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僕は桜田ジュン。「RozenMaiden」の衣装コーディネイト担当だ。

そう、衣装コーディネイト担当、のはずだ。あくまでも。
そのはずだ。

なのに。

「みんなー、元気ぃ~?おねえちゃんは元気よぅ~!」

な ん で こ ん な こ と に 。

            桜餅の憂鬱~JUM PROJECT~

事の起こりは、金糸雀だ。

あのデコっぱちマネージャーのやつが、よりにもよって、あの「名探偵くんくん」の、劇場版主題歌タイアップなんか取ってきやがったのだ。

「名探偵くんくん」。
親しみやすい登場人物の造形と、意外に本格的なトリック、軽妙な語り口、丁寧な作劇によって、子供から大人まで幅広い人気を誇る、推理ドラマである。
どのくらい幅広いかというと……

「この子は真紅の側に仕えるのよ、下僕は手を引きなさい!」
「やーなのー!くんくんは雛苺といるんだもん!」
「二人とも、縫いぐるみの取り合いなんてお子様ねぇ」
「……銀ちゃん……この間こっそり、真紅のくんくんギt「あらあらお馬鹿さぁん、滑舌悪い癖に余計な事を口走るいけない舌はこ・こ・か・し・らぁ?」

……我らがRozenmaidenのメンバーさえも、この有様という次第だ。
特に、真紅と水銀燈のハマりっぷりときたら尋常じゃない――水銀燈は表向き隠してはいるが、はっきり言って隠せていると思っているのは本人だけだ。
まして真紅に至っては、わざわざくんくん仕様の変形ギターを特注した程だ。
さすがにバンドのヴィジュアルコンセプトに合わないということで、ステージ上に持ち出すのは今のところ自粛しているが。

そんなRozenmaidenに向かって、「くんくん」の主題歌タイアップときたもんだ。
スケジュールがかなりタイトだった為、当初は既存曲からのチョイスという話だったのだが、そこはただでも音楽に妥協を許さない彼女たちのこと。
まして、他でもない「くんくんに捧げる一曲」ときたら、これはもう誰にもその(主に真紅と水銀燈の)勢いを止めることはできない。
猫に鰹節というか、蟻に砂糖というか、馬に人参というか……とにかく、Rozenmaiden史上最速で、その一曲を完成させたのだった。

そこまではいい。いいとしよう。

「待てーっ!ちょっと待てッ!」
「あら、だってこの曲はくんくんの歌ですもの。当然、男声ヴォーカルを想定して作られているのだわ」
「何度言わせる気だ。僕 は 衣 装 デ ザ イ ナ ー だ ぞ ?」
「そうね、でも 歌 も 上 手 い わ」

どういうことですかこれは。
なんでまた、よりにもよって、この僕に歌わせようとしやがりますか。

「あらぁ……あなた、真紅にとってはギターの師匠なんでしょう?」
「それはねえちゃんだ、僕じゃない」
「でもでも、ジュンはのりと一緒にバンドしてて、お歌歌ってたのよー?」
「んなのは大昔の話であって……どんだけブランクがあると思ってるんだよ」
「……半日くらい……昨夜も、弾いてた……ROCK FUJIYAMAを見ながら……マーティと、セッションしてた……」
「なっ……か、勝手に人の部屋覗くなよな!っていうか、どっから見てたんだよ!」
「この策士・金糸雀の前に、隠しおおせるプライバシーなんかないのかしらー!」
「お前かよ!!」

まったく、どうなってるんだ?
天下のRozenmaidenの曲だぞ?
アマチュアバンド止まりで、さっさとバンド活動から手を引いた僕には、荷が勝ちすぎるにも程があるってもんじゃないか?
「もちろん、この真紅の曲を――しかも、くんくんに捧げた歌を歌うのだから、貴方には完璧に歌いこなすための訓練はして貰うわよ、みっちりとね」
「ちょっと演ればわかるけどぉ、当然ギターソロも用意してあるからぁ。安心なさぁい、ちゃぁーんと弾けるように鍛えてあげるわぁ♪」

はい?
いや、あの、水銀燈さん?

「何言ってんだ、演るのはお前らだろ?」
「せっかくだから、”あの真紅の師匠が、満を持してロックシーンに復帰!”ってぶちあげてやったかしらー!」
「だから師匠じゃないって!それに、お前らが演らないんだったらいったい誰が?僕がアマチュア時代のメンバーなんか、とっくにバンドから足洗って、今どこにいるかも……」
「ふっふっふー、そこはこのRozenmaiden一の策士金糸雀、抜かりはないわ。さあその目でしかと見るがいいかしらー!」

Illust 845 氏

……こ、これは……誰?
いや、待てよ、どっかで見たような……それもつい最近。

「……お……お父様……?」
「……社長……!?」

そこには、薔薇水晶の父にして、Rozenmaidenレーベルを支える社長、槐の姿があった。
「槐社長は昔、そのスジでは知る人ぞ知る名ドラマーだったのよ。そこで社長にこのプランを話したら、二つ返事でオッケーだったかしら」
「社長を現役復帰させるつもりかよ?」
「これ……薔薇水晶が生まれるより前の写真だよね?今と全然変わらないじゃないか」
「妖怪ですかあの社長は」
「……お父様……ステキ……ぽ」
「そ、そんな僕らが生まれる前のドラマーが、今更通用するわけないじゃないか!」
「心配いらないわ、その辺はカナがちゃーんとチェック済みかしら。問題はベーシストだけど……」
「オーディションをやっている時間もないことだし、とりあえず僕がゲストに入っておくよ」
「お前らなぁ、僕に断りもなくどんどん勝手に話を進めるなよ!」
「つべこべと五月蠅い下僕ね、いい加減に覚悟を決めないと茨の鞭でお尻を百叩きだわッ!それでも足りなければ(ry」
「……そいつは勘弁」
「よろしい」

「大変ねえジュンくん……おねえちゃん、応援するからね!」
「あら、何を言っているの?あ な た も 演 る の よ ?」

「………………………………はい?」

かくして、1ヶ月後の「名探偵くんくん」劇場版の初演舞台挨拶。
Rozenmaiden直々の殺人的猛特訓を経て、僕は今ここにいる、という訳だ。

Illust 845 氏

バンド名は「JUM PROJECT」。
以後、Rozenmaidenとの二本柱で、我がレーベルを支えていく……そうだ。

な ん で こ ん な こ と に 。

「じゃあ~、さっそく一曲め、いくわよぅ!」

っていうか何でねえちゃんそんなにノリノリなんだよ。のりだけにノリノリってか。誰が上手い事言えと。

おわーる


最終更新:2006年09月13日 00:56
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