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サーヴェリー姉妹-21


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955 名前: FAT 投稿日: 2005/09/26(月) 23:42:56 [ xGI1QUTg ]

「やぁ、すまないな、僕の勝手を聞いてもらっちゃって。」
ドアを開け、レニィはジョーイを部屋に招き入れた。
「いや、いいんだ。君なら大丈夫だって俺の龍も言ってるから。」
龍の姿の彫られた左目の眼帯を指差し、ニカッと笑った。

これからジョーイは自分の過去についてレニィに全て話そうとして
いた。彼の過去は人にペラペラとしゃべれるほど軽薄なものではな
いので、おそらくまともに話を聞けるのはレニィが最初で最後なの
ではないだろうか?
ジョーイはこれを機にレニィともっと親しくなりたいと考えていた。
彼にとってレニィとは、汚れを知らない眩しいほどの光であり、自
分を変えてくれる希望だと感じている。また、いつだったか、酔っ
て自分にエリプト帝国再興の夢を延々と、熱く語ってくれたことが
あった。そのとき、ジョーイは決意した。この人の腕となり、足と
なり夢を叶えてあげよう、自分がどんなになっても、守り抜いてみ
せよう、と。



――「ジョン!!またか!!この馬鹿息子が!!」
小さな町、ブレンティルの外れにひっそりと佇む木造のオンボロ住
宅から金切り声があがる。

俺は当時7歳。ジョン=エルフェイエンという名前だった。

金切り声をあげたのは俺の母親。この日は薪拾いにいき、しけって
いるものを誤って混ぜてしまったということで頬を思いっきりぶた
れた。よろけて壁にぶち当たると、追い討ちを掛けるように蹴りが
どてっ腹に入った。悶絶し、床に伏せると、頭を足蹴にされた。

 ・・・母親は、父親が家を出て行ってしまってから狂ったように俺
を虐待し始めた。

父が家を出たのは俺が6歳のとき。理由は覚えていない。それから
6年間、母からの暴力は毎日のように続いた。一番酷かったのは9
歳のとき、薪で思いっきり右腕を殴られ、骨が折れたときだった。
痛みに泣き叫ぶ俺をよそ目に、なにごともなかったかのように食事
を取る母。当然医者に行かせてくれるはずもなく、激しい痛みと毎
日戦いながら、自然にくっつくのを待った。もちろんそんなにうま
くくっつくわけもなく、今でも骨が曲がっているのが分かる。

12歳のとき、転機が訪れた。町に数人の冒険者たちがやってきて、
俺を誘拐した。
 ・・・そいつらは悪人グループだったのさ。
俺を誘拐したのは奴隷が欲しかったかららしい。しかし、俺の身の
上を話すと、メンバーの一人が俺に剣を教えてくれると言い出した。
嬉しかったよ、初めて人に優しくされた気分だった。俺はそこで道
化を始めた。冗談を言って空気を和ませる癖がついた。皆笑ってく
れてこのグループが好きになったよ。
でも所詮は犯罪者集団さ。15歳のときに薬をやって発狂したメン
バーに左目を素手で刳り抜かれた。それを目の前で食われて俺は失
望したよ。・・・なんていうか、人間っていうものに、さ。

結局そのグループからは逃げるように抜けて一年ほど放浪とした。
もうボロボロだった。
体も、心も、このときが一番衰弱していた。
ある日、突然降ってきた雨を避けるため、洞窟に逃げ込んだ。する
と、奥のほうから声が聴こえてきたような気がした。恐る恐る近寄
ってみると巨大な鍾乳洞が連なっている空洞に出た。更にその奥に
進むと巨大な龍がぐったりと倒れていた。声の主が分かると俺は一
目散に駆け寄った。なにか喋っているようだが、言語が違うのか、
何を言っているのか分からなかった。何をすればいいのか分からず、
ただ黙って龍の側で腰を下ろしていると突然、龍の体が消え始めた。
何が起こっているのか理解出来なかったが、龍が完全に消えた次の
瞬間、失った左目に激痛が走った。もがき、苦しんでいると頭の中
に声が響いた。
「勇気ある少年よ、共に人生を歩もう。我は龍なり、主の力となろ
う。」
信じられなかった。幻かと思った。そのときは龍の使い方も分から
なかったから、俺は疲れすぎてたんだと思うようにした。

2

956 名前: FAT 投稿日: 2005/09/26(月) 23:43:32 [ xGI1QUTg ]
そのあとすぐに、親切なパーティーに拾われた。最高のメンバーだ
ったよ。リーダーのアーチャーは美人で気立てが良かった。魔法使
いのカップルと女僧侶も俺を受け入れてくれた。程なくして俺は、
リーダーに恋をした。人生初めてのことさ。ヒーリィっていう娘だ
った。気持ちを打ち明けるとすんなりと受け入れられた。この龍の
眼帯はヒーリィが作ってくれたものさ。ずっとほったらかしだった
傷口にようやく薬が塗られた気分だった。人を恐がっていた俺がい
たが、このパーティーのおかげで大分人を好きになれた。

4年は一緒にいたのか。俺が20歳のときにヒーリィは死んだ。魔
法使いのカップルは家を構え、僧侶は他のパーティーに移った。

 ・・・また、一人になってしまった。

彼女と死別することは随分と前から分かっていた。不治の病だと告
げられていたから。

ヒーリィは死ぬ前に名前をくれた。俺が母親を思い出すから嫌だと
自分の名前を忌み嫌っていたから。

「あなたのなまえはジョーイ=ブレイズ。楽しくって(joy)、でも
炎(blaze)のように強く、激しく燃え盛っている人だから。」

俺はこの名前がすぐに好きになった。どうせ町でも俺は死んだって
ことになっているだろうし、名前を変えても支障ないはずだった。

だが、俺は生かされていた。なにを血迷ったか、俺はブレンティル
に戻ってしまった。そして久々に・・・十数年振りに母親に会った。
「ジョン!!よくもおめおめと帰ってきてくれたな!!」
捨てたはずの名前を呼ばれ、頭がくらくらした。以前にもまして凄
惨な顔つきをした母は挨拶代わりに平手打ちを一発見舞った。
俺はもう21歳になっていた。肉体的には痛みをそれほど苦にしな
かったが精神面での傷が酷かった。俺はまるであの当時に戻ったか
のように脅え、恐怖のあまり気を失ってしまった。

気が付くと、両手が天井と結び付けられていて、上半身が裸にされ
ていた。
何をされるのだろう?と不安になっていると部屋に母と痩せこけた
青年が入ってきた。この少年は孤児だったので十年ほど前に引き取
ったということだ。もちろん奴隷として使うために。
間もなくして母による虐待が十数年振りに再会された。
手始めにあの懐かしく、忌々しい薪で体中を撲打する。頑丈に育っ
た俺の体はなんら反応を示さなかったので、すぐに次の手段に移す。
 ・・・おい、待てよ!!
心の中で戦慄が走った。一旦部屋から出た母は、燃え盛る薪を持っ
て再び姿を現したのだ。そして、ゆっくりと俺の体にあてがう。自
分の肉の焦げる、むせ返すような臭いを嗅ぎ、頭がおかしくなりそ
うだった。
何箇所か取り返しの付かない火傷を負わせると、母は興奮して真っ
赤になっている薪の先をただ一つだけ、残されている右目に突き出
した。

 ・・・いやだ、こわい、こわいよ、だれか、だれかたすけてっ!!

心の中で必死に助けを呼んだ。でも無駄なのは分かってた。俺はこ
のとき死んだんだ。きっと。

薪の温度が右目で感じれるほど近づいた。恐くて、悔しくて、情け
なくて涙が止めどなく溢れてきた。このとき、人生の底を見た気が
する。
もうダメだっ!!
そう思った瞬間、失われたはずの左目から眼帯を弾いて青い龍が飛
び出した。狭い部屋を飛び出し、家全てを飲み込んで、天高く消え
ていった。突然のことに頭がついてゆけず、状況が読み込めなかっ
た。ただ、これだけは分かった。もう、俺を脅かすものはなくなっ
たんだと。
眼帯を屈んで拾い上げ、氷の像と化した悪鬼に一瞥をくべると廃墟
を後にした。これでジョンは死んだ。いや、ジョンなんてやつは元々
この地に存在してなかったんだ・・・。


話を終えるとジョーイは暗い影を落とし、右目は涙ぐんでいた。
レニィは気が動転しそうになった。かつてこれほどの惨劇を聞いた
ことがあるだろうか?ここまで凄まじく、人生の深い底を覗き込ん
だ人間は今まで誰一人として聴いたことがなかった。

そして彼は、この勇気ある告白をしてくれた男に親友と呼びたいと
申し出た。願ってもない申し出を喜んで受けたジョーイはここに己
の全ての可能性をかけることに自信を見出した。


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最終更新:2008年07月21日 23:45