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蒼眼の戦士-5


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744 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日: 2005/09/05(月) 18:58:40 [ GJ3T4MFA ]


蒼眼の戦士-5


 「行こうか…。」
アデルはゆっくりと師匠が歩いていった道へと足を進める、その足取りはどこか重かった。私も彼の後に続く。
向かう先は足取りから考えてハノブ方面であろう、おそらく鉄の道という地名の場所だ。そこには例の事件が起きた場所であり、最後に師匠の目撃情報があった場所だ。
 あたりはまだ明るい、太陽は西の空に傾き始めているもののあたり一面はまだ昼間のように明るかった。
 師匠は一度もその足を止める事はなかった、すたすたと歩いていくその後姿には何かを覚悟したかのような面影もある。
どのくらい歩いただろうか、それさえも途方にくれるほど歩いているはず。私たち二人は空を飛びそれなりの速度で移動しているのに、師匠にはまるで追いつくことが出来ない。
「…速い。」
「…王女は生まれ持っての魔法特性が強い人間だ、スマグのウィザードが束になって掛かってもその魔力には勝てん、察するところに風の力を借りた移動法術だろう。」
「…そのようですね、私のと比べてもレベルが違いすぎます。」
それから二時間、ようやく足を止めた師匠は一度だけあたりを見渡す。そして槍を背中から取り出すとその槍を地面に突き立てた。
「出てきてなさい、ベル。」
そう師匠が言うと森の奥深くから一人の男が姿を現した、その男は蒼い眼を持ち腰には大剣をつるしている。
「…いつから?」
「私が彼と別れたあたりから、そんな殺気を出していれば私じゃなくても気がつきます。」
「それは失礼、近くにアデルがいるのではないかと心配でして。」
そこに居たのは先ほどの映像に出てきたアデルと死闘を繰り広げていた男だった、アデルはなるほどと一つ頷いて状況を把握する。
「王女様、このような仮説があるのをご存知ですかな?」
「仮説?」
地面から槍を引き抜き戦闘態勢へと入る、体の周りに術素をばら撒きいくつ物式神が姿を現す。その中には火、風、水、土といった四台元素のほかに闇、光も混じっている。
「ガイア仮説…この惑星を一つの生命体と考える仮説、この星でわれわれ生物が存続できるための条件は生物自身が調節作用をし、全ての種の生物が協力することで一つの有機体として存在するためを意味するものです。」
ベルも腰につるしていた大剣を取り出し横に片手で構える、どれほどの力が今ベルに備わっているのかがそれで伺える。尋常ではないその力、あの大剣を片手で、しかも横に水平に構えている。
「アスベルト項目、第十三節”ガイア仮説”…。」
「そうです、この仮説が何を意味するかお分かりですね?」
師匠は一歩後ろに後ずさりし、そして式神を活性化させる。するとあたり一面に広まっていたエレメントは次第に槍へと吸収されていく。
「あなた達悪魔と手を結べというのですか…。」

2

745 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日: 2005/09/05(月) 18:59:04 [ GJ3T4MFA ]
「さよう、…あの石のありかは何処だ。」
ベルの顔が酷くゆがむ、そしてベルの体からは邪気が立ちこめ体全体を覆う。そしてその邪気は次第にベルが持っている大剣まで染み渡る。
「目覚めよ…」
邪気に満ちたその剣はおもむろに刃の部分が不透明と化す、その大剣は古の昔の戦乱の時に魔剣として使われた忌まわしきもの。
「ラルヴァによる魔剣召還…本気のようね。」
「えぇ、流石に大陸一といわれるお方だ。全力でやらなければ私が負けてしまう。それでも現状五分五分ですが…ね!」
ベルは瞬時にその姿を消した、そして現れたときは師匠の後ろだった。だが師匠もこの動きは見えていた。瞬時に式神を後方へと配置しベルの斬撃を受け流す、そして自らも身を回転させて槍を左手に持ち替えてベルを貫く、だがその槍もベルの大剣にはばかれ金属音と共に両者はお互い後方へと弾き飛ぶ。
 だが、ベルの攻撃は止む事はなかった。右いっぱいに手を水平に構え、そこから横に剣を振る。するとその剣からは真空の刃が放たれあたり一面を吹き飛ばす。そのなか師匠は槍を地面に叩きつけて足元の地面の一部をたたき起こす。
「やるじゃないか王女様。」
「ぐ…。」
ニヤっと一つ笑みをこぼすベル、するとすぐさま前方方向へと跳躍する。そのスピードは尋常な速度ではなかった。
「はっ!」
ブゥンと空気の切る音と摩擦熱で空気がこげる匂いが立ちこめる、振り下ろしたその垂直な軌道を取る大剣を師匠は避けた。そしてその大剣は地面へと突き刺さる。
「でやぁぁぁ!」
槍を持ち替えて体制と立て直すとすぐさまベルの懐へと踏み込んだ、そしてベルの心臓を一突きにする。
「あぐ…ぅぅぅ。」
「あの石のおかげで王家は落ちた…そんな石、今更お前達悪魔なんかに渡してたまるもんか!」
「そうか…ならば死ぬがいい!」
心臓を一突きにされてもベルはその強靭なる力で師匠の襟元を鷲づかみにする、するとブンと師匠の体を地面へと叩きつける。
「あが…。」
「堕ちろ!」
心臓を貫いていた槍を引き抜き、左手で逆手に持ち替えると師匠の体目掛けて放り投げた、その槍は師匠の腹部を貫き鮮血が飛び散る。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「…貴様の体に寄生して、石のありかを突き止めさせてもらう。」
槍を引き抜くとベルは地面に横たわっている師匠の体を起こすとなにやらぶつぶつとつぶやき始めた。
「…お前なんかに、この子の体は渡さない…渡すぐらいなら……!」
師匠はベルの体を蹴ってその手から離れる、すぐさま槍を拾ってそれを逆手に持ち替える。そして勢い良く柄の部分を地面へと叩きつけた。
「やぁぁぁぁぁぁ!」
ドガンと音を立てて槍が地面にぶつかった。するとそこを中心とした半径二キロ四方の地面が突然揺れ始める、地震だ。

3

746 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日: 2005/09/05(月) 18:59:33 [ GJ3T4MFA ]
「まさか…貴様!」
「さようなら…”ベルスタッド”」
師匠の足元に一つの地割れが起き、そこから先ががたんと割れた。そして師匠はその割れた地面のところに立っている。大きな地震が続き、そしてその地震のせいで崖となっている場所は崩れた。
それに巻き込まれるかのようにして師匠は姿を消し去った。
「…く。」
ベルはようやく地震が収まるのを確認して崖が崩れた場所へと足を運び下を除いた。そしてそこには無残な姿と貸した師匠の姿が一つ。
「…オリエンタルめ…。」
その慣れの姿をもう一度見て、ベルの体にまとわりついていた邪気は次第に消えて行き、そしてベルの体が薄くなり始めてきた。そしてものの数秒で姿を消した。



 「…。」
「…。」
二人は空中で沈黙したままだった。師匠の最後を見届けたような気分になる。
「…何を泣いている。」
その言葉にようやく気がついた、アレンの頬を伝わる一つの雫に。それは最初こそゆっくり流れていたものは次第に溢れかえり目頭を熱くさせる。
「…いや、なんでもないんだ。」
視界が遠ざかっていく、その光景は最初の映像を見たときと同じように次第に暗くなり。そして真っ暗な空間へと戻された。



 蒼眼の戦士-5
 END


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最終更新:2008年07月08日 22:06