サーヴェリー姉妹-8
1
「へえ、たいした団体さんだなぁ。」
レニィは私たちを待ち構えていた大量の骸骨たちを目の当たりにし
ても、余裕の表情だ。バインダーよりも小さいが、少なくとも10
体はいるだろう骸骨たちは、手に錆び付いた剣や斧を持ち、一斉に
襲いかかってきた。
私とフプレは召喚のため数秒の遅れをとってしまった。その間、レ
ニィは素早く敵集団の中に入り込むと長い槍を頭の上で振り回した。
すると、槍の両極からそれぞれ炎と氷が噴き出し、あるものには獄
炎を、あるものには凍傷を与え、骸骨たちの悲鳴がこだまする。回
転を重ねるごとにその威力は上がり遂には敵全てをひれ伏してしま
った。
すごい・・・。
この人は私の想像をいい意味で裏切ってくれた。召喚を終えたとき、
既に敵は炎と氷に包まれ私は加担することもなく、ただ敵が崩れ去
っていくのを見ているだけだった。
「どうしたの?さぁ、行くよ。」
そう言い倒れている骸骨を踏みながらレニィは歩き出した。
「あの~・・・」
とひょっこり後ろから現れたフプレはレニィの隣に並び、「さっきの
は魔法ですか?」「どうやって覚えたんですか?」などと質問した。
彼女の性格上、興味の湧いたものは何でも知っておきたいのだろう。
入り口の敵を倒したからといって、この突き刺さるような敵意が消
えることは無かった。昨日感じたあのバインダーの殺気には劣るが、
明らかに私たちを敵視し、プレッシャーをかけてきている者がいる。
緊張の糸を切らさぬよう、周りに注意を払い歩き続けた・・・。
昨日バインダーの居た大部屋。その隣の部屋にレニィが足を踏み入
れた瞬間、突然左右から突き出された三つ又の槍が彼の両脇に深々
と突き刺さった。
『きゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
レニィに刺さった槍を見るなり、私たちは絶叫してしまった。ヘビ
のような頭を持つこのモンスターがその槍を引き抜くと、傷口から
おびただしい量の赤い血が流れ出し、レニィは力無くその場に倒れ
こんだ。
「おい、早く攻撃を!!」
タカさんはレニィのことなど気にしていないかのように、私たちに
攻撃の指示を出した。
一瞬錯乱状態に陥った二人だったが、なんとか正気に戻り二匹のリ
ザードマンに闘いを挑む。二匹の間にメラーが火を噴く、リザード
マンたちは左右に飛び退ける形でこれを回避、しかし飛んだ先には
それぞれウィンディとスウェルファーが待ち構えておりガッチリと
羽交い絞めにし、戦闘は終わった。
「殺しちゃったら可哀相だよね、フプレ。」
私はやさしいフプレのため、敢えてトドメを刺さなかった。しかし、
フプレの答えは私の期待していたようなものではなかった。
「フラン、殺しても大丈夫だよ。もう既に死んでるから・・・。」
えっ!?と私が驚いたのと同時に、スウェルファーに捕まっていた
ほうのリザードマンが抜け出し、私に向かい突進してきた。近くに
いたメラーが私の前に飛び出し、身代わりになってくれようと体に
ギュッと力を入れたそのとき、敵の胸を後ろから槍の矛先が貫いた。
「あ・・・」
この槍は・・レニィ!彼はまだ生きていたのね!!
後ろから突き立てられた矛先はそのまま下に振り抜かれ、胸から下
が真っ二つになった。続いて、くるりと後ろを振り返った彼はウィ
ンディに捕まっている無抵抗なリザードマンの前で槍を振り上げ一
刀両断、真っ二つにしてしまった。
2
570 名前: FAT 投稿日: 2005/08/19(金) 13:17:19 [ yJCwVqfI ]
「早く攻撃しろと言っただろう。」
タカさんが少し不満気にレニィに対して言った。
「そう怪訝になるなよ、この娘たちの実力が見たかったんだ。」
そう言ったレニィの両脇にはあるはずの傷口が無くなっていた。
あれ?私たちは幻でも見せられていたのだろうか?
「ふん、ダミーを突いて気が弛んでいる隙に倒してしまえば造作な
かったのにな。」
ダミー?私にはタカさんの言っていることの意味が分からなかった。
ふと、床に目をやると血だらけのレニィがまだ倒れていた。しかし、
レニィは今タカさんと向き合い話しをしている。
「俺のダミー技術も向上したもんだろ?」
「まだまだ。血が赤すぎる。本物はもっと黒みがかっている。それ
に血が出すぎだ。いつまで出続けるんだ、人間の血はこんなに大量
にはないぞ。」
ちぇっと舌打ちをし、レニィはダミーを消した。
「すごい!すごいよ!!レニィさん、それどうやってやったの?」
フプレはその不思議な現象に目を輝かせていた。
「レニィでいいよ。これも魔法ってやつさ。ホントに死んだと思っ
た?」と笑いながら答えた。
「うん、ホントに死んじゃったと思ったよ。すごいよ!私、レニ
ィのこと尊敬しちゃうよ!!」
尊敬なんて・・。と照れ笑いをした彼の頬がほんのり赤くなった。
「今のが目で追えなかったんじゃあ、実力的にはたいしたことはな
いな。」
タカさんのその一言に、私とフプレは顔をこわばらせた。
「それに、レニィが死んだと思い込んだとき、動揺しすぎだ。そう
いった行為が仲間全てを危険に晒す。相手に情けをかけるのも同じ
だ。戦闘は心理戦になりうることも多い。下手な同情は死を招くぞ。」
・・・確かに、私たちは甘すぎるのかもしれない。タカさんの言葉
を重く受け止め、胸に刻み込んだ。
「まぁまぁ、お説教は帰ってからにしようぜ。気を落とすようなこ
とないよ、二人とも戦闘力は申し分ないんだから。」あとは経験かな
っとまた、笑ってみせた。・・笑顔の眩しい人だ。この一言で大いに
元気付けられた。
ところで、フプレの言った「もう既に死んでいる」というのはどう
いう意味だったのだろう?リザードマンは死んでいるのに動いてい
たということ?でも・・そんなことが・・?・・・腑に落ちないが
今はとりあえず進もう。
バインダーの部屋。・・とでも名づけようか。他の部屋よりも格段に
広く、中央には何かの儀式にでも使うのか、魔方陣のようなものが
描かれた円形の台が青白い微光を漏らしている。その台の上に、胡
坐をかきニタァっと不気味な笑みを浮かべている化け物が・・・バ
インダー。奴は、昨日にも増して激しい憎悪の念を放つとゆっくり
立ち上がり、口から青白い息を漏らすと、再びニタァっと嘲るよう
に笑った。
「行くよっ!!!」
私は力いっぱい笛を吹き召喚獣を突撃させた。続いてメラーも突進
していく。ウィンディとスウェルファーがバインダーを牽制し、メ
ラーの到着を待つ。炎が十分に届く距離になるとウィンディたちは
素早く敵から離れメラーが火を放つ。前回は灰になったバインダー
だが、口から青白い息を吐き、これが炎を遮った。しかし、フプレ
は怯むことなくメラーに命令を与えバインダーの体にそのごぶとい
尾で一撃を喰らわせた。視界が炎と自身の息とで埋まっていたバイ
ンダーはこれをまともに受け、骨の砕ける渇いた音が辺りに響く。
苦しそうな苦悶の表情を浮かべ敵は一旦私たちとの距離をとった。
「残念でした。」
いつの間にかレニィはバインダーの背後に回っており、こう一言か
けるとダミーを三体産み出し、前後左右、全方位から突きを繰り出
した。再び骨の砕ける嫌な音が鳴り響き、バインダーはその活動を
停止した。
「油断ならないから。」とレニィは槍を振り回し、氷の魔法でバイン
ダーを氷詰めにした。
・・・バインダーは倒した。しかし、私たちを襲う敵意はなくなる
どころか一層強く、より恐ろしいものとなり、私たちは辺りを見回
した。
最終更新:2008年07月07日 23:07