Story ID:jk0ItRlQ0 氏(82nd take)
ふぅ……
「これは美味しい紅茶ね。これは何という銘柄だったかしら?……」
卸したての紅茶を一口。私は心を落ち着かせる。
「さぁ今日も頑張りましょう」
私達
Rozen Maidenは新たなコンセプトを掲げて、今はアルバム制作中なのだわ。
早くファンの皆に音を届けたいのだけど、作業はそう簡単に進まないのが現状なの。
遠く~遠く~離れ行くエボシライン♪
携帯の着信なのだわ。誰かしら…?
雛苺。
確か早くから水銀燈と取材に行っているはずなのだわ。一体何かしら?……
「もしもし、雛苺?」
『あっ、真紅、おはようなのー』
「おはよう。何か用?」
『あのね、今日の午後にJUMがそっちに来るでしょ?』
「ええ、私の衣装のサンプルを持ってくるのだわ」
『実はヒナの衣装も頼んだのよ』
「あら、そうだったの」
『その時にヒナが居なかったら、受け取っておいてもらいたいのー』
「分かったのだわ。でも、雛苺。あなたの新しい衣装はもう出来上がっていたのではなくて?」
『ちょっと、前のはキツかったから直してもらったのよ』
「そうだったの。分かったわ、ちゃんと受け取っておくから安心しなさい」
『ありがとーなのー。ところでそっちにカナは来てない?』
「金糸雀?多分来てないのだわ。そっちにはまだ着いていないの?」
『来ていないのよー………』
「きっとまた遅刻なのだわ。来たらちゃんと言っておくのよ、雛苺」
『……………』
「雛苺?……雛苺っ!…聞いているの?!ひないち……」
『ぷつっ…ツー…ツー…』
「切れた?………」
突然、切るなんて……失礼にも程があるのだわ!
雛苺も金糸雀と共にしっかり説教しなくてはいけないようね
JUMが来るまで、作詞でもしようと思ったけど、あまり気乗りがしない…
おもむろにギターを手に取り掻き鳴らす……
ちなみにこのギター、私の大好きなくんくんをペイントした特注品、その名も“くんくんGuitar"なのだわ!
午後になり自慢のギターをしばらく鳴らしていると、蒼星石がやってきた。
「あら、蒼星石」
「真紅は作曲中?」
「ええ、と言っても鳴らしているだけなのだわ(笑)」
「はは(笑)僕もそんなもんさ、翠星石に紙とペンを奪われたよ」
「あら、また翠星石は自分の作業を放ったらかしにしているの?」
翠星石にも説教が必要のようね……
「みんな、似たようなもんさ(笑)」
「頑張りましょう(笑)」
蒼星石もベースを持ってきた。少しの間遊んでみることに。
蒼星石がベースラインを即興で作る。そこに私が簡単なリフを作りながらギターを絡ませる。
のってくると私も蒼星石も様々な動きをつけていく。
単に遊びとは言っても、ここから曲が生まれることも、そう少なくない。
15分程して蒼星石は行ってしまった。
…………………
早く来ないかしら、JUM…
ぼーっとしていると…ふと……なぜか……アンジェロラッシュをやってみようと思った。
そう、水銀燈に出来て私が出来ないのはおかしいのだわ。
確か秒間約20回のピッキングをして……タッピングを……上から下から………繰り返…
……せるわけないのだわ!!
やはり、どう考えても人間が出来る動作じゃない。
水銀燈が何故、こんなことをやろうと思ったのか理解出来ない……
「真紅さん、JUMさんが来ましたよ」
あら?やっと来たのね…
「分かったのだわ」
「よう、真紅」
「ご苦労様。早速だけど紅茶を淹れてきて頂戴」
「は?……」
「聞こえないの?紅茶を淹れてと頼んでいるのよ」
「早速、意味分かんないぞ!…今、僕は重い荷物を持ってここまで来た客人だ!」
「全く……使えない下僕ね……」
「下僕ってなんだ?!…急に原作設定を入れるなよっ!」
「原作?…なんのこと?……まぁいいわ、スタッフ!紅茶を淹れてきて頂戴」
「あ、いいっすよー」
「では、早速見せて頂戴」
「…あぁ、分かったよ」
JUMは私の衣装を鞄から取り出し、目の前で広げてみせてくれた。
「こんな感じになったよ…」
「……素敵……」
私は思わず見とれてしまう。
JUMは衣装についての細かな説明をしてくれていたみたいだったが、私は見とれ過ぎて説明など頭に入っていなかった。
「これ着てみていいかしら?」
「あぁ……ってまだ説明の途中…」
私はJUMを無視して衣装を奪い去る。
「あっ……」
「着替えを覗いたら鞭で百叩きよ」
「覗かねーって……」
「じゃ、待ってて頂戴」
「おう」
私は個室に衣装を持っていき着替える。
「うん……サイズもぴったりね……さすがJUMだわ」
「どう?JUM…」
私は着替え終わり、JUMに見せる。
「似合ってるよ……キツくないか?」
「ええ、問題無いわ」
「良かった。イメージ通りだよ、真紅」
「そう?嬉しいわ」
「……あ、そうそう雛苺はいないのか?衣装を作り直したんだけど……」
「雛苺は取材に行っているから、衣装は私が預かっておくのだわ」
「そうか、じゃ置いてくからな。出来れば本人が着たのを見たいけど……」
そう言ってJUMは雛苺の衣装を私に渡した。
「…ところで、これはどこがキツかったの?」
「どこって、そりゃ胸のサイズぁっ!!……」
JUMは私に対しての禁句を思わず言ってしまった……
「……いや、なんでもない!…」
「胸?……」
「いや!…違う!……じゃなくて!」
「そう……」
「いや、なんでもないんだ!…さっき言ったことは忘れてくれ!……」
なんとか取り繕うとするJUM
「そう……雛苺はまた胸が成長したのね………そう………そう………」
「あ………いや、僕が元々のサイズを小さく間違えちゃってさ……」
必死にごまかそうとするJUM
「嘘……あなた程のデザイナーがそんなイージーミスはしないはずだわ……」
「う……いや、本当なんだって!今回はたまたま……」
「どうせ私は………どうせ私は………どうせ私は…」
「い、いや…大丈夫だよ…うん!…真紅は充分魅力的なんだし……き、気にするなよ……」
JUMの励ましの言葉が痛い……
「べ、別に気にしてないのだわ」
無理に平然を装う私……
「胸の大きさなど生きていく上で、全くどうでもいいことなのだわ。小さくたって仕事も恋愛も出来るし、気にする必要なんて無いものよ…」
自分で言っててむなしい……
「ああ、分かったよ。分かったから、とりあえず座って落ち着けよ…」
「そ、そうね………」
はぁ………私も苺大福食べようかしら………
その後、紅茶を嗜みながら暫く談笑をした。
「じゃ、そろそろ帰るよ」
「そう…では見送るわ」
「ああ」
「もしかしたら、雛苺達はもう帰ってるかもしれないのだわ」
「ああ、そう言えばあいつらトランプしてたぞ」
「本当?……」
「うん。僕も誘われたけど断った」
「全く、仕事もしないで…あの子達」
私達は部屋を出て、皆が集まっている所へ向かう。見ると確かにテーブルを囲んで、何やら盛り上がっている。
「あ、雛苺と水銀燈も帰ってるな」
「本当ね」
「あっ!JUMなのー!」
「おー、お前らまだやってたのか…」
「全く!仕事もしないで何をやっているの?!このままでは、また締切を過ぎてしまうことになるわ!」
「ごめん、真紅…」
「せめて、ばらすぃーに勝つまではやらせてくれですぅ……」
「ダメよ。だいたい翠星石は自分の……」
ん?……こ、これは……
ふと、トランプを見るとそのカードの裏面にはくんくんが舌を出した可愛いイラストが描かれていた…
「…こ、これは限定200個の激レア“くんくんトランプ"じゃない!!」
私は思わず声をあげる。このトランプは“くんくんココア"に付いている応募券5枚で抽選200名様に当たる賞品。
私も勿論応募したけど貰えなかった……
何故、それがここにあるの?!……
「い、一体これは誰のトランプなの?…」
私は興奮して訊いた。
「私のよぉ」
なんと、水銀燈の所有物。
「何故あなたがこれを持っているの?…」
「私も応募したのよぉ、ココア飲んで。そしたら、偶然当たっちゃったのよぉ」
なんで水銀燈にっ?!
「何故、私に見せてくれなかったの?」
「だってぇ、真紅に見せたら盗られそうで怖いものぉ(笑)」
「そ、そんなことはしないのだわ……ねえ…私もトランプに混ぜて頂戴?」
「なっ!さっきと言ってること違うですぅ!」
「た、たまには私もあなた達の遊びに付き合ってあげると言ってるのだわ…」
「汚ねーですぅ」
「まあ、いいじゃないか。真紅も一緒に、どうせなら皆で楽しもう」
あなたには心から感謝するのだわ、蒼星石。
「じゃあ、さっきのポーカーの続きをやるかしらー。今度こそ、ばらすぃーの連勝を食い止めるかしらー!」
そして、手札が5枚配られる。
これが…あの夢にまで見た…“くんくんトランプ"!
「し、真紅、鼻息荒くなってるかしら…」
「トランプ如きで興奮するなんて、どうかしてるですぅ」
そして、ゲームが始まる
「ふふっ真紅ぅ、あなた絵札たくさん持ってるわねぇ」
「な!何故そんなことが分かるの?……」
「これ絵札はくんくんの顔になってるからよぉ(笑)」
「へ?……」
「真紅、さっきから手札を目移りさせながら見て、ニヤニヤしてるですよぉ(笑)」
……し、しまっ!………
最終更新:2006年09月26日 16:27