サーヴェリー姉妹-20
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935 名前: FAT 投稿日: 2005/09/24(土) 12:53:30 [ sA2y8tm. ]
カーテンを開け、眩い程の朝日を浴び、窓から身を乗り出して景色
を眺める。うむ、素晴しい雪畑だ。
ここハノブでは一週間ほど季節はずれの雪が断続的に降っており、
こうして朝日を拝めるのは実に久しぶりだ。
そんな朝日に照らし出された雪たちはめいいっぱいに光を太陽に返
し、照らし合いをしているようだ。
ふっと顔が綻び新鮮な空気を思いっきり吸い込む。気分良く部屋の
中を振り返ると、奴が居た。
瞬間、綻んでいた顔がキツク締めなおされたようにこわばった。
―久しぶりだな。傷はもう良いようだなマリスよ―
「ええ、おかげ様ですっかりね。・・・力を、くれるの?」
こわばった顔を適度に緩め、実直にネクロの目を見る。
―ああ、ではすぐ行こうか―
「どこへ?」
―お前に力を与えるために必要なものがある場所だ。準備しろ、連
れて行ってやる―
・・・力を与えるために必要なもの?意味が良く分からないが、と
りあえずこいつはあたしの着替えを見るつもりか?そうやってじっ
と見られてると着替えられないんですけど・・・。
「ちょっと出ててもらってもいい?」
思い切って言ってみた。
・・・無視かよ!!
「着替えるから、出て行ってもらえる?」
主旨を明らかにし、再度挑戦。
―時間の無駄だ。気にせず用意しろ―
・・・ちっ!変態が!!
抵抗を諦め寝巻きのズボンに手を掛け一気に下ろす。背中を向いて
いるのはささやかな抵抗。コボちゃん柄の下着が一瞬露わになり、
素早く武道着を手に取り足を通す。
よし、次は上着だ。
片手ずつ袖から抜くと、一呼吸置いて豪快に頭を引っこ抜く。この
とき勢いあまって胸のパットがずれてしまったが直している時間は
ない、武道着に袖を通した後、さり気無く定位置に戻した。
・・・パットとブラのサイズが合っていなかった。もっと大きなパ
ットを入れておけばよかった・・・
後悔しつつネクロの方を向いてみると、奴は部屋の隅にあった昆虫
の死体を操り、遊んでいた。
・・・なめやがって!!!
着替えにどれだけ神経を使っただろう。少し焦ったりもしてしまっ
たじゃないか。それなのに、関心なしですか?そりゃ見られたいな
んてわけはないけど一人で勘違いしてあたしは馬鹿ですか?
・・・なんて、恥ずかしい・・・
耳の先まで真っ赤にしながら、相手が人でなくてよかったと、心か
ら思った。
ネクロの両手に包まれ、あたしは今空を飛んでいる。地上を見下ろ
すというのは、こんなにも気持ちのいいものなのか。雪原の中、歩
く人がまるでナメクジのようにゆっくりと動いているように見えた。
・・・かなり上空高くを飛行しているようだ。照りつける太陽が皮
膚に突き刺さる。ひりひりと痛む腕や顔と対象的に、体はどんどん
冷えてきた。仕舞いには体を縮ませ、なんとか持ちこたえようとし
たが、だめそうだ。
あぁ、今となっては引き締まった筋肉質な自分の体が疎ましい。も
っと肉付きがよかったらこんなところでは・・・
頭がぼ~っとして何も考えられなくなった。徐々に視界が瞼で埋ま
っていくのが分かったが、どうすることも出来ない。そうして極寒
の空の上であたしの脳は活動を停止した。
2
936 名前: FAT 投稿日: 2005/09/24(土) 12:54:07 [ sA2y8tm. ]
―おい、いつまで寝ているつもりだ、起きろ―
―着いたぞ、目を覚ませ―
・・・ん?
目が覚めた。てっきり死んでしまったかと思ったが・・・。眠って
いただけか。
まだ冷えたままの肩を摩り、辺りを見渡す。墓場か。
・・・なんとなく見覚えが・・・
―喜べ、今から復活させてやる―
は?なんだと?何を復活させるんだ?あたしが喜ぶもの・・・?
―おや、解せないかな?ここがどこか気付いてないのか?―
ネクロが指差す先を見ると、墓石に刻まれた文字があたしの記憶を
呼び戻す。
「おい、本当にそんなことが出来るのか?」
期待と不安の入り混じった眼を向ける。会えるのか・・?もう一度。
会いたい、会いたいけどそれは本当に彼女なのか?もし、無口なた
だの操り人形だったら・・・。
次第にあたしの中で不安の部分が膨らんでいき、恐ろしくて体が小
刻みに震える。
そんなあたしをよそに、ネクロは墓の上で何やら呪文のようなもの
を唱えると、手を地中に突っ込んだ。そのままの格好で更に詠唱を
続ける。すると、にわかに辺りが暗くなり、唯一ネクロの腕だけが
妖しい紫がかった光を発している。その光に導かれ、地中から人骨
がゆっくりと浮上してくる。あたしは息を呑み、次の展開を待つ。
光を纏った骨は磁石が引き合うようにそれぞれのあるべきところに
納まり、人を形作る。周りを覆っている妖艶な光は骨に密接し、肉
へと変わった。
そんなばかな・・・!!
驚愕するあたしを尻目に、作業は続く。
肉が付くと今度はそれを皮が覆い、あるべきところにあるべき毛が
必要分だけ生える。
・・・魔法のようだ。いや、魔法なのか。
あたしの視線の先には、20数年来付き合いのあったあの人が裸で
立っている。思考を停止し、目の前の人を無心に見詰める。
ゆっくりと、彼女が瞼を開け、口を開いた。
「マリー。・・・夢じゃ、ないのね。私、会いたかった、あなたに会
いたかったわ、マリー!!!」
激しく抱きついてきたテリーをあたしは小さい体いっぱいに受け止
めた。テリーの温もりを体全体に感じたかった。
しかし、あたしの期待は絶望に変わった。氷のように冷たい体を抱
きながら、失望に溺れ自分が消えてしまいそうになった。人のもの
とは思えぬ硬い肌、冷え切ったあたしの温度よりも低い温もりのな
い体。腕の中に愛しのテリーを抱いているはずなのに、心は余計に
虚しさを増していく。悔し涙が頬を伝い顎から滴り落ちる。
テリーは泣きそうな顔をしながら、泣かなかった。涙が出ない、と
いうよりもないのだろう。哀れな彼女を包みながら、あたしは復讐
心をより一層強いものとした。
おまえに逃げ場はない。絶対殺してやる!!!
最終更新:2008年07月21日 23:32