サーヴェリー姉妹-7
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翌朝、すっきりとしない気分で目覚めた。まだ昨日のことを引きず
ってしまっている。先に起きていたフプレは「朝から何暗い顔して
るのよ、早く顔でも洗ってさっぱりしなよ。」と気遣ってくれた。彼
女自身はいつもと変わらぬ様子だった。背に霊が二体憑いているこ
と以外は・・。
朝食をとり終わり、片付けでもしようかと思ったとき、部屋のドア
を誰かがノックした。
「はぁい、どちら様ですか?」
「ブルネンシュティグ自警軍です。」
!!自警軍!?
―ブルネンシュティグ自警軍といえば、街中で起きた殺人、強盗、
詐欺、その他様々な犯罪を取り締まる機関である。そんな方が何故
私たちのところに?
すぐにドアを開けると自警団の象徴である白銀のコート、白い鎧、
灰色のブーツと白基調の装備の男が2人、立っていた。
「初めまして。突然ですが、フローテックという方を御存知ですか
な?」
「ええ、昨日お仕事を頂きましたが・・。」
「実は、その彼が今朝、遺体で発見されたのです。・・奥様と共に。」
「ええっ!?」
「そこで、あなたたちには現場でいくつか検証して頂きたいのだが、
よいですかな?」
私たちは頷くと朝食の片付けもせず、慌しく部屋を出た。
「ここだ。」
連れてこられたのは南西地区にある団地の一部屋だった。部屋に入
ると、むわっと生臭いにおいが鼻に纏わり付く。その悪臭は向かっ
て左奥の部屋から発せられているようだ。
「この人に間違いはないか?」
その、左奥の部屋に入ると顔から鎖骨辺りまでを白い布切れで覆わ
れた二人の人間が床に寝かせられていた。自警軍の一人が男の方の
顔を覆っている布を取り、私たちに確認を求めた。
「はい、確かにこの方でした・・。」
しょげた顔をし、私は答えた。布を取られた男の顔は苦痛に歪んだ
まま、その形相を留めていた。首には一Gほどの穴が空いており赤
黒く変色した肉が露になっている。
「君たちは、なにかこの御夫妻が殺されるような要因を思い当たら
ないか?」
そんなことを言われても、昨日知り合ったばかりなのだ。もちろん、
思い当たる節などなかった。しかし、窓際のショーケースに目を向
けたとき、私の顔は血の気が引いたように青く変色した。
2
549 名前: FAT 投稿日: 2005/08/18(木) 19:35:34 [ yJCwVqfI ]
「バインダー・・・」
そう、あの灰を入れていた瓶が、粉々に割れ、霧散していたのであ
る。
「ふむ。やはりバインダーか。」
自警軍の男はその答えに満足したように顎に手を当て、ヒゲを一撫
でした。
「我々も、彼がバインダーの調査を依頼していることは知ってい
た。やめるようにと忠告はしておいたのだがな・・。バインダーの
ことは我々も手を打ってきた。だが、奴は何度倒しても、どんなに
粉々にしても蘇った。やつは不死身なのだ。だが、まさか体の一パ
ーツだけでも意思を持ち行動できるとは。・・・放っておくしかない
と思っていたが民間人が犠牲になってしまった今、やはり動くしか
ないな。」
男はそういうと私たちに協力を求めた。もちろん、私たちはこれを
受けた。肉親に殺された可哀相なフローテックさんを弔うために。
「すまないな、我々の軍からも腕のいいやつを一人護衛につけよ
う。」
おい!と男が声をかけると後ろでずっと立っていたもう一人の自警
軍の男が前に出てきた。
「初めまして。わたくし、レニィ=ストラフスというものです。以
後お見知りおきを。」
そういって丁寧にお辞儀をしたその人は、気品のある整った顔立ち
をして、背も高く、髪はクセもなくキメ細やかで長さは目に届くか
届かないかといった程度。金色で光を受けて輝いて見える。一般に
言う美男子というものだろう。がたいはお世辞にも良いとは言えな
い、華奢なつくりで鎧が大きく見える。頼れるのだろうか?
『はい、よろしくおねがいします。』
不安を抱きつつ、挨拶を交わし、家の外に出た。
「なぁ、君たち。」
ん?今、この人が発言したのか?
「教会に寄らないかい?頼れる友達がいるんだ。」
なんか・・。第一印象と違う。もっとこう・・堅物なイメージを抱
いていたが、目の前のその人はヘラヘラとした笑顔を見せている。
「さ、行こう、行こう。」
少し楽しそうに私たちを先導するレニィの姿は先程まで抱いていた
真面目な青年・・ではなく無邪気な少年のように私の目には映った。
「おーい!!タカーー!!居るかー??」
教会に入るやいなや、レニィは大声で叫んだ。
「・・レニィ、ここは神聖な場所だ。騒ぐなと何度言えば分かるん
だ。」
やれやれ、といった感じで大柄の色黒男が右奥の部屋のドアを開け
現れた。タカと呼ばれたその男は、胸に大きな十字架が描かれた服
を纏い、服からはみ出している腕、脚は筋骨隆々、躍動しているよ
うにも見える。おそらく聖職者だろう。顔は・・こちらの美青年と
比べてしまうとやはりどうしても見劣りしてしまうが、キリッとし
た目にはなにか頼れるような雰囲気を感じることが出来る。レニィ
という少年のような人とは違って・・。
「やあ、ごめん。ついクセで。それよりタカ、地下基地に行かない
かい?バインダーさんを葬りに。」
「バインダーか。噂には聞いていたがお前が動くとなれば大事だ
な?」
「そうと決まった訳じゃないさ。意外と楽に終わるかもしれない。
ただ今回の事件は異例だからね。バインダーが何か特別な力を持っ
ている可能性が高い。」と、レニィは真剣な顔で言った。やはり美男
子。真面目な顔をしていればかっこいい。
「ふむ・・。用心していくか。で、そちらのお嬢さんたちは?」
ほったらかしにされていたが、気に掛けてくれたのか、タカさんが
私たちを見た。
「初めまして、私はフラン=サーヴェリーといいます。」
「私はフプレ=サーヴェリーといいます。」
「初めまして。タカルート=アングラといいます。タカとでも呼ん
で下さい。」と、ニッコリと笑った。なんとも優しい笑顔をするもの
だ。
私たちは事件の経緯を説明し、各々準備をしてから再び東口に集合、
ということで別れた。
集合時刻13:00
私たちが東口に行くと彼らは既に集まり、談笑していた。
「あ、きたきた。んじゃ、いこっか。」
そう言って立ち上がったレニィの手には柄が身の程もあり、刃先は
稲妻のような形をした槍が握られている。・・華奢な彼に扱えるのだ
ろうか?
一方タカさんの左手には小さな丸い盾が、右手にはなにも持ってい
ない。・・魔法でも使うのだろうか、攻撃に役立ちそうなものは何も
持ってなさそうだ。
・・・彼らは戦力にならないかも。と勝手に思い込んだ。
不安を抱えたまま地下墓地への階段を下る。すると、以前は感じな
かった敵意をその入り口から、既に感じ取った。
「フプレ・・。」
「分かってる・・。」
今回は、一筋縄ではバインダーのところまでさえも辿り着けないか
もしれない・・・。そんな考えが浮かび上がるほどに敵意は墓地の
中に充満し私たちを睨み付けていた・・・。
最終更新:2008年07月07日 22:46