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第一話「家出娘は冒険者?」-2


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933 名前: サマナの人 投稿日: 2005/09/24(土) 11:54:54 [ 7vJqk16A ]

 公布――悪質な行為により、以下の二名の古都への出入りを10日間停止いたします。
  * フィーナ=ラフィーナ/サマナー
  * ミーア=ウェズリー/メイド(自称)

 翌日。ブルンネンシュティグ近郊、宿場町カトレア
 クエスト失敗な上、古都への出入りも禁止された二人は、小さな宿場町にやってきていた。

「というか、絶対YESじゃないわよね。ただの不可抗力じゃない!
なんで古都でメテオ撃ったり火雨降らせたり、スマグ産の移動速度ものやビスルの力笛を高値で売ってる連中がお咎めなしで、私たちが出入り禁止喰らうわけ!?
むしろ向こうの方取り締まりなさいってのよ」
「まあまあお嬢様、落ち着いて……」

 町で一つきりの酒場兼食堂兼宿屋でフォークを振り回し、怒りをあらわにする主人を何とか宥めようとするミーア。

 ブルンネンシュティグの冒険者ギルドの元締め、ダエモンは、そのあまりに適当な仕事ぶりで有名である。
 これはもう、運が悪かったとしか言いようがない。

「とは言え、困りましたねぇ。今回のクエストは失敗扱いで報酬入りませんでしたし」
「アウグスタやハノブは遠いし……大きな街以外じゃろくな仕事ないし……」

 正直、二人の懐事情はそれほど温かいものではない。

「先日お嬢様が無限矢詐欺にあって、所持金のほとんど無くしちゃいましたからね」

 ガッ、という景気のいい音とともに、フィーナが頭をテーブルに打ち付ける。

「やめてー。無限矢の話はやめてー。だって20万って破格だったんだものー」
「おいしい話には裏がある。ふふ、高い授業料でしたね」

 よしよし、と主人の頭を撫でながら慰め、ついでに自分の皿からラムチョップを一本、フィーナの皿に移してやる。

「ほらほら、わたくしのお肉を差し上げますから、元気出してください」

 その言葉にむくっと起き上がり、もらったラムチョップにヤケとばかりに喰らいつく。

「ふぁあ、ほにはふひほほひはいほほうひほはははいふぁおふぇ(まあ、とにかく仕事をしないとどうにもならないわよね)」
「そうですねぇ。なにかいいクエストでもあれば良いのですが」

 わずかに土と苔の匂いの混じる水を一気に飲み干し、フィーナはふう、と一息つくと店主の方に振り向く。

「ってなわけでおじさん。何か困ってることない? 腕利きの冒険者二人、今なら安くしておくわよ」

 グラスを磨いていた店主はちらりとフィーナに視線をやり、

「家出娘が生意気なこと言ってないで、とっとと親御さんのところに帰りな」
「っ!? なぁにそれ! 私はこれでも、ブルンネンシュティグギルドの正式承認を受けた冒険者よ!!」
「嘘つけ。どこの世界にメイド連れの冒険者がいるってんだ」
「古都ブルンネンシュティグから街道沿いに東へ5マイルほどいったところにある宿場町カトレアのちんけな酒場兼宿屋の入り口から6ヤードのテーブル」

 即答する。

「け、口ばっかり達者な餓鬼が。
……ま、ここはわりと平和な村だからな。せいぜい街道沿いにモンスターが時々出るくらいだ。
たいした仕事なんてありゃしないよ」

 会話はそこで途切れ、後は二人でもふもふと塩茹でのジャガイモをほおばる。

「とりあえず、村を回って仕事を探してみます。ご馳走様でした」

 なけなしのゴールドを支払い、ミーアが優雅に一礼する。
 フィーナの方はそっぽを向いていたが。

2

934 名前: サマナの人 投稿日: 2005/09/24(土) 12:24:21 [ 7vJqk16A ]
「悪霊退治?」
「はい……」

 依頼主、カトレアのコムスンと名乗る男はそう言って話し始めた。
 曰く、カトレアから北西、街道を外れた森の中に、小さな墳墓があるという。
 先日狩りのためにそこを通りがかったら、ゾンビやゴーストに襲われ、命からがら逃げ帰ってきたそうだ。

「あ、しばらく前に古都で話題になったバインダーの事件みたいなやつね」
「はい……あのままではいつ村人や街道の人間に危害が加わるかわかりませんので……」
「ですが、それならわたくしたちより、浄化魔法の使えるビショップの方に頼んだ方がよろしいのでは?」

 確かに、ミーアの指摘ももっともだ。
 フィーナの召還術も、ミーアの体術もかなりのものだが、しぶといアンデットの類を相手にするにはあまり向かない。
 対してビショップには、アンデットをまとめて浄化する術がある。
 ミーアの指摘にフィーナは頷き、

「なるほど。剣を鍛えるなら鍛冶屋に任せろってやつ?
んー、でもミーア。これ逃したら、謹慎解けるまで依頼ないかもよ」
「それもそうですね……ちょっと大変そうですけど、受けちゃいましょうか」

 そう言うと、男はほっとしたように、

「いやぁ、それはありがたい。では、報酬の方は――」

 男の提示した金額は決して高いものではなかったが、この大きさの町では妥当な線だ。

「うし、じゃあ早速行ってみよーうっ」
「え、すぐに行くんですか、お嬢様!?」
「んー、ポーションの類は手持ちはそれなりにあるし、この大きさの町だと買い足しもできないでしょ?
それに、あまり時間をかけるとお墓から溢れ出した瘴気がまた他のモンスターを呼んで、最悪手がつけられなくなるかもしれないしね」

 ここからさらに東に行ったところのオート監獄やアルパス監獄がいい例だ。
 瘴気がさらに瘴気を呼び、今では巨大な骸骨や巨人すら現れるという。

「ぴくっこは取りたてを食えって言うしね。どうせ待ったところで出来る事もほとんどないし、出かけよう?」

 ミーアはしばし眉根を寄せて考えていたが、やがて頷き、

「そうですね。それでは行くとしましょう。案内は――」
「あ、さすがに怖いので、私はちょっと……。場所はわかりやすいところですし、獣道ですが道もありますから」
「それなら平気かな? じゃあ、ちゃちゃっと行って片付けてくるから、報酬の方はよろしく~っ」

 コムスンに町の入り口まで送られ、二人は墳墓を目指し歩き始めるのだった。

3

951 名前: サマナの人 投稿日: 2005/09/26(月) 00:26:16 [ b6Gnz/6I ]

 その墳墓は、どちらかというと洞窟に近かった。
 盛り上げられた土が、数ヤードの高さの小さな丘のようになっていて、そこにぽっかりと開いた穴。
 薄暗いその内部には、どうやら下へ降りる階段が造られているようだが、あまりよく見えない。

 そして、入り口には柱が立てられ、魔物除けだろうか、何らかの紋章があったようだが何者かによって砕かれていた。

「爪跡っぽい……昨日の熊かな?」

 砕けて散らばっている欠片を調べながら、フィーナが言う。

「その可能性もありますが……熊がわざわざこんなもの壊しますかね?」
「うーん、爪を研ぎたかったとか――あれ?」
「どうしました、お嬢様?」
「ね、ミーア。これ見て」

 フィーナが示したのは、砕けた欠片を組みなおしたもの。
 いくらかは原型をとどめないほど砕けているが、何とか残っていた部分を並べて元の形が類推できるようにしてある。

「これが――何か?」

 ミーアの目には、ただの紋章にしか見えない。

「これ、おかしいのよ。普通のお墓なら、こっちの――」

 言って手に持っていた笛――は汚れるので、適当な棒を拾って、地面に図形を描く。
 描かれたのは、ミーアも知っている、墓などによく描かれている紋章だ。 

「これが刻まれているはずなのよ。死者の魂の安寧と、悪しき者の干渉を防ぐ守りの印。
どちらかといえば、中のものを外から守るためのものなの」
「なるほど……」
「でもここのは違う。この印は外ではなく内側に向けて描かれるもの。内部の害悪が外に撒き散らされないための封印の紋章。
少なくとも、普通のお墓じゃないって事だろうけど……」

 と、紋章の欠片を見ていたミーアの目が鋭く細められる。

「封印強度はそこまで高くないし、印の形もそれほど古くない……せいぜいブルン王国時代かな?
となると、伝説級のモンスターが封印されてるわけじゃないと思うけど、このあたりにその辺の年代の遺跡の伝説って何かあったかなぁ……」

 ぶつぶつと呟くフィーナを横目で見たミーアはしばらく思案した後、申し訳なさそうな声と表情を作って声をかけた。

「あの、お嬢様……」
「呪いを受けたミズナ……旧レッドアイ……っと、あ。ごめんミーア。何?」

 尋ねられ、ミーアは申し訳なさそうに、しかし普段の彼女では見られないようなもじもじした様子で、

「その……ちょっと体調が優れないので、わたくしは町に戻ってよろしいでしょうか」
「え、どうしたの? 風邪? 頭痛? 虫歯? 労咳? 梅毒? 大丈夫、ミーア?」

 あわてるフィーナの耳に、顔を真っ赤にしたミーアが顔を寄せ、そっと耳打ちする。
 聞いた瞬間、フィーナの顔も真っ赤になる。

「あ、あはは……そうだよね。ミーアも女の子だもんね」
「すみません、メイドなのに……」
「ううん、そう言うことなら仕方ないよ。私にはこの子達もいるしね」

 言ってケルビーとウィンディを召喚する。

「大丈夫? 町まで送っていこうか?」
「いえ、それくらい一人で戻れます」

 フィーナの申し出をやんわりと断る。

「それじゃ、行ってくるけど……」
「はい。それでは、気をつけてくださいませ、お嬢様」
「うん。ミーアもお大事にね。ケルビー、ウィンディ……Act2、行くよっ」

 フィーナの放った魔力が二匹に纏わりつき、その姿がより強く、より強靭なものへと変化する。
 ケルビーには黒光りする装甲が追加され、ウィンディは不明瞭な風の塊から実体を持った鳥へと。
 二匹を従え、フィーナの姿が墳墓へと消える。

 そしてミーアは墳墓に背を向け、町の方向をにらんで一人呟く。

「さて、恥ずかしい言い訳で誤魔化したところで、準備を始めましょうか――」


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最終更新:2008年07月21日 23:13