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蒼眼の戦士-4


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698 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日: 2005/08/28(日) 11:55:08 [ P9WUFjJM ]


蒼眼の戦士-4


 そこはとても暗い場所だった、だがその場所は知っているような場所だった。そんな感じがするだけかもしれない、だけどこの空間を私は知っている。
懐かしいといっても過言ではないだろう。その暗い空間の中でひとつの扉が見える、小さく照らされたスポットライトのように一つぽつんとそこにおいてあるように。
「…。」
私はおもむろにその扉のドアノブに手をかけて回した、とても古そうな音を立ててその扉はゆっくりと開いていく。そしてまぶしいほどの光が飛び込んできた。最初はその光になれず視界を奪われたまま何も見えずに居た、視力が回復したのはそれから数秒の事だった。
 そこは見たことも無い焼け野原、その焼け野原の中に二人人が立っている。お互い武器を構え体中傷だらけになってそこに居た。
何か言葉を交わしているようだが私のところまでは届かない、気がつけば自分が中に浮いている事にようやく気付く。
「これは…。」
「私の過去だ。」
何処からともなく自分以外の声が聞こえた、その声の主を探そうとあたりを見渡そうとしたその時姿は見えた。聞き覚えのある声、持ち主はすぐに分った。
「私の名前はアデル、”アデル・R・ロードスタンヘッド”。主の体に寄生している者だ。」
「…声を聞いて分ったよ、どっちがあなたなのですか。」
アデルは私のすぐ隣まで近づき指を刺していった、私から見えて手前の両手にロングソードを構えている黒い帽子に黒い軍服を着ている髪の毛の長い男だと教えてくれた。
「とても古い話だ。」
男は急にしゃがみこむ、但し空中でだ。懐かしげにいま目の前で繰り広げられている死闘を見ながらアデルは帽子を取る、その帽子を目の前に両手で持ち、左目の位置に小さな切れ目を見ていた。
「今から8年前、砂漠都市アリアンという場所から8マイル先の小さな砂漠と貸した一つの町がある。そこであの石の噂が持ち上がっていた、私と今戦っている彼でその石の捜索をしていた時の映像だ。」

2

699 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日: 2005/08/28(日) 11:56:10 [ P9WUFjJM ]
「…何故戦っているのですか。」
「…。」
私の質問に少し無口になる、いや、何かを言いたそうにしているのだろう。だが言葉が見つからないといったところか。
「…人の欲望、憎悪、憎しみ…そう言ったものが渦巻いている。」
「…。」
そこまで言われて私は悟った、伝説上の石、その石を手に入れたものは力と富を得るといわれていた。その石を目の前にして所有権を争う戦いだと気がつくのにそう時間は掛からなかった。
「…彼は何者です。」
「…君たちが探している男、通称”ベルスタッド”だ。」
「…っな」
「君たちが見ていたのは彼の亡霊、いや…正確には式神といっても過言ではないだろう。姿こそ変えていたがね。」
目の前で繰り広げられている死闘は未だに続いていた、だがこの戦いもすぐに終わるだろうと予測できる。圧倒的な戦闘能力を見せるアデル、既に左腕を切り落とされているベルに勝ち目は無いだろうと誰もが想像できる。そしてその時はやってきた。
「私はあの時、確かに彼の心臓を貫いた。そしてその体を焼き払った。」
アデルの言うようにその光景は広がっている、ただの映像だと分っていても人が焼ける嫌なにおいが鼻に突く。嘔吐を引き起こす匂いだ。
「結局、あの石は見つからなかったがね。」
「…。」
「さぁ、次に行こうか。」
アデルはゆっくりと立ち上がると帽子を再び被る、するとその場に広がっている映像は次第にガウスが掛かったように霞、そして消えた。再び真っ暗な空間が姿を現すと又一つ小さな光に照らされたドアが現れた。
「…あれには、何が写っているんです。」
「それは君の目で確かめろ、私はお前に知恵を授けているだけだ。」
「…。」
私は再び現れたドアのドアノブに手をかけてドアを開ける。先ほどと同じように光が差し込んできたが、視力は奪われなかった。

3

700 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日: 2005/08/28(日) 11:56:37 [ P9WUFjJM ]
 目の前にひろがったのは私の小さな頃の姿、その隣に師匠が立っている。
「…今度は私か。」
「いや、違う。」
アデルは今度は帽子を取らなかった、そして冷たい目で一人の目標物を見つめている。
「お前らが師匠と呼んでいるあの女性、あれは本物のオリエンタルではない。このときオリエンタルは既に死亡している。」
「…死んだ?」
「そうだ、これは今から五年前、丁度ハノブで起きた地盤による大きな崖崩れが起きる直前だ。」
目の前にいる私は楽しそうに師匠と話をしている、その師匠の笑顔を見ているととても懐かしく思えて、そして悲しかった。今はもう二度と見ることの出来ないその笑顔、だが…。
「あの屈託ない笑顔も…師匠ではないと言うのですか。」
「そうではない、一つ一つ最初から話そう。」
アデルはゆっくりと地上に降りると一つの切り株に腰をかけた、私も続いて降りてゆく。
「オリエンタル・アラトール、正式にはオリエンタル・A・ブルンネンシュティグ。彼女は正当な古都の王女だ。王家は既に滅び去ったが、未だに王家の血筋を持つものはこの大陸に身を潜めている。そして彼女は王女であり、冒険者であり、ミルリスでもある。」
アデルはゆっくりと立ち上がると移動を始めた二人の後についていく、私もそれに同行する。しばらく歩きながら二人はずっと会話を続けている。このときの記憶はいまだ私の中で色濃く残っている。なぜならこれが最後に姿をかわした時だったからだ。
「正確にはあの体はミルリス本人、その体の中に精神寄生しているのが王女だ。精神寄生はとてつもない力を使う、だからこそ本来表にはその精神を具現化することを許さない技法だ、彼女はあの転落事故から奇跡的に生き延びた、そして同時に王女としての人格も未だに生き続けている。お前が見ているその屈託ない笑顔は王女のものであり、ミルリスのものでもある。」
二人はやがて会話を終了させ、別々の道へと去っていく。それと同時にあたりに沈黙が流れ、しばしの間無音が続いた。
「一つ尋ねたい。」
「なんだ。」
「この先、師匠の後を追えば師匠の行動を見られるのか?」
さわさわと木々が揺れる音が聞こえる、そのなか私とアデルは森の中でたっている。二つの分かれ道を見つめながら。
「行こうか…。」
アデルはゆっくりと師匠が歩いていった道へと足を進める、その足取りはどこか重かった。私も彼の後に続く。


 蒼眼の戦士-4
 END


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最終更新:2008年07月08日 02:43