Story 酔いman 氏
私は水銀燈、ローゼンメイデンというロックバンドのギタリストをしている。
ロックバンドと言ってもメンバーは女性ばかりのバンドだ。
だからよく音楽番組のお偉いさんや、同じミュージシャンの男性から口説かれることが多々ある。
私は別に男性が嫌いという訳ではない、ただ男性は恋愛の対象になっていないだけだ。
私の乙女心を許せるのは同じ女性のめぐだけだ。
めぐと初めて出会ったのは私がまだこの世界に入る前、少し無理をして体調を崩し入院した時に同じ病室にいた3歳年上の女性。
ある日、寝付かれない私にめぐは優しく囁き、そして抱きしめてくれた。
あの夜に私はめぐに女性というものを教えてもらった。
その関係は今も続いている。
私は薔薇水晶、水銀燈お姉様と同じロックバンド、ローゼンメイデンでキーボードを担当している。
始めは周りの人たちと同じくローゼンメイデンの曲が好きでファンになったミーハーな私。だけどローゼンメイデンを知れば知るほどギタリストの水銀燈お姉様に憧れ始めた。
いつもお姉様のことばかり考えていた、そしていつしか憧れから恋に変わっていくのが自分でも解った。
その頃、ローゼンメイデンは新たなメンバーを募集するとの噂を聞きつけ、私は必死でキーボードを習った。それは血が滲むほどの努力だったと自覚できる。
そして、その努力が報われ、私は憧れのローゼンメイデンのメンバーとなった。
もちろんローゼンメイデンの音楽は大好きだ、でもそれ以上に私の心を掴んで離さないお姉様を身近に感じると胸が締め付けられるほど痛い。
「お疲れ様ぁ~」
「今日は久しぶりに早く終わったわね、みんな何か予定とかあるの?」
「翠星石は蒼星石とお買い物ですぅ~」
「ヒナは金糸雀と映画に行くの~、真紅も行く?」
「いいわね、ぜひ行きたいわ、水銀燈と薔薇水晶はどうするの?」
「私は…約束があるので…」
「私も約束があるのよねぇ~、また今度誘ってぇ」
そういってメンバーはそれぞれ帰って行った。
薔薇水晶が言った約束とは1週間ほど前に水銀燈と交わした約束であった。
それは薔薇水晶の部屋でビデオ鑑賞をするという他愛のない約束。
だが、彼女にとってそれは何者にも変えがたい至福のひと時であることは間違いない。
水銀燈がもうすぐしたら部屋に来る。
そう考えたら薔薇水晶はいてもたってもいられなかった。
必要以上に部屋を綺麗し、水銀燈の大好物であるヤクルトを大量に買いこんでいた。
一方、水銀燈にとっては何んでもないただの約束でしかなかった。
とりあえず自宅マンションを出ようとする水銀燈の携帯が鳴る。
相手はめぐだ。とたんに水銀燈の態度が変わる。
「あぁ~~ん、めぐぅ~~」
「こんにちは水銀燈、どう忙しい?」
「うぅん、今日は早く終わったのぉ~」
「じゃぁ、今から私の部屋で会わない♡」
「行くわぁ、今すぐ行くわぁ~」
駅から少し裏手にそれた道沿いに白い12階建てのマンションがある。
その最上階にめぐは住んでいた。
水銀燈がチャイムを鳴らすとニコッと笑っためぐがドアを開ける。
長い黒い髪を指でかき分けながら水銀燈を部屋に招き入れる。
いつもステージで見せる険しくも美しい顔立ちの水銀燈はそこには居なかった。
目を潤ませてやんわりと笑っている一人の女性である水銀燈がいるのだ。
2人はソファに座ると最近あった事を話始める。
「そう、また変な男に言い寄られたの?」
「そうなのぉ、でも私はきっぱり断ったわぁ、だってぇ~、私にはめぐがいるからぁぁ~~ん」
「ふふ、カワイイわ、水銀燈」
甘える水銀燈の肩に手を回し引き寄せるめぐ。
そんなめぐの行為に水銀燈は体中の力が抜けていくのを感じた。
「めぐぅ~~」
「水銀燈…」
馴れ合う指先と絡み合う甘い吐息で満たされた部屋の電気は消され、2人は白いシーツの海で終わらない刹那を過ごした。
戯れるめぐと水銀燈、そんな頃、薔薇水晶は約束の時間になっても現れない水銀燈を心配しながら時計の針ばかりを目で追いかけていた。
いちおう2人でDVDを借りることになっていたが、何かの用事で遅れてくるだろうと思っている薔薇水晶は駅に水銀燈を探しにいくついでにDVDを借りることにした。
そのレンタル屋はめぐが住むマンションの1階にあった。
そんなことを知らない薔薇水晶はレンタル屋に入っていこうとする。
その時、彼女も目に飛び込んできたのは紛れもなく水銀燈の愛車であるフェラーリー550マラネロであった。
こんな車はそうそう見当たらない、不安に思った薔薇水晶はそっとフェラーリーのナンバーに目を通す。
「あっ!!お、お姉様の車……」
その時マンションから水銀燈の声が聞こえてきた。
いや、水銀燈だけではない、もう一人知らない女性の声が聞こえる。
2人の声は水銀燈のフェラーリーに向かってきている。
薔薇水晶はとっさに物陰に隠れた。
「楽しかったわ、水銀燈」
「めぐぅ~、また会いたいわぁ~~」
「そうね、また会いましょう、ねっ、水銀燈」
「めぐぅぅぅ~~ん」
そう言うとフェラーリーの横で水銀燈とめぐは抱き合い熱い口付けをした。
目の前で繰り広げられる2人の抱擁と口付けに薔薇水晶は言葉を無くした。
ただ信じられない場面に、涙すら出てこない。
やがて2人の唇は離れ、そしてめぐはマンションに、フェラーリーは夜の中へと走り去っていった。
そして次の日………。
「おはようぉ~真紅ぅ、昨日の映画は面白かったぁ~?」
「そうね、まぁまぁだったわ、それより雛苺が途中で泣き出して困ってしまったのだわ」
「…おはようございます……」
「あら、薔薇水晶おはよう」
……イケナイわぁ、昨日めぐの事で薔薇水晶との約束を忘れていたわぁ
薔薇水晶の顔を見て約束を破ったことを思い出した水銀燈はバツの悪そうな顔をして薔薇水晶にウインクしながら謝る。
そんな水銀燈に薔薇水晶はニコリと笑う。
「気にしないで下さい、それよりも私…髪を真っ黒に…染めようと思っています、髪型も…ストレートにして……クスッ」
ニコリと笑っていた薔薇水晶の笑みはいつしかニヤリと影のある笑みに変わっている。
そして、この日から水銀燈とめぐの間で不可解な事件が多発し始めた。
(以下執筆継続中)
最終更新:2007年01月10日 00:48