僕は桜田ジュン。「RozenMaiden」の衣装コーディネイト担当だ。
そして、槐社長擁するAlice Gameレーベル所属のバンド、JUM PROJECTのギタリストでもある。
JUM PROJECTの曲には、は所謂タイアップ曲が多い。
Rozenmaidenは音楽性と世界観を大切にする為、CMとかドラマタイアップ等については結構、相手を選ぶ傾向がある。
しかし(世知辛い話ではあるが)、今日日音楽活動というものを、趣味でなくビジネスとして行っていく限り、そういった仕事を避けては通れないのもまた事実。
そういった部分を引き受けるのが、僕らの役目のひとつだったりする。
曲自体はRozenmaidenのメンバーが提供したもの(演奏し易いようにアレンジしたりはするけど)で、しかし提供先の要求に合わせた――結果としてRozenmaidenの持つ世界観とは合致しない――そんな歌。
今回のプロジェクトもまた、そういったものを求められている。
だけど。
まさかそのタイアップ先が、あの――「宇宙刑事カシワバン」だなんて。
宇宙犯罪組織ジャンクーの魔の手から地球を守るため、銀河連邦警察より派遣された地球担当の女宇宙刑事カシワバン。
亜空間「nのフィールド」ではジャンクーの怪人の能力は通常の3倍に強化される!
若さって何だ?振り向かないことさ!愛ってなんだ?ためらわないことさ!
契約せよ!宇宙刑事カシワバン!
「本当は、普通の女の子に戻りたい……でも、みんなの期待を裏切っちゃうから……」
「……なんだこの脚本」
「あらあら楽しそうねぇ」
なんでも、主演女優の柏葉巴、たっての希望で決まった話だそうだ。
そうだろうな、あいつは雛苺のルームメイトだし。
ちなみに僕の幼なじみでもある。
「……チラシの裏、乙……」
「なんか言ったか」
と、いうことで。
いつもの通り、Rozenmaidenに作曲を依頼したんだけど。
求められたのは、「ロック調の曲であること」。
まぁ子供番組だし、悪と戦う正義のヒーロー……もといヒロインのテーマ曲だしな。
勇壮な曲調がいいだろう、ってことくらいはわかる。
この手の曲なら、水銀燈あたりの得意とするところだろう。
ところが、この話を聞いた途端、真っ先に手を挙げたのは、意外にも薔薇水晶――いや、雪華綺晶だった。
自ら眼帯を左から右に付け替え、絶対に自分が作る、他の誰にも譲らない、ときたもんだ。
……時代劇好きだとは聞いてたけど、まさか特オタでもあったのか、雪華綺晶。
いやまぁ時代劇ってのもある意味特撮だけど。
――何を仰いますの?
――あの名作、必殺仕事人V・花屋の政の前職は仮面ライダー。
――組紐屋の竜「様」(<ここ重要)に至っては、特撮界において決して無視してはならない重鎮ですのよ?
もう、どこからつっこんでいいのかわかりません。
そして――できあがって来た曲は。
「……確かに、これはRozenmaidenではできないな……」
和音階バリバリ。
編曲次第では、演歌でも通る。
「必殺シリーズの殺しのテーマにもぴったりかしら」
「それって……正義の味方のテーマ曲としてはどうなんだろう?」
普通ならギターソロが入るところで、ソロを取るのは津軽三味線。「限定。絶対。他の楽器での代用は不許可。 記・雪華綺晶」と譜面に書いてある。毛筆で。
「……って、あのな、津軽三味線なんて誰が弾くんだよ?」
エレキギターと違って、三味線は音を長く響かせるのが難しい。
三弦しかないことも相まって、演奏法も表現の仕方も全然違ってくる。
僕はもちろん、味付け海苔の付け焼き刃でどうなるとも思えない。
――もちろん、主演女優に頑張って頂きますわ。
「え?」
どこで知ったんだろう。
確かに柏葉は昔、家の方針で、和楽器をひととおり嗜んでいた。
あくまで「家の方針」に従っただけで、自分から好きこのんでやってた訳じゃないそうだけど。
――何と言われましても、この曲はそれを前提にお作りいたしましたもの。
――柏葉さんには頑張って頂きますわ。
かくて、僕と味付け海苔に続き、巻き込まれる羽目になった柏葉。
僕も味付け海苔も津軽三味線なんか弾けないから、ライヴでこの曲を演る時には、必然的に柏葉がかり出されることになる。
Illust 845 氏
「……め、迷惑だった?」
「少しね」
「……………………」
「ウソよ!ウソ」
「……そういう性格だったか?」
「どうだったかな……」
おわるよ
最終更新:2006年12月21日 13:29