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あるウィザードが残したもの-6


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811 名前: 252 ◆j9cST1xRh2 投稿日: 2005/09/11(日) 20:44:55 [ oZGNdmO. ]
あるウィザードが残したもの
  • >>252 ―プロローグ、表紙―
  • >>316 ―一頁目 誕生、そして襲撃―
  • >>317 ―二頁目 少年時代―
  • >>413-414 ―三頁目 蘇る悪夢―
  • >>456-458 ―四頁目 二つの出会い(前)―
  • >>714 ―五頁目 二つの出会い(中)―

―六頁目 二つの出会い(後)―

いつの間にか、私はそこに立っていた。左手にさっき自分が立っていた埠頭が見える。
この頃の呼び名が現代と同じならば、ここは港街ブリッジヘッド。
小さい街だが立派な貿易都市で主に漁業が盛んである。
また、そのころに発見された、川を挟んだ東側にある洞窟から採取される塩が健康に効果的との噂が立ったため、たくさんの冒険者が洞窟に入り込み、深部に住み着いていた悪魔達を目覚めさせてしまった。
その結果人間達は洞窟に入ること自体難しくなってしまったため、洞窟の塩はとても高価な値段で取引されることになった。
もっとも現在は悪魔と闘いながら塩を採取していく者がふえてきたため、発見当時の値段程度で相場が落ち着いてきているようだが。
そういえばこの街には商業が盛んなところに必ずある組織「シーフギルド」もあったはずだ。
もっとも「ギルド」なんていうのは表向きで、その表向きさえも酷いものだったようだ。
現在は消滅してしまったが、父が青年の頃の時代はシーフギルドの最盛期、ブリッジヘッドに強く根付いていたはずだが。
夕日が刻々と水平線に近づいていく。多分私の金色の髪は真っ赤に燃えているだろう。
十数年前、父におぶってもらい、海岸から夕日を眺めたことを思い出していた・・・・・。

すると突然、私の体は振り返った。私の意思ではなかった。
そこでは戦闘が始まっていた。さっきの光景を巻き戻して見ているようだ。
ここから離れたほうがいい。そう感じた私は、少し後退しようとした。
・・・・・?
体が思いどおりに動かない。瞬きさえ自分の意思でできない。どういうことだろう?
そのことに気を取られていたので、自分に危険が迫っていることを気づく余裕がなかった。
目線を少しずらすと二つの銀色の巨体がこっちに向かってくる。
銀色の鱗、巨大な鈍器・・・・・水の神獣と呼ばれるマーマンがどうしてブリッジヘッドに?
右にいたマーマンが手に持っている鈍器を私に向かって思い切り振り下ろしてきた。やはり体も動かない。声が出なかった。
しかし私の体は簡単にそれをかわし、背中に背負った覚えのない中型の弓を構えた。
もう一体のマーマンの攻撃も素早くかわした私は、同じく背負った覚えのない矢を放った。
すると矢が鮮やかな紅い炎を纏った。そしてそれが一体のマーマンの頭に命中する。
激しい爆発が起こった。マーマンの巨体は後ろに傾き、スローモーションのような感じで倒れていった。
私の体はさっと後ろに飛び退き、第二撃を振り下ろそうとするもう一体のマーマンにも矢を打ち込んだ。
マーマンの右腕に命中した矢は同じように爆発を起こした。支えを失った鈍器は私の目の前に落ちた。
至近距離での爆発に巻き込まれそうだったため、再び飛び退かなければならなかった。
すぐに体勢を立て直し、腕のないマーマンの顔面に向かって弓を向ける。
すると指先から目映い光が一瞬光り、それが矢の形となって放たれた。
止めを刺したことを確認した私の体はマーマンが持っていた鈍器の上に腰を下ろし、少しの間戦闘の光景を眺めていた。

2

811 名前: 812 名前: 252 ◆j9cST1xRh2 投稿日: 2005/09/11(日) 20:45:54 [ oZGNdmO. ]
今見てみれば、奇妙なコスチュームの人間達はシーフギルド員なのだろう。ある者は短剣を雨のように相手に浴びせかけ、ある者は分身を作り出して敵の攻撃を掻い潜り、ある者は地に大量の罠を設置し、ある者は己の体のみで華麗な攻撃を繰り返す。
しかし、どちらも物凄い数だ。戦闘というより乱闘と言ったほうがあてはまるだろう。
街は散々なほどに破壊され、商店街の商品は踏みちぎられ、地面のタイルは滅茶苦茶にひっくり返され、まともに通ることもできない。
そんな中、私の体が再び勝手に動き出した。全くわけが分からない。
私の体は戦闘の中に飛び込んでいく。嫌でも殺し合いをしている光景が目に入ってくる。
前方に一人のシーフが目に入った。たくさんの何かに襲われている。
大型の斧を持った人間型の悪魔だ。色や体つきから見ると、おそらくテンプラーと呼ばれているものだ。
シーフはその攻撃を素早くかわしているが、足がかなり重そうに見える。私の体は一直線に彼に向かって走っていった。
シーフの横に抜け出たテンプラーが斧を高々と振り上げた。その瞬間、私は声をあげていた。
「危ない!」と。しかし、それは私の声ではなかった。
シーフが私のほうを見た。彼と目があった。そして・・・・・

ドシャッ

鈍い音がして、彼の足に深々とした傷をつけた斧は、倒れこんだシーフに向かって再び攻撃を繰り出した。
数匹のテンプラーが動けない彼に向かって斧を切りつけた。
それを見た私は、自分でも驚くほど速く走っていた。まるで自分の足ではないかのように。
体の内から熱い怒りが込み上げてきた。弓をまっすぐ構え、矢を思い切り打ち出した。
矢は大量のテンプラーの輪に一直線の通り道をつけた。切りつけられるシーフが見えた!
落ちていた金属の棒を走りながら拾い、その一点に向かって走っていく。
手の空いているテンプラー達が切りかかってきたが、金属棒を振り回しながら次々となぎ払っていく。明らかに私の力ではない。
シーフに切りつけているテンプラーの頭に金属棒を思いっきり打ち下ろし、彼の横につく。
まだ戦意があるテンプラーを次々に殴り潰し、最後の一匹が動かなくなると、彼を抱きかかえて破壊された銀行の陰に運んだ。

酷い怪我だった。傷の一つは心臓を貫いている。私は黙って手当てをしていた。
シーフはまだ若かった。青い髪に高い鼻、なかなか鍛え上げられている肉体は痛々しく引き裂かれていた。
「うっ・・・・・く・・・・しょ・・」
「しゃべらないで、大丈夫だから。・・・・・・リベル・・・なぜこんな・・・・・」
「リ・・・・リフか?ぐっ・・・・・・」
「本当にしゃべらないで、このままでは危険なの。」
その一言でリベルと呼ばれた男は黙り込む。リフと呼ばれた私は首と腕の応急処置を負え、無残に破壊された鎧を体から静かにはずす。
「っ・・・・・・!」
酷かった。処置のしようがなかったのだ。何回も切りつけられたせいで、心臓をはじめ、ほとんどの臓器が滅茶苦茶にやられている。
「大丈夫だよ・・・・・・リフ、死は覚悟して・・・・・ぐっ」
リベルが大量の血を吐き出した。私は涙を流しながら必死に手当てする。
「リフ・・・・・・も・・・・無駄だ・・・よ・・・・。君の・・・・親父さんが・・・・・危な・・・い・・・・」
「でも・・・・・リベル・・・・・。」
「いい・・・俺は・・・・それよ・・り・・・・・研・・究所・・・・」
「そんな・・・・・そんな・・・・・」
「リフ・・・・好きだ・・・・・ずっと・・・・」
リベルの目から一筋の涙が落ちると共に、彼の命の花びらが落ちていった。
「うぅ・・・・・・ぐすっ・・・・・」
止まらない涙を押さえつけもせず、私は彼を弔ってから、彼の亡骸に持っていた布を優しくかぶせた。
私はすぐに立ち上がった。涙を拭き、一直線に住宅街へと走っていった。


全ての謎が解けた。
この体はリフと呼ばれた女性のものだということ。
私は彼女の体の中から世界を『見ている』だけの存在となっているということ。
あの扉は・・・・・記憶の扉。廊下には本の中の人間の記憶が収まっているということ。
それなら私は見ていることしかできない。でも、それだけでいい・・・・・。

3

813 名前: 252 ◆j9cST1xRh2 投稿日: 2005/09/11(日) 20:46:56 [ oZGNdmO. ]
私は戦闘の中を潜り抜け、いかにも研究所と言えるような家の前で止まり、ドアをぶち破って中に飛び込んだ。
階段を一気に飛び降り、ランプのついていない石の廊下を走り、父の研究室に飛び込んだ。
父は束縛された状態でそこにいた。そして、シーフギルド員と見られる人間が数人。
「おや、パドリック、君の娘さんかい?なかなか美人じゃないか・・・・・。」
父に面と向かっている幹部らしきシーフが、顔だけをこちらに向けて誰となく話しかけた。
「リフ!だめだ、逃げるんだ!」
「パドリック、今すぐ死にたくなければ黙っていろ。おい、その小娘を捕まえておけ。」
「ははっ。」
下っ端と見られる3人が詰め寄ってくる。しかし父が捕らえられている今、抵抗すると父の命が危ない。私はおとなしく捕まった。
「ははは、随分聞き分けのいい娘さんじゃないか。君も抵抗なんかしなければ怪我せずにすんだものを。」
見ると、父の額から一筋の血が流れ出ていた。父は苦々しく血の混じった唾を吐き出した。
「さて、話を戻すが・・・・・今回の神殿内の魔物どもがブリッジヘッドに攻めてきた件だよ。
.君は知らないと言っているが、知らないはずがないだろう?
.神殿についての歴史の研究のために出入りを許されているのは君だけなんだからね。
.・・・・・まぁ言いたくなければ言いたくなるまで待つよ。こっちにもいろいろ手があるしね。」
「・・・・さっきから知らないと言っているだろう。」
しかし、その声は少しだけ動揺を見せていた。幹部のシーフもそれに気づいたようだ。
「そうかい。なるほど、まだ話したくないわけだな。
.こっちも命を受けていてね。吐くまではどんなことをしても許す、とね。
.・・・・・よし、その娘をこっちへつれてこい。そのほうが効果的だろうし、なによりも面白みがある。」
「やめろ、何をする気だ・・・・・!」
「今なら間に合うぞ、パドリック。神殿でなにをしたかを言うだけでいいんだ。」
ここまでくればこれが物凄く大切なことだということは分かっていた。父の仕事の内容はよく知らなかったが、勢いだけでこう言い放った。
「お父さん、絶対教えちゃだめ。私なら大丈夫よ、こんな奴らに負けないで!」
「ぐっ・・・・・。」
「泣かせるねぇ・・・・・よし、決まりだ。こいつの左腕を出せ。しっかりつかんでおくんだ。」
「ノイク・・・・・まさかあれを・・・・・!?」
父の声には恐怖が露になっていた。ノイクと呼ばれた幹部は嫌らしい、意地の悪い笑いをニターッと浮かべた。
「そのとおりだ。さあ、しっかりと見ていろよパドリック!そうすれば全て吐きたくなるぜ!」
「やめろ!リフには・・・・・」
それ以上は聞き取れなかった。頭が真っ白になった。左腕が捥げてしまうかと思った。これなら死んだほうが楽かもしれない・・・・・。

4

814 名前: 252 ◆j9cST1xRh2 投稿日: 2005/09/11(日) 20:48:13 [ oZGNdmO. ]
「・・・・・・!!」
「・・・・・・・!?・・・・・・!」
誰かが・・・・・騒いでる・・・・・・。
・・・・・・・・。
「・・・・・リフ!・・・・んて奴だ・・・・・・ねえ!」
お父さんの声・・・・・・元気なんだ・・・・・・よかっ・・・・・・
「・・・・・まん。すまん。俺が馬鹿だったんだ。俺さえしっかりしていれば・・・・・!!」
腕の痛みが戻ってきた。いや、どんどん痛みが酷くなっていくように感じる。
「まて、パドリック!おい、足を狙うんだ。殺すな!娘のほうは殺してもいい。パドリックは生け捕りにするんだ!」
ノイクの声だ。生け捕りって・・・・動物じゃないんだから・・・・・。
私は目を開いた。父にしっかりとおぶられていた。父におぶってもらったのなんて何年ぶりだろうか・・・・・。
父は研究室のさらに奥の部屋に入り、中から鍵を掛けた。なんだか脆そうな扉だ。とても奴らの攻撃に耐えられそうにない。
暗くてほとんど何も見えないような部屋で、父はまるで全てを知っているかのように行動している。
「リフ、お前だけでも逃げてくれ。俺は捕まってもいい。すでにお前を巻き込んでしまったんだ・・・・・。」
父は私を椅子に座らせると、机の中から丸い水晶のような球体を取り出した。
「これにはどこかにワープする力が残っているはずなんだ。すまんが、どこに飛ばされるかは覚えていない。
.だが今より悪い状況にはならないはずだ。どこかの街だったはずだが・・・・・」
ミシミシッという音がして扉が砕け飛んだ。
「くそっ、こんなに早いとは・・・・・!」
下っ端のシーフが飛び込んできた。ノイクが「捕まえろ!」と叫ぶ。
父が私の手に水晶を持たせた。そして「精一杯生きろ。」と一言言って、水晶に向かって何かを呟いた。
その途端、私は水晶の中に引きずり込まれるような感覚を覚えた。世界中の全てが裏返しに見える・・・・・。

シーフの下っ端達がパドリックを再び拘束し、その様子を眺めていたノイクが嫌味ったらしく言葉を投げかけた。
「フン、娘だけを逃がしやがったか。まあいい。我々の目的はお前だからな、パドリック。本部でゆっくりと話してもらおうじゃないか。」
パドリックは何の反応も見せなかった。ただ息もせず・・・・・いや、息ができないように見えた――ただぼんやりと立っていた。
「・・・・・・なんだ?パドリック・・・・・・。」
ノイクの声に不快感が入り混じっていた。その瞬間、パドリックはどさっと崩れた。両手で額を押さえながら、微かに呟いた。
「・・・・・抑え・・・きれ・・・・な・・・・・ん・・・・・・?!」
ノイクの顔面が徐々に青くなっていった。そして、今度は悲鳴のような高い声で叫んだ。
「ま、まさか!?完全に消し去ったはずだ・・・・・!」
「うわあぁぁぁぁぁ!!」
その声に下っ端は恐れをなして逃げ出す。部屋には面と向かった二人だけが残った。


今回の事件で港街ブリッジヘッドは大変な被害を受けた。
シーフギルド員と神殿の魔物の戦闘で街はまるごと潰れてしまった。
しかしその後、新たな問題があがってきた。
街で神殿の調査を行っていたパドリック・ミラルダがなんらかの行動により神殿の魔物をブリッジヘッドに誘い出したという情報を元に、研究所に向かったシーフギルドの調査員達が恐怖しながらギルドに逃げ帰ってきたことで明らかになったことだ。
ただ一人、シーフギルド調査専門委員長のノイク・フリーダだけは帰らなかった。消息はまったく掴めず、死亡と推定された。
戻ってきたシーフギルド員の証言によると、追い詰められたパドリックは何らかの方法で怪物に変身し、自分達に襲い掛かろうとしたということらしい(そのときにノイクを置いて我先にと逃げていったことは言わなかった)。
ただ、全員が精神状態がとても不安定で、その証言も世間には戯言程度にしか聞かれていなかった。
ただし、パドリック・ミラルダが失踪したことがきちんと発表されたときに、その話が認められたのはいうまでもないだろう。
そして、そのときにはパドリックの娘のことは分からず終いだった。
シーフギルド員達はそのことは証言しなかったし、証言のあとにストレス性の病気を抱えてばたばたと死んでいったからだ。
結局パドリックの娘はパドリックとともに行方不明という結果で締めくくられた。

5

815 名前: 252 ◆j9cST1xRh2 投稿日: 2005/09/11(日) 20:49:04 [ oZGNdmO. ]
私は目を覚ました。ちゃんとした私自身の体だ。リフという女性の体ではなかった。体は完全に分離している。
私の倒れていたすぐ近くにリフとみられる女性が倒れている。
なるほど、こうして見るとかなりの美人だ。シルバーブロンドの長い髪、美しい真紅の目、優雅な体つきは見事なものだ。
更に驚いたことは、彼女は本当に簡単な服装で戦いの中に突っ込んでいったことである。
自分の目線で見ることができなかったさっきには気がつかなかった。彼女の力は相当なものであることが読み取れた。
しかしさっきまで自分の体のように痛んでいた左腕に目をやったとき、私は思わず飛び退いてしまった。そこには痛々しい・・・・・・
突然の物音にびくっとし、さっと立ち上がって音のしたほうを見た。
そこに彼が立っていた。メリック・エバンズ、私の義父。
ここは・・・・・・彼が倒れていた道。少し進んだあたりにあった大きな枯れ木が、多分今目の前にある木なのだろう。
彼は自分のポケットから何か薬らしきものを取り出し、一粒彼女の口の中に入れた。
水がなくても口の中で溶けてしまう薬なのだろうか、口の中に入って10秒も待たないうちに彼女は薄っすらと目を開いた。
「よかった、意識が戻った・・・・。大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫・・・・・ここはどこなの?」
「ここはブルンネンシュティグという都市です。聞き覚えがありませんか?」
「いいえ、何度か立ち寄ったことがあっ・・・・・」
そういいかけると、リフはいきなりがばっと起き上がった。
「ち、父はっ?この近くに誰もいませんか?!」
「えっ?・・・・ええ、誰もいないようですが。」
「・・・・・・そう。そうなの。なら・・・やっぱり父は・・・・・」
リフの紅い目に大粒の涙がたまっていった。さっき涙が枯れるほど泣いていたのに。
真っ赤に泣き腫らした目が悲しさと寂しさを増徴させていた。地平線に太陽が沈み、オレンジ色の空も紫色へと変わっていった。
「・・・・・あの、もしよければ僕にお話を聞かせてもらえませんか?何か力になれることがあるかもしれません。」
「優しい方ですね。リベルもとても優しかった・・・・・。」
「え?リベルとは・・・・」
リフがさらに俯いたのを見たメリックは、それ以上その話を進めようとするのは酷だと悟ったらしい。急いで話題を変えた。
「こんなところではなんだし、宿などに止まる予定がないなら私の家に泊まりませんか?」
「・・・・・ええ、そうさせてもらいます。あなたのお名前は?」
「あ、自己紹介がまだでしたね。僕はメリック・エバンズ。あなたは?」
「私はリフィーナ・ミラルダ。リフって呼ばれても結構です。」
「わかりました。おっと、そろそろ真っ暗になっちまう。それじゃ僕についてきてください。」

二人が歩いていった後、私は少しの間そこに座っていた。
彼女の紅い目。そして彼女の左腕に焼き付けられたもの。それらが何か大事なものを握っているような気がした。
空は紫色から群青色に姿を変えていく。秋を感じさせる涼しい風が吹きぬけ、紅葉した木の葉を攫っていく。
すでにこの世界に違和感はなかった。私はさっと立ち上がり、急いで二人の後を追いかけていった。


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最終更新:2008年07月08日 23:20