Story ID:1E/KIg2F0 氏(197th take)
金糸雀には深い音楽理論の知識も、目醒ましい演奏の腕も無い。
金糸雀は、それゆえ、薔薇水晶と二人きりというこの状況に、あせあせとしていたのだ。
先に口を開いたのは、薔薇水晶だった。
「昨日、初めてシックスナイン素で燃えた」
「ふぅーん、それは初耳かしら…っえぇぇ!!?」
「いつもはあまり気に留めていなかったけれど、
上下を逆にするだけであんなにも素晴らしくなるなんて思いもよらなかった。
最高にヒートアップした…」
「う…そう、なのかしら――」
(しっくすないんというと、アレかしら…
カナはやったことないし相手だっていないし…)
金糸雀はうまく返事を出来ずに、薔薇水晶の言葉は続く。
「基本形はあまり好きじゃなかったけれど、やっぱり、色々転回させてみないといけない。
私の知識もまだまだ…」
(基本形? それって48の何とかっていう…
展開というと…それを色々と使い回しながら…
というかそういう問題じゃないかしら!)
「ば、薔薇水晶、そういう話題は、ちょっと…」
「え…? あ……ごめん」
金糸雀はアウト感の強い切り返しをした。もとより話題がアウトなのだから仕方がない。
薔薇水晶が立ち上がりキーボードを弾き始ると、ちょうどドアが開き、メンバー達が戻ってきた。
「戻ったのー! あ、金糸雀もうお腹だいじょぶなの?」
「もうすっかり平気よ、心配かけちゃったかしら」
「金糸雀の間の悪さは異常ですぅ」
部屋がにわかに騒がしくなる。
上着を脱ぐと水銀燈は、すぐにギターを持ち、コードを弾く薔薇水晶の傍に寄った。
「それsus4?」
「ううん、Cシックスナインス」
「ふぅん…テンションを最低音に、ルートを最高音にしてるのねぇ」
「そう。昨日、見つけた」
「へ?」
金糸雀の間の抜けた声に、メンバーが振り向く。
「金糸雀…今弾いてたのがシックスナインス…音の方が解りやすいよね?」
「あ、あー、解ったかしら! ばっちりかしら!」
「コード知らない金糸雀だから、どうせ体位がどうとか考えてたんじゃなぁい?」
「そ、そんなことないかしらー! この金糸雀がそんな愚…」
「かなりアレな話題ね。ふたりとも、その続きは練習が終わってからにして頂戴」
「はぁいはい」
水銀燈のその言葉を最後に、練習は再開された。
金糸雀は、ひどく赤面した。
(おわり)
最終更新:2007年06月12日 14:17