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Story  ID:uegOsxn50 氏(136th take)
「常々言っているようにロックの根源には反骨精神があって然るべきなんだよ。
 客受けがいい曲を作って何になる?出来上がるのは君も嫌うハリボテじゃないか」
「反骨精神だけではお腹は膨れないのだわ。弾けるのは安定した軌道に乗ってからでもいいじゃないの」
「その考えが許せないって言っているんだ。安定を求めているうちに僕らの心は腐っていく。
 中身のないものばかり作っているうちに、中身のないものしか作れなくなるなんて、僕は嫌だ」
紅いのと蒼いのが言い争ってて五月蝿い。
「翠星石は、甘いの、好き?」
「甘いもんばっか食ってると太るです」
「じゃあ、チョコレートも嫌いなの?」
「翠星石は見た目にも気を使うレディですから。
 ……でも、どーーしてもってんなら食べてやらねーこともねーです」
こっちは翠色と桃色がイチャイチャしてて暑苦しい。
「お姉さま……」
そしてここにも冬だっていうのに暑苦しいのが一人……嫌になる。

ローゼンメイデンゲリラライヴ~聖人処刑~

「反骨精神が」「チョコレート」「時には我慢も」「お姉さまはチョコ」「乙女として体重を」
「ならあなたは太く短く朽ち果てるのが」「じゃあクッキー」「お好きですか?」「贅肉です贅肉」
うっさいわねぇ……この娘たちは静寂を尊ぶってことを知らないのかしら。
第一なんだって一つの部屋に集まるの?わけわかんなぁい、馬鹿みたぁい。
「あの」「マシマロ!」「もともとバレンタインなんてのは」「本望だよ」「お姉さま……?」「信じられないのだわ」
「聞こえてますか……?」「まさか貴方の口からそんな言葉が」「反骨」「バレンタイン」「聖人が処刑」「パフェ!」
!?
今……なにかすごく……。
「そんなだからぶくぶく」「安全に生きようなんて」「太ってないのよ!」「そんな地雷原を走り回るような真似」「チョコ」
「うるっさいわねぇ!!ごちゃごちゃごちゃごちゃ、黙りなさい!!」
よし、静かになった。
思い出せ、思い出せ、口、言葉、処刑、本望……反骨、聖人……。
「ヤクルト狂が叫んだのだわ」「別に五月蝿くは」「嫌われた……」「おめーのせいです!」「やー、翠星石がー」
「黙りなさいって言ってんのよ!ジャンクにするわよ!?」
貴方、バレンタイン、パフェ、バレンタイン、反骨、聖人処刑……。
「ああ」
「ヤクルト狂が天を仰いでるのだわヒソヒソ」「今までの悪事を償おうとしてるのかもヒソヒソ」「お姉さま……?」
「あれ、たまに雛もやるのよー」「誰も聞いてねーですヒソヒソ」
まだなにか聞こえるけどどうでもいい……。
「ヤクルト狂が机に向かっている!あり得ないわ!」「やっぱり。あれは間違いなく反省文だね」
「あの虚乳がそんなん書くわけねーです」「あの動きは……作っている……?」「水銀燈もお絵描き好きなの?」
……………………出来た!!
「貴方たち、ライブの用意をなさぁい……楽しい楽しいバレンタインよぉ!」

                    *

「……やっぱり無茶だよ。せめて一回でも合わせてから」
「あらぁ?あなたの好きな反骨精神はどうしたのかしらぁ。それとも口だけでやっぱり安定がなきゃなにも出来ないの?」
「!……やってやろうじゃないか」
蒼いのはオッケー。
「薔薇水晶もやるわよねぇ?」
「……喜んで」
紫もオッケー。
「蒼星石がやるなら、翠星石も……」
翠もオッケー。
「雛苺、あなたはぁ?」
「ぅー、……真紅ー……」
「自分で決めなさい。私は行かないけれど」
「あー、うー……」
「煮え切らないわねぇ、うだうだ言ってないであんたも来なさい!」
「は、はいなのー!」
桃もオッケー。
「もう一度言うけれど、私は行かないわ」
「貧乳はお呼びじゃないわ」
「な……!!」
紅いのも下準備オッケー。
「楽器は持った?じゃあ行くわよぉ、目指すは新宿!」
「はい」
「ん」
「おー」
「おー!」
黄色いのが『バレンタインを楽しみにしておくかしらー!』とか言ってたけど、いいか。
どうせ忘れてるに違いない。

                    *

「ふん」
なんなのだわ?なんなのだわ!?これでは私が和を乱しているみたいじゃない!
全くこれだから虚乳は!これだからヤクルト狂は!!無茶なのだわ!馬鹿馬鹿しいにもほどがあるわ!
……でも、彼女が書いた曲、凄く綺麗だった。弾きたい、弾いてみたい。
だけど。さっき出来たばかりで一度も練習していない曲をいきなり路上ライヴなんて。
もしも失敗したら?もしも途中で忘れてしまったら?
真紅が、ローゼンメイデンの真紅がそんな恥ずかしい真似を出来るわけがない。
真紅が、真紅が、真紅、が……真紅が?
私が失敗するから問題がある?私じゃなかったら?私だとばれなければ?
例えば、覆面で顔を隠す、とか。
……。

                    *

人、結構いるのねぇ。うじゃうじゃと目障りだわ。
「この辺でいいかしらねぇ」
「ちび苺、これちょっと持ってろです」
「ドラマーは大変なのよ」
「お姉さま……コードの接続って……」
「それで合ってるわよ。あんたいい加減、分かってて聞くのやめればぁ?」
「お姉さまと少しでも……話したいから……ぽっ」
ほんと、救いようがないくらい暑苦しい。
「喋ってないでさっさと準備なさぁい」
「チューニング完了、僕はいつでもいけるよ」
「こっちもおっけーです」
「なの!」
「準備完了……」
「貴方たち、これ、着けなさぁい」
布を四つ、放り投げる。
「覆面、しかもミル・マスカラスですか」
「僕はドス・カラス……」
「雛のマスクはなんて言うの?」
「ちびの癖に発育よすぎるからジャイアント・マシーンは妥当です、ですが非常に忌々しいです」
「アイアムデストロイヤー……デストローイ……」
「そして水銀燈はハルク・ホーガン……なんだって覆面なんだい?」
「天下のローゼンメイデンが路上ライヴじゃ三流週刊誌の笑い者だからよぉ。
 最悪、最後まで知らぬ存ぜぬで押し通せば社長も文句言わないでしょ。
 ……さぁ、いい感じに人も集まったし始めるわよぉ」
「あいあいさー」

                    *

……。
「やっぱ真紅がいないと締まらんです!」
「実力のなさ誤魔化してんじゃないわよヘボドラム!」
おっそいわねぇ、トマトの分際で何してんのかしら。
「な、誰がヘボドラムですか!!」
あーうっさいうっさい。
「でもやっぱりメリハリに欠けるよ!」
「変態は自分の手元しっかり見てればいいのよ!」
「僕はノーマルであって断じてオタクじゃない!」
誰もオタクなんて言ってないのに。やっぱり姉妹揃って馬鹿なのねぇ。
にしても遅い。発破が足りなかったかしら?
ええい貧乳貧乳貧乳!断崖絶壁洗濯板のド貧乳!!

「はーっはっはっはっはっはっはぁ!!」

「鳥です!?」
「飛行機なの!?」
「いえ、あれは……」
「ミ、ミスターアメリカだ!!」
口には出してないのに……地獄耳ね。
「おっそいわよぉ、ナイチチマスク!!」
「ミスターアメリカよウソチチマスク!!」
「準備はオッケー!?」
「いつでもオッケー!?」
「1,2,3,4!!」
これ、この歌声が聞きたかった。
真紅はブサイクで可愛げの欠片もないけど、才能だけはあった。
それも稀代の天才、この水銀燈に勝るとも劣らない才能。
いつからか、曲を作っていると真紅の歌声が聞こえてくるようになった。
真紅の歌声が、私の曲の土台を作るようになり始めた。
私が曲を編みあげ、真紅が形を示す。
時には真紅が編み上げたものに、私がアレンジを加えることも。
馬鹿馬鹿しい。本当に馬鹿馬鹿しいけど、真紅の歌声に惚れているのかもしれない。
……私のイメージじゃないわねぇ。
「もっと声出しなさいツルペタマスク!!」
「黙って私の歌を聞きなさいタレチチマスク!!」
ああ、やっぱりバンドはこうじゃないと。
場所なんて関係ない。この子たちと一緒に、私を、私たちを叫びたい。
もっと、大きな声で。もっと、大きな音で。もっと私たちを。
もっと、もっともっと。ずっと遠くまで。

                    *

「んぅー……」
「タクシー、こっちですぅ!」
「雛苺、もうすぐ家だからちゃんと起きててよ?」
「分かってる、のー……」
疲れたわぁ。
「お姉さま、それでは……」
「じゃぁねぇ」
やっと涼しくなる。
「おめーらちゃんと歯ー磨いてから寝ろですよー!」
「おやすみー」
「なのー……」
双子と魔チチはタクシー、眼帯恋愛娘、略してガンタレ娘は終電で帰るらしい。
「水銀燈」
「なぁにぃ?」
「チョコと酒を口に含んで思いっきり客に吹くなんて何を考えているのかしら?」
「さぁ?やりたいからやっただけよぉ?第一今日はそういう日だもの、仕方ないわぁ」
「貴方には品というものはないのかしら?」
「ロックに一般人の品を持ち込むなんてそれこそ品がないわぁ」
「な、私のどこが」
「あら、ごめんなさぁい。そういえばあなたはちゃんと品がついてるわねぇ、胸に」
「……それ以上言って御覧なさい、あなたの大事なレコードが都心上空を舞うことになるわよ」
「真紅ったらこわぁい」
「ふん」
ほーんと、可愛げが微塵もない。
「まだ、安定が欲しい?」
「……さぁ」
「真紅はビビりすぎぃ。適当でも結構形になるものよぉ?」
「努力で最大の力を出せるのならより努力した方が良いに決まってるわ」
泥臭いわねぇ。少年漫画の主人公にでもなったつもりかしら?
「秀才の完璧主義ほど性質の悪いものはないわ。ほんと、胸も器も小さぁい」
さようなら水銀燈のレコードたち……」
「悪かったわよ、秀才は所詮秀才だものねぇ。天才の水銀燈と比べたのは謝るわぁ」
「帰るわ」
「あらぁ?もう帰っちゃうのぉ?」
「これ以上あなたといても疲れるだけだわ、おやすみなさい」
つれなぁい。
「ばいばぁい」
私も今日は疲れたし、帰ったらすぐに寝ましょうかぁ……。

                    *

「あ、あら?皆どこ行ったのかしら!?
 ちゃんとバレンタインを楽しみにしておけと伝えたわ!なのに誰もいないわ!
 これはもしかしてカナからのチョコは要らないという事かしら!?そうなのかしら!?」



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最終更新:2007年02月15日 16:00