ーやっぱりどうにかするべきね…
真紅は自宅のお風呂の中、立ち込める湯気にまかれながら一人
ーー自分の胸に落胆していた
それは昨日の事
「あらぁ、おはよぅ真紅ぅ」
「真紅おはようですぅ!!」
「……しんくっく……おいすー………」
「あら、おはようみんな」
眩しい太陽が四人を照らす中こぼれる笑顔に白い吐息を添え校門の前、いつも通りの挨拶を乙女は交えていた
「?今日…あなた達随分ツヤツヤね」
真紅はまるで白銀を写したかのような、水銀燈の美しい頬に手のひらをそっと添える
「フフ…わかるぅ?昨日翠星石とばらしーと一緒にぃ…銭湯にいってきたのよぉ~」
「ほーんと気持ちよかったですぅ…相変わらずばらしーは…」
「す!………翠星石……アレは…その……」
「冗談ですぅ~言わないから安心するですぅ~」
「?よくわからないけど水銀燈、…どうして私は誘ってくれなかったのかしら?」
真紅のコートのポケットにあるピックが太陽を受け、キラリと光る
「ち、違うわよ真紅!」
水銀燈はとっさにおでこを抑え、素早く一歩後退する
ピックは軽くトラウマのようだ
「たまたま招待券が三枚だったからぁ…偶然出会ったばらしーと翠星石を誘ったわけぇ」
「……計算通り……」
「?ばらしー何か言ったですか?」
「…別に…」
ばらしーは雪のような白い首を横にフルフルと振る
「?まぁいいわぁ、そこでぇ銭湯がすんごく気持ちよかったからぁ…今日は薔薇乙女みんなで行こうと思ってるのぉ。どぉ真紅?」
「それは素敵ね、なら私の方から蒼星石と雛苺、金糸雀にも言っておくのだわ」
「お願いするわぁ」
銭湯なんて久しぶり、自分もスベスベのツヤツヤになれるかと思うと…
朝の日差しのような期待を胸に真紅は教室に向かう
ーでも真紅はこの時はまだ気付いてなかった
ーー自分の薔薇乙女内におけるバスト偏差値に
*
「すごいのー!大きなお風呂なのー!」
「素敵かしらー!すごく気持ちよさそうかしらー!」
放課後、真紅たち薔薇乙女は満月が美しく映える中、揃って銭湯に来ていた
久しぶりの銭湯に雛苺と金糸雀は既に入浴を前に寒さを忘れ興奮している
「それにしてもこの時間帯は正解だったね、翠星石」
「そうですぅ、なんにしても空いててラッキーですぅ」
「あれぇ?ばらしー…それなぁにぃ?」
仲良く銭湯に入る双子の後ろ、水銀燈はばらしーの持ってる丸い、円形の何かを指さす
「……最終……防衛ライン……」
「…ばらしーが昨日銭湯で翠星石と何があったのか、ようやくわかったわ」
ふう、とため息をつきながら銭湯に入る真紅の後、水銀燈も銀髪をなびかせのれんをくぐる
もちろん水銀燈の後ろにはぴったりとばらしーがくっついていた
ーシャンプーハットを持って
「おや、いらっしゃい」
「…白崎?」
銭湯のカウンターには楽器屋にいるハズの白崎が笑顔で接客をしている
「あなた…ENJUはどうしたの?」
「いや~ここの時給に惹かれちゃってね、臨時のバイトって訳さ」
「そう、あなたも大変なのね」
「ハハ…お気遣いどうも…ところでココで流す音楽を探してるんだけどさ、よかったら薔薇乙女の新曲を流してもいいかな」
「しーんく!翠星石たちは先に行ってるですよ!!」
翠星石は白崎と話す真紅に待ちきれない様子で蒼星石と先に脱衣所に向かう
…といっても雛苺と金糸雀は既に突撃してるのだが
「わかったわ翠星石、先に行ってて頂戴」
「私も先にいくわぁ~」
水銀燈とばらしーも翠星石たちに続いて脱衣所に向かう
「そうね、いい宣伝にもなるし…新曲なら水銀燈が創った『
ひとの幸せ』があるのだわ、後で水銀燈にも許可をとって頂戴」
「ありがとう真紅ちゃん、じゃあごゆっくり」
手を振る白崎を後にし、真紅はみんなより一足遅れ、薔薇模様のタオルを腕に、脱衣所に向かった
*
「ふう…いいお湯ね」
「ほんとですぅ~何度入っても最高ですぅ~」
「疲れなんか吹っ飛んじゃうわぁ~」
脱衣所で騒ぎまくったせいでみんなより一足遅れた雛苺と金糸雀は、乳白色の湯船に肩まで浸かってまったりしている他メンバーをよそに、せかせかと体を洗っていた
「ばらしー…お風呂で泳いじゃ駄目だよ」
「……むきー……」
蒼星石は広い湯船を端から端まで泳ぐばらしーに呼びかける
「そうよぉ、ばらしーも落ち着いてこっち来なさぁい」
「………銀ちゃんが言うなら………」
ばらしーはゆっくりと泳ぐのをやめ水銀燈の隣にぴたりとくっつく
「それにしてもばらしー…あなた本当に白いわね…羨ましいのだわ」
「あら…ほんとねぇ…」
真紅達は、まるでゲレンデの様なばらしーの肩のラインにしばし見とれる
「…ホワイトファルコンより綺麗ですぅ…」
「…………エヘ」
少し照れたようにばらしーは水銀燈の顔を見、ニコッと微笑みかけた
「…ところで水銀燈に話があるですぅ」
「?なぁにぃ翠星石ぃ?」
「…その…何カップですか…?」
「………………」
翠星石の突然の質問に、水銀燈は黙り込み、真紅は「くだらないわ」と言いながらもしっかり聞き耳をたてる
「カナも話に交ぜるかしらー!」
そんな不穏な空気漂う湯船に、雛苺より早く体を洗い流した金糸雀が颯爽と現れた
「ああ、チビカナは黙ってるですぅ、今水銀燈について大事な会議が開かれる所ですぅ」
金糸雀は「策士たるもの敵をよく見るかしらー」と言いながら、真紅と翠星石の間に潜り込む
「ぅヒナも交ざるのー!」
金糸雀が湯船に浸かったすぐ後、少し遅れて雛苺も議会に参加すべく湯船に浸かろうとする
「まったく…チビ苺は黙ってるですぅ、これは大人の……………え?」
薔薇乙女は湯船に浸かろうとする雛苺を一斉に凝視する
翠星石に真紅、金糸雀はとっさに自分の胸を確認し、もう一度雛苺を見た
「ひ…雛苺…あなた…」
「か…かしらぁ」
夢でも見てるのだろうか…雛苺のうにゅーは明らかに自分達のより大きかった
「うゆ?真紅どうしたのー?」
雛苺は口をパクパクさせ、わなわなと震える真紅の隣にぴたりと浸かる
「あ…ありのまま今起こった事を話すかしら…」
「雛苺がコッチ側の人間だと思っていたら…」
「アッチ側の人間だったですぅ…」
三人はミルク色のお湯に半分まで顔をつけ、ブクブクと素数を数え始めた
「…17……ちなみに蒼星石はBカップです」
「え!翠星石!なんで僕の!?翠星石だってBカップじゃないか!」
「な!なに言うですか蒼星石!!ちっちなみに真紅と金糸雀はAですぅ!」
「…翠星石、口には気をつけるのね…」
「ぅヒナはCなのーー!」
「あ…悪夢かしらー!!」
雛苺の出現に、思わぬ伏兵の出現に場は騒然となる
(雛苺のおかげでゆっくりできそうだわぁ…)
「…あああ!もうこの話は終いですぅ!今は水銀燈の…ヤクルトバカの話ですぅ!」
(………………)
水銀燈は湯船の隅、睨みつけるような視線を一身に感じる
ー特に乏しい組から
「あの……ほらぁ、別に私が何カップでも……」
「うるさぁぁぁぁいですぅ!!!!」
翠星石は逃げ腰の水銀燈を捕まえ、めちゃくちゃにうにゅーを揉みしだく!
「なっ……す、翠星石!やめっ!ひゃっ!」
「何カップか言うまで揉み続けるですぅぅ!URYYYですぅ!!」
「その調子よ翠星石!!」
…もうゆっくりとお湯に浸かってる者はいない
ばらしーは水銀燈の様子に顔を真っ赤にし、蒼星石は「僕だって…僕だって…」といいながらうつむき、金糸雀は雛苺に「う、裏切り者かしらー!」と喚きちらしている
「くぅ……わかったわぁ……言うから……言うからぁ!」
「いい心がけですぅ!さあ言うです!さあ!さあ!!」
翠星石の所業はもはや乙女ではない、オヤジだ
「D…Dカップよぉ…!」
「な……けしからんです!実にけしからんうにゅーですぅ!!」
「…ひゃっ!ちょっと…止めるって…」
「うるさいですぅ!!…この!この…!!ほら!ばらしーも触ってやるですぅ!」
翠星石は水銀燈のうにゅーを鷲掴みにし、ばらしーの前にグイッと突き出す!
Illust ID:/JPBGrPX0 氏(126th take)(クリックで元サイズ表示)
「…ふや……!…みみ右手でポテチを…た食べながら……ひっ左手で…銀ちゃんの………う…うにゅ………うう…」
ばらしーはそう言いのこし、顔を真っ赤にしたまま乳白色の中にブクブクと沈んでいった
「ば、ばらしー大丈夫!?」
蒼星石は沈んでいくばらしーをとっさに引き上げ、真っ赤になったばらしーをゆさゆさと揺さぶる
「だ…大丈夫……コンソメ味は……私しか……食べ………」
「ばらしー大丈夫かしらー!?」
「茹でばらしーなのー!」
「と、とにかく早く湯船から出して風に当てるのだわ!」
「オラオラオラですぅぅ!」
「…ひっ……ひゃう………」
ゆっくりと疲れを癒すハズであった銭湯は、ばらしーの突然ののぼせによって慌ただしく終わりを迎えた
*
朝焼けを窓いっぱいに受ける教室、なびくカーテンの合間から差し込む光とは裏腹に真紅はどんよりとした空気を全身に纏い机に突っ伏していた
「…真紅?」
聞き慣れたベーシストの声、真紅がゆっくりと顔を上げる先には案の定、蒼星石が立っていた
「相当ショックだったみたいだね…」
「…………」
真紅は昨日の事ー雛苺のうにゅーの事ーで大分参っていた
裏切られた、というかなんというか…不思議な敗北感は1日経っても抜けなかったようだ
「…でも雛苺のアレは結構知る人は知ってたみたいだよ」
「?どういうこと?蒼星石」
「うん、実は雛苺はクラスでは…
「ちーがーうーでーすー!!」
真紅と蒼星石とは離れた席、蒼星石の言葉を遮る程の声で、翠星石と金糸雀は周りの目も気にせず熱く議論に勤しんでいる
「雛苺のアレはぜっっったいCGに決まってるです!!生命の神秘ってレヴェルじゃねーです!!」
「違うかしらー!アレは絶対ハリウッドメイクとか…!いや!アレは実は服に違いないかしら!!紅白の時のDJ ※ZMAみたいなものかしら!」
「服なら…服なら!あのうにゅーは何故あんなにたゆんたゆんしてたですか!?チビカナーナーナナナ、ナナナ、ナナナリアはもう少し考えて物を話すです!!」
「そんな言い方はバンスウィズミーかしらー!!」
二人の的を外れた熱い議論はさらに進み、結局チャイムが鳴るまでは結論に行きつかなった
「この議論は持ち越しかしら…ところで翠星石…」
「なんです?」
金糸雀は、結論に行き着かないままの不透明感を胸にしたまま、席に戻ろうとする翠星石を呼び止める
「その…水銀燈のうにゅーはどうだったかしら…?」
「…フ……たまんねぇ味のうにゅーだったですぅ…」
全く…水銀燈が羨ましいかしら…と呟いた金糸雀は、うら若きオヤジの答えを噛みしめるように席に着いた
「…チャイムも鳴ったし僕も帰るよ」
「ちょっと蒼星石、雛苺はクラスで一体なんて…
真紅が言い終わるより早く、蒼星石は授業に間に合うよう足早に教室を出ていく
「ふう…まあ後でまた聞けばいいのだわ」
真紅は小さなため息と共に、到底身の入らないであろう授業の準備を始めた
「…そう言えば水銀燈はどうしたのかしらね?」
*
「ふぅ…」
真紅達が一限を受ける頃水銀燈は、ひとり屋上で暇を潰していた
別に授業に出たくないとか、体調が悪いわけではない
ーなにしろ昨日の今日だから、今教室に行けばほぼ間違いなく翠星石からは消しゴムを、真紅からはピックを飛ばされる事くらい分かる
「…二限目くらいになればぁ…ほとぼりも冷めるわよねぇ」
暖かい朝の日差しに包まれながら水銀燈は一人そう呟くと、いつの間にか眠りについていた
*
四限目も終わり昼食の時間、隣のクラスから蒼星石が自分のお弁当を持って真紅の机にやって来た
「…結局水銀燈はどうしたのかしら」
「うーん…真紅に苛められるから教室に来れないんじゃないかな?」
「な…私がいつ水銀燈を苛めたというの!?」
…結構苛めてると思うけど…蒼星石はそうとは言えず、お弁当の蓋を開ける
「そういえば蒼星石、雛苺はクラスで何て呼ばれているの?」
「うん、そういえばそんな話もしてたね」
蒼星石はバッグから箸を取り出す
「雛苺はクラスで《ナイチンゲール》って呼ばれているんだ」
「ナイチンゲール?」
「そう、ナイチンゲール」
真紅はサンドイッチの袋を開け、不思議な顔をしなが口へと運ぶ
「素敵じゃない、《美声の歌手》でしょう?」
金糸雀の好きそうな砂糖入り卵焼きを口に運び、蒼星石はフフ…と苦笑する
「そうなんだ、僕も最初はそれで全部だと思っていたんだ」
「?どういうこと?蒼星石」
「…ナイチンゲールにはもう一つ意味がある、きっとこれを付けた人は真紅と同じ気持ちだったんだね…」
「もう…勿体ぶらないで早く教えて頂戴」
「フフ…もう一つの意味は…
「そうですぅ!!それで決まりですぅ!!」
「やっぱりカナの推理が正しかったのかしらー!」
ーようやく議論に決着がついたらしい、朝からやっていただけあって、二人とも行き着いた結論に満足そうだ
「雛苺は《胸の部分にシリコンを素材とした特殊な肌色のスーツ》を着ていたですぅ!!」
ー正しく行き着いたかは別問題である
「フフフフ…雛苺の化けの皮がはがれたですぅ…」
「早速確認かしらーー!!」
二人は勢いよく席を立ち、雛苺のクラスに突撃していった
「大変だね…二人も…」
「まったくなのだわ…」
二人は呆れ顔で、走り去る乏しい組をため息で見送った
「そうそう、もう一つの意味だったね……ナイチンゲールには…」
「…《裏切り者》という意味もあるんだ」
「…まったく……納得なのだわ…」
真紅はハァ…とため息をこぼすと席を立ち上がる
「どうしたの?真紅」
「少し屋上に行ってくるのだわ、どうせ水銀燈もそこにいるでしょうし」
真紅はそう言い残し、屋上に向かう
「……まさか…リアルうにゅーだったとは…ですぅ…」
「かしらー……」
ー途中で肩を落とし、死んだ目をしながらトボトボと教室に戻ってきた二人とすれ違いながら
*
「……銀…水銀……水銀燈!」
「…ぇ…?」
誰かが自分を呼ぶ声…水銀燈は寝ぼけ眼で顔を上げ声の主を見た
「……真…紅?」
「まったく…屋上で昼寝なんて翠星石がすることよ」
水銀燈はパッと起き上がり、おでこを抑える
「…大丈夫よ、今の所ぶつける気は無いわ」
ー今の所ーには気になったが、水銀燈はとりあえずおでこから手を離した
「所でなんの用ぉ?」
「別に大した用事じゃないわ…ただ…」
「ただ?」
「その……巨乳の秘密を…」
「…………へ?」
「だっ…だから巨乳の秘密を…私だけに教えて欲しくて来たのよ…!」
ーチャンスー水銀燈は真紅の態度を、そしてわざわざ自分に巨乳の秘密を聞きに来ることに対して、確かな優位を確信した
日頃のピックの恨みを晴らすチャンス…この滅多に無いチャンスに、水銀燈は静かに復讐の炎を燃やす
「フフ……まあ知らないこともなぁぃけどお~」
「本当!?是非教えてほしいのだわ!」
雛苺に負けた事もあるのか、真紅は物凄い勢いで水銀燈に迫る
「でもぉ~~真紅みたいな貧乳の極みにまで効くかはわからなぃしぃ~~」
「…………」
「そもそも私はそんな努力なんて~あんまりしてなぁいからぁ~~」
「………水銀燈」
「DNAレヴェルから違う真紅にぃ…私の方法は合わないかもしれなぃわぁ~~アハハハハ!」
「私のピックは百八式まであるのだわ」
「特に大豆イソフラボンがいいわよぉ」
「そう…ありがとう、水銀燈」
真紅はそう言い、額に三角の後を付け倒れている水銀燈と屋上を後にした
*
「おかえり真紅、水銀燈は?」
「フフ…彼女はずっと屋上で昼寝していたのよ」
「そう…じゃあもうすぐ帰ってくるね」
「……………」
「真紅、どうして黙るの…?」
昼休みも終了間際、水銀燈は蒼星石にすんでのところで救助された
もちろんその後の午後の授業中、水銀燈は結局ずっと翠星石の消しゴム攻撃に耐えながら過ごす事となった
「……この…食らうです…この…うにゅー…!!」
「……ひゃっ……痛っ……止めて…翠星石……」
「静かにするのだわ水銀燈」
「!!」
水銀燈は乏しい組からの攻撃に耐えながらもどうにか授業を受けきり、放課後を迎え、どこか殺伐としたバンド練習も終えトボトボと帰路についた
*
「ふう…今日も疲れたのだわ…」
いつも通りの練習を終え、真紅はいつも通り…ではないが、コンビニによってから家路についた
ーそして入浴後、落胆の表情をひっさげながら冷蔵庫を開け、コンビニで沢山買い占めた飲み物を一本手に取る
「これはローゼンメイデンの…バンドのためなのだわ……」
真紅はそう呟き、《大豆ノススメ》を一気飲みした
ー同時にちょっとだけ泣きそうになったのは真紅だけが知るお話
fin
最終更新:2007年01月23日 21:54