Story 酔いman 氏
新世紀0027、人類は度重なる大きな戦争で荒廃した街を復興させ、人類統一政府を立ち上げた。
「あの悲劇を繰り返すな」
その言葉をスローガンに人類統一政府は人々から暴力、SEXなどを想像させる娯楽を一切禁止した。
その中には本来スポーツであるはずのボクシングや柔道なども含まれ、芸術の世界でも女性の裸体を描いた絵画なども禁止、そしてその波は自由最後の砦とまで言われている音楽の世界にも容赦なく押し寄せてきた。
中でもロックなどは激しい攻撃に曝され、ロック=犯罪とまで言われた。
そして事実上、音楽の世界、いやこの世からロックミュージックは消滅した。
*
真紅は長い金髪をかき上げながら、ちょうどタバコほどの大きさの箱を取り出すと、4~5個ほど並んでいる小さなボタンを押し、何も無い空間にそっと両手をかざし、小声で囁く。
「ページアクセス、アンダーミュージックだわ」
その声に反応したのか、小さな箱から瞬間的に映像が空間に現われる。
真紅はその映像をまるで本のページをめくるようにすると、次から次へと新しい画像と映像が空間に現われては消えていく。
「あったわ、これね」
数十回ほど映像を消していくと、不意に一つの静止画像で手を止める。
そして周りを少し警戒ぎみに見渡し、誰も居ないことを確かめると同じように小声で囁く。
「アクセス、ディープ&ボトム、クリミナルだわ」
真紅の囁きが終わると静止画像が一瞬乱れ、その直後にかなり古いタイプであろうポリゴン処理された女性が笑顔で話しかけてくる。
「ハロー、ブッ飛びたかったらパスワードを言ってね」
その声に真紅はニヤッと笑うと一度だけ大きく息を吸い、そしてパスワードを口にする。
「ユー・ダイ・マザー・ファッカーだわ」
「OK! パスワード承認しました。ハロー真紅、心おきなくブッ飛んで下さい」
ポリゴン処理された女性が言い終わると同時に真紅は大きめのサングラスをかけ、サングラスのフレームの一部をそっと触る。
その途端に真紅は巨大なライブ会場にいた。
響き渡る大音響、飛び散る汗は激しいロックのリズムに支配されている。
狂ったように腕を振り上げ、声高々に叫ぶ歌は心と魂を揺さぶる。
「真紅、真紅、真紅!」
巨大なサウンドの波に酔いしれている真紅の肩を強く誰かが揺さぶる。
そしてサングラスのフレームのボタンを押すと、今まで繰り広げられていたライブがパッと弾けて消えた。
「誰なの?」
サングラスを外すと、そこに心配そうな顔付きで雛苺がたっていた。
警察でないことを知った真紅の口からフゥ~と安堵のため息が漏れる。
「驚かさないで頂戴、雛苺。何の用なの?」
「めっ!めっ!なのよ~、また真紅は違法ミュージックを聴いていたの~」
「あら、別にいいでしょ、誰にも迷惑はかけていないわ」
「めっ!なの~、ロックは禁止されてるの~、見つかったら警察に連れていかれるのよぉ」
「そーですぅ、見つかったら大変な事になるですぅ~」
「あら、翠星石もいたの?」
「いま来たところですぅ……所で真紅ぅ、今度は何を聴いていたですぅ?」
翠星石は真紅が聴いていた曲が気になるのか耳元で囁く。
その声に真紅はクスッと笑う。
「貴女もスキなのでしょ?翠星石」
「うぅ、ま、まぁ、ほんのちょっとだけですけどぉ~」
真紅の言葉に翠星石は白々しく口笛を吹きながら答えた。
そんな翠星石を見て今度は声に出して笑う。
「ふふ、ディープパープルのSMOKE ON THE WATERだわ」
「ディープパープルですぅ~~!!」
真紅の言葉に思わず驚きの声を発した後、翠星石は両手を自分の口にもっていき、周りをキョロキョロと見渡す。
「ちょっと翠星石、声が大きいのだわ、誰かに聞かれたら大変よ」
「す、スマンですぅ~。でもディープパープルをよく見つけられたですねぇ~、あれはA級違法ミュージックですよぉ~」
「まぁね、昨夜偶然に見つけたのだわ、でもロックって聴いていたら凄く体が熱くなって気持ちいいのだわ」
「でぃーぷぱーぷる?それって有名な違法ミュージシャンなの~?」
「チビ苺はディープパープルを知らないですかぁ?」
「まぁ、雛苺が知らないのは無理ないわ、だってディープパープルは200年も前のミュージシャンだもの」
「ほぇ~~200年前なの~?車が地面を走っていた頃なの?」
「そうよ、遥か昔はロックが違法ではなく、人々が自由に聴いていたわ」
「そうですぅ~、昔はいろんな音楽があったらしいですぅ~……
翠星石も昔の音楽は好きですよぉ、でも大体が法律に引っかかるからなかなか聴けねぇですけどぉ~~」
「そうね、でもどうしてこんないい音楽が禁止されたのかしら?」
「う~ん、誰か偉い人が決めたのぉ~」
「誰ですぅ、その偉い人って?翠星石は納得いかねぇですぅ!」
「確かに私も納得いかないわ、昔は私たちみたいな人でも自由にロックが演奏できたと本で読んだことがあるわ」
「ほえぇ~、それ本当なのぉ?」
「本当よ、たしかバン…バンド、ロックバンドとかって書いていたわね」
「ロックバンドですかぁ~、カッコイイですねぇ~何だか翠星石もそのロックバンドってのをヤッてみたいですぅ~」
「ダメなの~、そんな事したら本当に逮捕されるのぉ~」
「そうね、面白そうだわ、それに見つからなければ大丈夫よ雛苺」
「バンドってのを結成しますかぁ?真紅ぅ」
「いいわね、今から私たち3人はロックバンドよ!!」
今3人の少女によって失われた音楽が復活しようとしていた。
その活動はとても危険なものでもあったが、後に彼女達と運命を共にする新たな4人の少女が加わり、この閉塞感ただよう時代に1つの光を灯すことになるとは誰も気付かなかった。
(以下執筆継続中)
最終更新:2007年04月11日 23:29