Story 酔いman 氏
湘南といえば何を思い浮かべるだろうか?真夏、海、サーフィン…
サザンのように湘南を題材した素敵な曲も多くある。
しかし、そんな湘南にももう一つの顔が存在するのだ。
「湘南青春ロックンロール」
湘南全域を手中におさめる最強の暴走族がいた。
その名も薔薇乙女と書いてローゼンメイデンと言う。
女性ばかりの暴走族、俗に言うレディースというやつである。
この薔薇乙女が生まれたのは今から2年前、初代総長の桜田のりを筆頭に別名、病院送りのめぐこと特攻隊長の柿崎めぐ。
そして木刀の巴こと親衛隊長の柏葉巴を中心とし、草笛みつ、そして父親が横須賀の米兵であるオディールフォッセーなど含めた国際色ゆたかなメンバーで瞬く間に湘南を纏め上げた。
そんな彼女らを尊敬し、集まった少女達が今の2代目薔薇乙女である。
~~深夜、とあるセブンイレブンの駐車場~~
「おまたせかしら~ッ!!」
「ウッスなの~」
「雛苺だけかしらッ」
「はいなの~っス!!」
「親衛隊長の翠星石と蒼星石はまだかしらッ?」
「ウッス、さっき電話でもうすぐ来ると言ってたの~ッス!」
「ところで、雛苺の後ろにいる子はだれかしらッ?」
「は、はいなの~、この子はヒナの後輩で薔薇水晶というの~ッス!
どうしても今夜の集会に混ざりたいって…ほら、金糸雀さんに挨拶するの!」
「……ウッス…私は薔薇…水晶です…夜露死苦ッス…」
「なかなか元気があっていいかしらッ!」
「あ、ありがとう…ございます」
「あっ、あの音は翠星石と蒼星石のXJ-Rかしらッ」
「おまちどーですぅ、あれ、総長と特攻隊長はまだですかッ!」
「はいなの~ッス! もうすぐ来るなの~ッス」
「んッ? その子は誰なんだい?」
「わ、私は…薔薇水晶…雛苺先輩と同じ…中学で…」
「この子は雛苺の後輩かしら、なんだか集会に混ざりたいらしいかしら」
「薔薇乙女の集会はハンパじゃねぇですよッ、気合入れないと特攻隊長の
水銀燈に殺されるですぅッ!!」
その時、セブンイレブンに向かって爆音が近付いてくる。
マルチリフレクターヘッドライトが駐車場にいる彼女達を照らす。
直管KERKERマフラーにマットブラックのカワサキZR-XⅡ、そのシートにまたがる少女が着ているのは真っ黒の特攻服。
そして、その背中には銀色の刺繍で薔薇乙女と記され、右腕には最凶 美怖偉厨栖禽(ビフィズス菌)と目の覚めるような刺繍が施されている。
そう、彼女こそ泣く子も黙る薔薇乙女特攻隊長 水銀燈であった。
「おまたせぇ~、真紅はまだ来てないのぉ~?」
「ま、まだ来てないですぅ~!」
「そぉ~、相変わらず遅いわねぇ~」
す、凄い、あの真紅さんを呼び捨てにできるなんて、初代薔薇乙女のメンバーと水銀燈さんだけだわ……。
水銀燈を見つめる薔薇水晶の眼差しは憧れを通り越し、尊敬に近いものがあった。そんな視線を感じた水銀燈は、ここで初めて薔薇水晶の存在に気付く。
「貴女はだぁ~~れ?」
「ば、ばばばば…薔薇…す、すすすす、水晶です……」
最凶の人物を目の前にして極度の緊張のためか、まともに喋れない薔薇水晶の心臓は今にも止まるのではないかと言うほど早くなっていた。
「ふぅ~~ん、そぉなの~、雛苺の後輩ねぇ~?」
「……ウ…ウッス……」
水銀燈に見つめられる薔薇水晶は今にも倒れそうなほどであった。
そこにもう一台の爆音が近付く。
「あっ、ようやく来たわねぇ~真紅ぅ~」
「遅くなって悪かったのだわッ!!」
「チィ~~ッス、お疲れですぅ~ッス!!」
「ウッス、お疲れ様かしらぁぁ~~ッス!!」
名前が表すように真紅のホンダCB400に乗った真紅が駐車場に走りこんできた。
しかし真紅の顔色は少し優れない。
「どうしたのぉ、真紅ぅ、気合が入ってないわねぇ~」
「どうしましたですかぁ、真紅さんッ?」
みんなが一斉に真紅を見つめる。そしてそんな中、真紅は一呼吸おいて間をあけると、ゆっくり話し出す。
「初代親衛隊長の巴さんが引退するのだわッ」
「えぇ~~なのぉぉぉぉ!!」
「それはマジなのかい?」
真紅の声に駐車場は騒然となる。それもそのはず、初代薔薇乙女の巴と言えば、湘南界隈では知らぬ者がいないほどの女。
泣きぼくろの巴、木刀の巴と色んな通り名を持ち、数々の武勇伝と伝説をもっていた。一説ではあの特攻隊長の病院送りのめぐよりも強いかも?との噂すらあったほどである。
「巴さんはどうして引退するのですかぁ~?」
「結婚よッ!!」
「マ、マジかよッ!!」
「マ~ジからしらぁぁ~!!」
「えぇ、さっき初代総長から電話があったのだわ、来月の第3日曜日に
巴さんの引退集会をするのだわ」
「引退集会なの~ッスか?」
「えぇ、横須賀からも羅怖螺州(ラプラス)や閻呪(エンジュ)も参加する
大きな祭りになるわッ!!」
横須賀の羅怖螺州、神奈川の閻呪とは良きライバルであり良き強敵(友)であった。その両チームを交えて大きな引退集会が開かれる。
そこで2代目薔薇乙女として巴の第二の人生のスタートに応援のエールを贈ることになった。
「応援のエールって何をするのぉ~?」
「私もいろいろ考えたけど、歌を贈ろうと思うのだわッ!!」
「う、歌かしら~ッスぅ?」
「そう、最高のロックンロールで巴さんを送り出すのだわ」
「ロック、いいわねぇ~、やっぱり矢沢の永ちゃんねぇ~」
「そうね永ちゃんね、今から1ヶ月間バンドの練習をするのだわ!」
「真紅さん、バンドって言っても僕たちは譜面すら読めないッスよ?」
「気合よ、気合があればケンカもロックも負けないのだわッ!」
「……あ、あの……」
「だれ? 貴女は誰ッ?」
「こ、この子はヒナの後輩で、薔薇水晶なの~ッス、目障りなら帰らせるなの~ッス!!」
「そう、薔薇水晶っていうの? で、何か言いたそうね、言ってみなさい」
「…は、はい、私は…小さい頃にピアノを習っていたから………」
「譜面が解かるのぉ~?」
「ピアノが弾けるのかい?」
「…は、はい…少しなら……」
「分かったわッ、今日から貴女も薔薇乙女のメンバーよ、私たちに音楽を教えなさいッ!!」
こうして湘南最強の暴走族、薔薇乙女ことローゼンメイデンはバンドを始めた。
そう、この瞬間から彼女達の熱き青春の叫びが詰まったロックが深夜のアスファルトの上を走り出したのだ!!
最終更新:2007年02月02日 23:59