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サーヴェリー姉妹-18


1

881 名前: FAT 投稿日: 2005/09/19(月) 19:07:30 [ sA2y8tm. ]

黒いマントを羽織り、足がない代わりに宙にふわふわと浮かんでい
る。腕から胸にかけて真黒い甲冑を囲い、背中には紫色の帆のよう
なものが甲冑から伸びた骨に引っ掛けられていて、羽の形を成して
いる。体の大きさはおおよそ人間の三倍はあるだろう。この巨大な
悪魔は青い顔にぎらつく赤い目であたしを見下し、何故か満足気な
笑みを浮かべている。

「何者だ!!あたしに用があるのか?」
手が使い物にならないので、出来れば戦闘は避けたい。言葉が通じ
る相手かは分からないが、物は試しだ。
「ないのか?ならば帰らせてもらうぞ!!」
言葉も発しないが、手も出してこない。何を考えている?

―力が欲しくはないか?―

「何?お前が今言ったのか?」

―力が欲しくはないか?―

「答えろ、お前なのか?」

―そうだ。力が欲しいだろう?わたしに身を委ねるのだ―

「ふん、胡散臭い。それに力なら十分にある。」

―その程度でか?無理だな、返り討ちにあうぞ―

「!! なんだ?何を知ってるって言うんだ!!気持ち悪いんだ
よ!!!」

―仕方がない、荒々しいが許せよ―

気持ちをかき乱されて焦りが出てしまったがこれが相手の狙いなの
だと悟り再び目を瞑り、心眼で敵の姿を追う。空中戦か・・・。た
だでさえ手が使えず不利なのに宙に浮いている敵を叩くのは難しい。
と思っていたが親切にも超低空飛行で突っ込んできてくれた。気を
両足に集中、鋭い爪が飛んできたその瞬間、地を蹴り体を浮かせ、
飛び込んでくる蒼白の顔面に回し蹴りを叩き込む。
 ・・・逃がすまい・・・
素早く足を首に回し、一気に締め上げる。敵は苦しみのあまり天井
すれすれまで急上昇した。

よし、いける。

確信に近いものを感じた矢先、巨大な手があたしの腰をがっしりと
掴んだかと思うと世界が反転し、あたしから見て天に向かって物凄
いスピードで加速していった。

まずい!!!

次の瞬間、激しい衝撃と共に地面はえぐれ、そこにあたしの血の池
が出来た。もはや体の感覚はなく、ぎりぎりのところで意識だけが
残った。


―思い知ったか?己の弱さを、愚かさを―

意識が遠のいていく・・・。なんとかしなきゃ・・・。だめだっ!!
まだ、こんなところで・・・。死ねない。死んじゃだめだ。なんと
しても、生き延びなきゃ!!!

「お・・がい・・。ち・・ちか・・らを・・・」

―いいだろう―

声にならない声を聴きとり、奴が手を捧げると、あたしの体に感覚
が戻り始めた。
「ありがとう・・・」
ぼんやりとした意識の中、それだけ言い残すとあたしは真紅の血の
池の中に顔を沈め、深く眠りに就いた。

2

882 名前: FAT 投稿日: 2005/09/19(月) 19:09:14 [ sA2y8tm. ]
「おい!ばけもんだ!!全員殺られた!!!」
突如血相を変えて、大剣をかついだ隻眼の戦士が地上に現れた。

全員殺られただと?ばかな、テリーが中にいたんだぞ!あのテリー
が・・・。おい!お前の早とちりだろう?彼女が死ぬものか!!

全員の視線が集まっている中、暗い入り口にゆっくりと3匹の魔物
が姿を現した・・・・・

あの化け物共がテリーを!?許さん!!叩き潰してやる!!

「・・・フプレ?フプレなのっ?ねぇっ!フプレにメラーじゃない
の!!無事だったの・・・・。」

なんだ?このサマナー、何をほざいてるんだ?

「フ・・・・フラ・・ン?」
「そうよっ!!フランよ、フプレっ!!!」
「あ・・あぁ・・・。フランっ!!フラァァァン!!!」

何をしている?そいつはテリーを殺した張本人だぞ。なんだこの、
感動の再開ムードは?やめろ!やめてくれ!!あたしは許さない、
このふざけた姉妹を。道を開けてくれ、そいつを殺してやる。

「おい、お前のせいでテリーは・・・」
「邪魔をするな。」

うぐはぁ!!

あたしはどこだ・・・?

あ・・・。

あの、岩の陰でうずくまってるのがあたし?

なんて、か弱い。なんて、情けない。なんて、虚しい・・・

見ろ、誰もあたしのことなんて気にしてやない。皆、感動の再会な
んていう茶番に見入ってるか、賃金が支払われるか否かで不安にな
っているか、自分が先頭に選ばれなかったことに幸福を感じている
か。
 ・・・誰も、テリーのことなんか気にしてないんだ。彼女の呼びか
けで集まったんだろう?なんでその彼女そっちのけでいられるんだ
よ!!なんでその姉妹なんだよ!!殺人者だぞ、人を何人も殺して
るんだぞ!!なんでそんなやつらに涙を流してやれるんだ!!テリ
ーには涙を流してやれないのか?なぁ、おい!誰か聴けよ!!聴い
てくれよ!!なぁ、ねぇ、誰か・・・だれか・・・・。

ゆるさない、あたしとテリーをばかにしたあの姉妹を。特にあたし
を突き飛ばしたテイマーの方。必ず見つけ出す。絶対に殺してや
る・・・!!!



 ・・・長くて鮮明な夢を見た。あの日の・・・テリーの命日の夢。
ううん、これは夢じゃなく、あたしの記憶だ。忘れられない屈辱と
自分の無力さに腹が立つ。軽くフプレという女に突き飛ばされ、意
識を失ってしまったという失態。武道家として、あれほどの恥はそ
うそうないだろう。いや、何よりも、テリーを殺しておきながら、
何事もなかったかのように姉との再会を喜ぶあの顔・・・。あれが
あたしの神経を余計に逆撫でする。あの顔に、あたしの怒りは抑え
ることができずに行動に出てしまった。・・・全く歯が立たなかった
が。

そういえば、ここはどこだろう?見慣れない部屋に見慣れないベッ
ドだが・・・。

―お目覚めか―

「お前か・・・助けてくれたこと、感謝する。」

―ふ、わたしがつけた傷だ。礼を言われる筋はない―

「・・・あたしに力をくれるっていうのは?」

―焦るな、わたしが与えてしまった傷は深い。自然に首の骨くっつ
くまで待て―

「な、首の骨が折れてたら死んでるだろう!?」

―わたしはネクロマンサーだ。ある程度の治癒、蘇生能力は持って
いる。とりあえずあと数ヶ月は安静にして奴への恨みを募らせるの
だな―

「・・・何故、お前はそのことを知っている?」

―奴は非常に興味深いサンプルだ。あるときから奴を追っている。
その過程でお前を知った。お前も非常に興味深い―

「あたしもサンプルというわけか・・・まぁ、いいだろう。あいつ
を倒せるほどの力が手に入るのならば!!!」

―約束しよう。では、また期を見計らって会いに来るとしよう―


 ・・・去ったか。
ネクロマンサー・・・まさか悪魔に頼ることになるとは。
だが、今のあたしの状態を見て分かる通り、力不足は否めない。あ
と数ヶ月の辛抱だ。それまで、心眼でも磨いておくか・・・。
ベッドで横になりながら、目を瞑り神経を研ぎ澄ます。部屋に忍び
込んでいる小さな虫を見つけてはその後を追い、行動の特徴、顔つ
き、体の作りを観察し続ける。
そんな修行を延々と三ヶ月も続け、いよいよ心眼はあたしの理想の
形に近づいていた・・・・。


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最終更新:2008年07月09日 00:38