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サーヴェリー姉妹-17


1

870 名前: FAT 投稿日: 2005/09/17(土) 23:23:54 [ sA2y8tm. ]

いつも通りB2へと進む。だが、そこで待ち構えていたのはいつも
の蜘蛛たちではなく黒いローブに身を包み、古ぼけた木製の杖を持
った白髭の魔道士だった。あたしは人間だと思い声を掛けてみた。
しかし相手は魔物、返事を言葉でなく火の玉で返してきた。
「あちちち」
服を焦がし、腕に軽い火傷を負った。問答無用かっ!!ならばこち
らも!!と二発目の火炎をひらりと回転してかわすと、回転の勢い
を保ったまま肘打ちを喰らわす。間合いさえ詰められればこちらの
もの。杖をへし折り顔面に回し蹴りを決め、倒れたところにかかと
蹴りを見舞う。
普通の相手ならばこれで死ぬか、少なくとも気絶くらいはしてくれ
るのだが、この魔道士は違った。そもそも最初に肘打ちを決めたと
き、その体の硬さに違和感を感じた。それはまるで石を殴ったよう
な感触だった。あたしは恐れ、一旦後ろに飛び退ける。
敵が怒りに満ちた顔をあたしに向け、折れた杖を振りかざし何か唱
えると、その杖の上に火の玉が三つ生み出された。

 ・・・避けきれるかな・・・

身体能力に自信があるあたしでも、同時に飛んでくる三つの火の玉
を全て完璧に避けるのは難しいだろう。でも、やるしかない。この
程度のことも出来なかったらあのテイマーに勝てるわけがない。

杖が振り下ろされ、火の玉が一斉にあたし目掛けて飛んで来る。あ
たしは両手に気を集中させながら、側転で二つの火の玉を避ける。
残った一つの火の玉はあたしの体のど真ん中に当たるコースにあっ
たが、気を込めた拳でなぎ払うとその場で消滅した。

やった!魔法に対抗できる力が目覚めたんだ!!

拳に意識を集中させたまま、魔道士に正拳突きを放つ。すると先程
の石のような感触ではなく、ボキボキッと骨の砕ける嫌な感触が拳
に伝わる。胸骨を砕かれた魔道士は口から鮮血を吹き出し、その場
に崩れ去った。

「ふぅ。」安堵のため息を一つつき、あたしは自分の手を覆っている
オーラのようなものを凝視する。
 ・・・これが、あたしの“気”。魔法にも打ち勝てる、特別な力。
師匠に教えてもらった“気”の心得。それは己の信念により己の限
界を超えて使うことの出来る未知の力。個人の信念によりその力は
姿を変えるという。あたしは今、その力を手にするきっかけを掴ん
だ。誤った使い方はしない。感動にわななく手を胸に押し当て、自
己の中で決意を固める。

あいつを・・・あいつを殺すための能力にしてみせる!!!

2

871 名前: FAT 投稿日: 2005/09/17(土) 23:24:46 [ sA2y8tm. ]
先程の魔道士を倒してからは一匹も魔物に出くわさず、楽々B3に
つながっているはしごまで辿り着けた。普段ならばB2には嫌とい
うほど蜘蛛が群がっているのだが・・・。あの魔道士にしてもそう
だがこの鉄鉱山で何か異変が起こっているのだろうか?
辺りを警戒しつつはしごを降りる。

B3

初めて来たがB1、B2と作りは何ら変わらない。だが・・・いる。
何か、じぃっとあたしを監視するものが。どこから見られているの
かは分からない。隠れるのが上手な奴だ。緊張から来る冷や汗を額
に浮かべながらにじるようにして少しずつ奥へと進む。

 ・・・もう限界だ・・・

出所の分からない視線に神経を削られ、あたしは極度の疲労のため
足を止めた。来るなら来い。半ば投げやりになり、目を閉じて精神
統一を始める。目を閉じるなど自殺行為のように思われるが、あた
しにとってはこれこそが正当な戦闘の準備であり、自分の力を10
0%以上引き出せる方法の一つだ。目では捉えられぬものを心の目
で捉える、“心眼”と呼ばれるものだ。
少し前まで通っていた道場の師匠の心眼は凄まじく、あたしは稽古
の際にかすり傷一つ負わせることも敵わなかった。
あたしは今まで、心眼でものが見えたことはなく、目を閉じること
によって精神を高める効果を得るだけであった。しかし今は“気”
を会得した。何か変われると信じ、目を閉じ待ち続けた・・・・。

闇。その中にぼんやりと、霞がかったように魔物の姿が浮かび上が
ってきた。目を閉じているのに見える。魔道士と蜘蛛のセットか、
体から強力な魔力が漏れ出しているのが見て取れる。あたしは、遂
に心眼までも会得できたのか・・・・。

少しだけ悦に入っていると、突然火の玉が飛んできた。だが、心眼
を通して見るそれはお世辞にも速球とは言えない、お粗末なスピー
ドで向かってきた。舐められているのか?
両の手に気を集め、蜘蛛目掛けて火を高速で打ち返す。すると蜘蛛
は火を受けたあと、ゆっくりと横っ飛びし、高速の火の玉をわざと
受けたようにも見えた。いや、わざとと言うのはおかしい。何故な
ら蜘蛛は、火に悶え、苦しんでいるのだから。それにしても何だ?
何故苦しんでいる蜘蛛がゆっくりと見えるんだ?魔道士にしてもそ
うだ。何故そんなにゆっくりと杖を振るう?ほれ、魔法を繰り出す
前に簡単に腕を折れるぞ。・・・なんだ、これは?

あたしは、心眼を開いたことによって全身の感覚器が敏感になり、
自身が素早くなったことに気が付かなかった。敵が鈍くなったので
はない。スローで見えるのは心眼の副産物で、あたしのスピードに
合わせた世界の速さで見えているのだろう。

このときはマジックに気付かなかったものの、自分が強くなったこ
とが愉快でたまらなかった。魔法の壁を打ち砕き、敵を粉砕する拳
が、蹴りが、爽快だった。

目を開くと二匹の魔物の朽ちた姿が目に入った。魔道士は片腕を失
い首から上は皮一枚のところでやっとつながっている。蜘蛛に至っ
てはプックリと膨らんでいた腹を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまっ
た。派手にやってしまったと反省し、返り血を確認する。
 ・・・おや?これだけ破壊したのだから血まみれになっていてもお
かしくないはずだが何故か一滴の血も付いていない。見れば魔物の
体からは一滴の血も流れていないではないか。
異例の事態に体を強張らせる。目を閉じ、何が起こっているのか把
握しようと気を落ち着かせる。

 ・・・血の通っていない生き物はいない。いるとすればそれは・・・

突如頭の上に炎を携えた黒い手が現れたかと思うと、その赤い焔が
あたしに向けて放たれた。心眼を通してもその速度は驚異的で、避
けることを諦めて気を込めた手で炎を遮る。魔道士の小さな火の玉
とは威力が桁違いで、受け止めた手の平は熱で瞬時に膨れ上がり、
大きな水膨れがいくつも出来た。

何なんだ、こいつは・・・。

痛む両手をかばうように体の後ろに隠しながら、上空の魔物を睨み
付けた。


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最終更新:2008年07月09日 00:35