私の名前は「トンキン」。
私は古都の西はずれの小さな村で育った。
私の父は、私が生まれるとすぐに姿を消し、
私は母の手一つで育てられてきた。
そんな私は、少しでも母を楽にさせたいと思い、
古都で商業を始めることにした。売るものは、母が自宅で作った
花やケーキだ。花やケーキには、冒険者を癒す効果があるらしい。
私は戦闘はしないので、ただお腹が減ったときにケーキを食べるくらいで、
花で癒されたいなどと思ったことはなかった。むしろ、昔からものを作るのが
とても好きだったので、時間をみては、木を切って”弓”と”矢”を作っていた。
そんなあくる日、美しい顔立ちの女性が私にその弓と矢を譲ってくれないかと
話しかけてきた。私は自分の作ったものが人に使ってもらえるということが
とても嬉しくて、気前よくその弓と矢をその美しい女性に譲った。
その日からというものその女性は毎日毎日、矢を買いに来てくれた。
いつしか、私はその女性に合うことが楽しみになっていた。
彼女の気を引くために、いろいろな弓も作った。隣街のハノブというところに
火のついた矢が売っていると聞けば、その作り方を調べに行ったりもした。
そして私はついに、”火矢”の作成に成功した。もう、彼女の驚く顔が見たくて
ずっとワクワクしながら待っていた。
しかし、彼女が来ることはなかった。昨日まで私のもとを訪れていた彼女は
今日は来なかった。何で今日は来なかったのだろう?私は疑問に思ったが、
まぁ彼女も見るところ冒険者だし、これない日もあって当然だろう。
そう自分に言い聞かせた。
しかし、次の日になっても、一月が経っても、季節が変わっても、彼女は姿を見せなかった。
その間に、彼女を喜ばせようと思って作っていた”火矢”は、沢山の冒険者に知られるようになり、
私は街一番の商人になっていた。お金はある。街をでて、村へ戻り母の世話をすることもできる。
でも、私は彼女のことが気になって、古都を離れることができなかった。
幾年も幾年も、弓と矢を売り続けた。
そして今日もまた、彼女が戻ってくるのではないかと考えながら、彼女のため作成に励んだ
”火矢”を売り続けている。
最終更新:2009年06月03日 20:49