ったギターを大切にしている事も、
お前が夜な夜な練習してる事も、みーんなお見とおしです!!」
蒼星石の顔色が変わる。
「おじいさまの事をおじじって言うな!!
それに、僕が頂いたベースはジャズベースだ、若い子の
やるバンド向きじゃぁ無いんだ。」
「きぃぃぃ、ジャズだろうがロックだろうがポップスだろうが
そんな事は関係ねーです、要はやるかやらねーかです。」
「僕は、やらないって言ってるだろ!!」
「そんな勝手は許さんですよ。」
「勝手な事を言ってるのは姉さんの方じゃないか!!」
「な、何て事を言いやがるですか、私はお前の事を思って言ってるですよ。」
「ど、どこがだ!!」
「そ、蒼星石お前には姉さんの気持ちが解らんですか…グスッ。」
「その手には乗らないよ、姉さんのウソ泣きは十八番だからね。」
(クッ、ばれてやがるです。)
「もういい!!」
 その場を立つ蒼星石。
「とにかく、僕は知らないからね。」
翠星石の部屋を出て行く蒼星石。
(蒼星石もへそを曲げると面倒です、でもベースが居ないと
歌がうたえないです...)
「しゃーねえです、あやまるですか。」
翠星石は自分の部屋を出て蒼星石の部屋の前へと歩いていく。
“コン、コン” 蒼星石の部屋のドアをノックする翠星石。
「蒼星石居るですか~。」
「…うん…」
部屋の中から蒼星石の不機嫌そうな声が聞こえる。
「開けるですよ。」
「今はダメだ!!」
(チィ、怒ってやがるです、しかしこんな事で
引き下がる私ではないですよ。)
「入るですよ。」
  《ガチャッ》
ドアを開けると其処には下着姿の蒼星石が立っていた。
「ダ、ダメだって言っただろう、早くドアを閉めてくれ。」
後ろを向く蒼星石。
「なんです、着替え中ですか。」
「そうだよ!!さっき言い合いをして汗を掻いたからね、
で僕に何か用、ベースの事なら..ヒィ!!」

蒼星石の背中に抱きつく翠星石。
「わー悪かったです、おじじなんて言った事は謝るです、
だから機嫌直して欲しいですぅ。」
「あ、暑い、放して。」
ジタバタともがく蒼星石だったが、翠星石の腕が完全にホールドしていて離れなかった。
「機嫌直してくれるですか?ならお願いがあるです、
明日その雛苺の所に付いて来て欲しいです。」
少しだけ力を緩める翠星石。
「解ったよ、でも付いて行くだけだよ。」
「付いて来てくれるですか、有難うですぅ~」
前に回した腕に再び力を入れる翠星石。
  ムニュ!
「ヒィ、姉さん何処触ってんだよ、やめろ。」
(この柔らかい物は…)
背後でニヤリと笑う翠星石。
「蒼星石も少しは大きくなったですね。」
  ムニュ、ムニュ!!
「や、やめろ、あ…やめてー」
顔を真っ赤にして抵抗する蒼星石。
「ベース弾いてくれるなら止めてやるですよ。」
「ひ、卑怯だぞ。」
「手段は選ばんです、さあさあさあ。」
 ムニュ、ムニュ、ムニュッ!!
「あ、ふっ。」
半ば力尽きグッタリしてる蒼星石。
「さぁ、やるって言うです。」
「……あっ、くぅ。」
「強情な奴です、そろそろこっちも本気を出すですよ
くらえ必殺、付点8分音符揉み~です。」
「…な、なに..え、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~、
わ、わかった、何でも言う事を聞くからやめて~」
「よろしいです。」
翠星石の腕から開放された蒼星石は力なくベットへと倒れていった。
「か、勝ったです、腕力では敵わない蒼星石に勝ったですよー。」
手を組んで天井を見つめている翠星石。
「…汚いぞ、姉さん…。」
「フッ汚いも何もねーです、手段は選ばんと言ったですよ。」
「……」
「もう聞いてねーですか、そんな格好で寝てたら
風邪ひくですよ、それに汗臭い女の子はモテねーですよ。」
蒼星石に布団を掛け、部屋を出て行く翠星石。
(これで明日は雛苺って奴を捕まえるだけですぅ。)
「よーし、明日も頑張るです。」
自分の部屋へと帰っていく翠星石。
蒼星石が目覚めたのは夕飯前の事だった。

双子の姉妹終わり。


最終更新:2006年08月08日 23:18