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サーヴェリー姉妹-10


1



「四人とも、ご苦労であった。今回の件、挙げた成果はこの国にと
ってとても重要なものとなるだろう。礼を言う。」
そう言ったのは白髪の、大柄な大男で、釣り上がった厳しそうな目
からは彼に威厳を感じる。

ここはブルネンシュティグ自警軍本部の大広間。目の前の方はその
長だ。

「勿体ないお言葉、恐縮でございます、アルスェス=ウェッシュ様。」
レニィは跪き、頭を下げた。額には薄っすらと汗が滲み出ている。
「レニィ、腕を上げたな。バインダーの件から察するに、そのネク
ロマンサーの強さは他のものを凌駕するものだったはず。よくぞ追
い払ってくれた。」
「いえ、わたくしは戦いに敗れ、みすみす奴を取り逃がしてしまっ
ただけです。御恥ずかしい限りです。」
と、歯を食い縛り更に俯いた。
「・・・そうか、お前がそう思っているのなら、いずれ再戦の機会
を与えよう。とにかく今回は良くやった。もう下がってよいぞ。」
ハッ!!っと返事をするとレニィは部屋を出て行き、私たちも続い
た。

「はぁ~、緊張した。」とレニィ。
「すごい猫かぶり様ね、レニィ。感動ものの演技よ。」とフプレ。
「・・・猫かぶりってなぁ、軍規なんだ。こんな調子じゃぶっ飛ば
されちまうよ。」とちゃらけてみせる。
これを聞きフプレはふふっと小さく笑った。
「ちぇ。まあいいや。二人ともこのあと暇?なんなら釣りでも一緒
にどうかな?」
『釣り!?行く行く!!』
「よし、じゃあ決定だ!用意は全部僕がするから。南口で待ってて。」

「おい。俺は誘わないのか?」不意にタカさんが口を挟む。

「タカ、お前昔釣りは嫌いだって言ってたじゃないか。」
「む・・き、気分だ。気分。とにかく俺も行くぞ。」
レニィはニヤニヤとタカさんを見て「分かった」とだけ言い、去っ
ていった。



お待たせ!とレニィが走ってきた。軍の鎧を脱ぎ、私服に着替えた
彼は一層爽やかな好青年に見える。

南下して数分、ギルディル川が沼地に流れ込み、淀みの生成されて
いる場所を釣り場所に決めた。
早速釣り糸を垂らしてみる。・・・餌はパン。ウキは木を削ったオリ
ジナルのもの。竿は竹。さぁ、くるか?

 ・・・しかし誰のウキも反応しない。でも、こうして皆で糸を垂ら
しながらおしゃべりをしているだけで十分楽しい。

2

595 名前: FAT 投稿日: 2005/08/21(日) 14:43:02 [ MZGP9yjI ]
 ・・・釣りかぁ・・・

三人が笑い話で盛り上がっている中、私は一人ウキを見詰めながら
父のことを思い出していた。


――まだ私は5歳だった。記憶が曖昧なので母から聞いた話も交え
る形になるだろう。
私の父はゴランといい当時32歳だった。ある日、私たち家族四人
は家族で釣りに赤峰滝の滝壺に出かけた。
夏の暑い日で、滝の水しぶきが気持ち良かったと云う。
父は釣り上手で、ひょいひょいと魚を釣り上げていた。
「はははは、見ろ、フラン、フプレ。釣りは楽しいぞ!父ちゃんに
かかればどんな魚も一発さ!!」
父は得意げな顔をして楽しそうに、本当に楽しそうに笑っていたと
云う。
『とうちゃんすごい!!!』
と私たちは尊敬の眼差しで父を見ていた。

皆が目を離した瞬間、「きゃあっ!!」と短く悲鳴を上げ私は滝壺に
落ちてしまった。・・・足元を這っていたヘビに驚き、滑ってしまっ
たのだ。
私の体は落ちてくる水の流れに錐揉みにされ、方向感覚を失った。
もがいても、もがいても、体は回転するばかり。そんな私の足首を
大きな手がガッチリと掴んだ。そうしてそのまま逆さ吊りの格好で
無事、引き揚げられた。

 ・・・あの時の父はかっこよかった・・・

なぜ、父が出て行ってしまったのかは分からない。別に母と仲が悪
かったわけではない。ただ、どういった理由であれ、13年間も家
に帰らないと言うことは、やはり死んでしまっているのだろうか・・。

 ・・・会いたい、もう一度、父に会いたい・・・

そんな気持ちを内に秘め、私たちは村を出た。母には内緒だ。父の
話を嫌がるから・・・。

 ・・・そういえば、村を出てから五日が経った。母に手紙でも書こ
うかしら。


私が一人の世界に篭っている一方で、三人の笑い話は思わぬ展開を
迎えていた。

「ええっ!?レニィうそでしょ?あなたが王子?」驚いたフプレが
声を上げる。

え?なにそれ?私も聞きたいんだけど。

3

596 名前: FAT 投稿日: 2005/08/21(日) 14:43:35 [ MZGP9yjI ]
「うそって言えばうそだけど。国が残ってたらの話ね。」
「エリプト帝国か。もう何百年も前に消滅した国だな。お前は本当
にそんなことを信じているのか?」
「ああ、家に代々受け継がれている家系図に依ればそうゆうことに
なってるからね。本当だと思ってるよ。」

なるほど、レニィから感じた気品のようなものはそこからきている
のか。

「なるほどぉ、だから強い魔法が使えるのね!」
フプレも別の面でレニィの王子説を認めたようだ。

「そうそう、魔法と言えば・・・」と言いかけるとレニィのウキが
突然沈んだ。クイッと素早く合わせると竿先がグンと大きくしなっ
た。よしっ!と歓喜の声を上げ、一気に魚を水中から引き摺り出し
た。

「今日初めての魚ね、おめでとう。」フプレが嬉しそうに笑う。
「フプレ、これも魔法さ。」
そう言うとレニィはフプレに針を差し出した。
「え?あ・・。この針・・。光ってる??」
「そう、光物が好きな魚もたくさんいるからね。でも、それだけじ
ゃない。」
と言うと針先の光がうねうねとまるで生き物のように蠢いた。
「ひゃあ、びっくりしたぁ。」
「はは、驚いてくれたね。この魔法を使えばいくらでも魚なんて釣
れるさ。」と再び糸を垂らす。

「きたっ!!」二匹目の魚が陸に揚げられる。
ピチピチと跳ねる魚を針から外す。その行為を行ったのはレニィで
はなくフプレだった。
「うふふ。魚を釣るだけなら負けないわよ。」
得意気にそう言うと魚をバケツに放り込んだ。

ぽいっ、ぽいっと次々に魚を釣り上げるフプレ。一方、何の反応も
見せない自分のウキにレニィは焦りを覚えた。
「なぁ、フプレ、何か仕掛けがあるのかい?僕もねたバラシしたこ
とだし、教えてくれないかな?」
「あら、ネタなんてないわよ。実力の差じゃない?」と笑ってみせ
る。
「じらすなよ、僕の魔法でこんなに釣れないのは初めてなんだ。」
レニィは少しムキになってきた。
「分かったわ。実はね・・・操ってるの。」
「ん?そんなことができるのかい?さすがはテイマー!」
「ふふ・・・でも、もう終わり。あんまりやると可哀相だから。そ
れに、これだけいれば食べる分には困らないでしょう?」
とバケツを見る。中には10~30cmくらいの魚が溢れんばかり
にギッシリと詰まっている。

4

597 名前: FAT 投稿日: 2005/08/21(日) 14:44:10 [ MZGP9yjI ]
「そうだな、じゃあ家へ戻って食べようか。」

ということで、私たちはレニィの家にお邪魔することに。
門をくぐり、庭に出ると彼の母親と妹が準備をしていてくれた。
「あら、タカちゃんいらっしゃい。それにお友達ちゃんもいらっし
ゃい。」

タ、タカちゃん・・・・

そのイカツイ外見とのギャップに私は笑ってしまった。

「母さん、クレナ、用意サンキュ!」と言うと早速魚に串を通し、
火で焙る。クレナも兄の横で串を持ち同じポーズをとる。

 ・・・かわいい娘だなぁ。レニィに似て、整った顔にさらさらの金
髪。背はあまり高くないが全身すっきりとしていて、か細い。いや、
可憐な感じだ。

「どうかしました?」

自分でも気づかぬ内にじいっとクレナの顔を凝視してしまっていた。

「あ、あの、いや、クレナさんってもしかしたら私たちと同い年く
らいかなぁと思って・・・。」

なにを動揺しているんだ、私は。

「年ですか?今年で18になったばかりですよ。」
「ほんとに?じゃあ私たちと一緒だわ!お友達になりましょ
う!!」
「ええ、よろこんで。よろしくねっ!!」ニコッと笑い握手を求め
られた。私も笑顔で彼女の手を握った。

嬉しかった。私にとっての、初めての女友達。大切にしよう・・・。

「ちょっと、私も入れてよー!!」慌ててフプレが間に入ってきて
私たち二人分の手をまとめて握った。
火を囲み、私たち三人の話は盛り上がるに盛り上がり、別れるのが
惜しかった。

P.M.9:00
後片付けを済まし、帰宅の路につく。昨日は葬儀があり、気持ちが
沈んでいたので今日は本当に楽しかった。私を気遣ってくれたのか、
釣りに誘ってくれたレニィに感謝したい。

宿に戻ると、私たちは母に手紙を書いた・・・・。

このとき、この手紙を出したことが後に、私にはとても悔やまれる
結果となってしまった・・・・・。


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最終更新:2008年07月07日 23:27