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 古都での大雪は静けさを見せ、次第にボタ雪から粉雪へと姿を変えていった。次第にソレは止むだろうと推測がつき、そしてソレが私たちの旅立ちの合図でもあった。
私は、アレンから少量の服をわけてもらった。自分で着ている服の上から赤いジャケットに袖を通しその上から白いローブを羽織った。これだけでもかなりの防寒具になる。
一方彼はというと、やはり普段着の上から茶色いマフラーを首に巻いて、その上に黒いローブを羽織っている。背中には大きなかばんが背負われている。
「…あの、アレン君…その大きなかばんは?」
「ん、あぁこれですか?これは旅に必要なものをそろえたものですよ、薬に包帯、解熱剤に解毒剤。それから…」
「もういいわ、ありがとう。」
用心深いというか何と言うか、多分彼の血液型はA型だろう。うって変わって私はO型。彼は几帳面且つ周りのことにまでしっかりと目を配り、全て自分ひとりで物事を抱え込んでしまいそうなタイプだと分る。一方私はというと…マイペースでボーっとしがちなO型そのものの性格を表現しているのが分る。
血液型というのはこれほどまでに性格に響くのかと思うと、昔の人はよく研究したものだと頭が上がらない。
「さぁマスタ、そろそろ頃合でしょう。」
「…そうね、もうじき雪も止む様子ですし…行きましょうか。」
「ですね、っとその前に。」
「ん?」
「朝食はライスがいいですか?それともブレッド?」



 朝食を食べた後、私たちはアレンの部屋を出た。アレンは部屋にしっかりと鍵を閉めそして管理人へとその鍵を渡した。何か伝言を一言残すと、私たちは二人でその寮を出た。
古都の東口の方へと向かい、そして大きな城門の前に居る兵士へと出国願いを出す。西口とはうって変わって東口はそれなりの強さが無いと出られない仕組みになっていた。それは東口を抜けたすぐのところにある二つの監獄のせいだという。
一つは”オート監獄”、昔オートという凶暴なモンスターを封印するために作られたものだと聞かされている。その監獄の中では200年も昔から凶暴なモンスターや罪人などが閉じ込められているという。
 そしてもう一つ、”アルパス監獄”は死刑囚や古の魔物を封印するために作られたものだと古文書には記されている、今となっては死刑囚はおろか…その機能を全く必要としていないただのあれた監獄、魔物の巣窟となっていると噂になる場所だった。
 この二つの監獄では、特にオート監獄での脱走者による被害が多数出ているとのこと。そしてその場所を越えたところにある”盗賊団のアジト”による被害の増大。
この二つが原因で東口の出国が困難となっている。
私たちは出国手続きを終えて書類を提出する、そして城門の前に二人で並び空くのを待った。しばらくすると轟音と共にその巨大な城門はゆっくりと口を開き、銀色の世界を私たち二人に見せてくれた。
「…行きましょうか、マスター。」
「えぇ、いきましょう。ライファーさん、入国の時はまた宜しくお願いします。」
「かしこまりました、お気をつけて。」
城門の警備兵隊長が一度お辞儀をして私たちを見送ってくれた。私たちはゆっくりと歩いてその城門を超え、一度立ち止まり後ろを振り返って一礼をする、するとライファーも再び深くお辞儀をした、ライファーがお辞儀をしている姿を見ながら私たちは城門がゆっくりとその口を閉じるのを確認した。そして城門は再び硬い口を閉じた。

2


 すぐにやむと予想されていた雪は、相変わらず降り続いていた。
粉雪からボタ雪へと変わり、少し風が強くなってきたのを感じる。だが風の具合からしてもう時期止むであろう事は明白になりつつある。
明白といえば、先ほどから私の後ろで息を切らせながら歩いている一人のウィザード。彼の名は…紹介するまでも無い。
「…アレン君、やっぱり荷物多かったんじゃない?」
一度立ち止まり後ろへと振り返る、そこにはアレンが真っ白な息を大量に吐きながら前傾姿勢で両手をかばんの両肩ベルトをしっかりと握り締めて、ゆっくりと歩いていた。
「何を言うんですかマスタ、用意あれば憂いなしというではないですか。」
「…相変わらず私のことは”マスタ”って言うのね、もう…ミルでいいってば。」
「そういうわけには参りませんよ、出会いの形はどうあれ私はギルド員なのですから、マスタのことをマスタというのは必要最低限のマナーです。」
「じゃぁ、マスタ命令。私のことをマスタって呼ぶのは禁止。」
「あ、それずるいですよマスタ!」
「ほら、またマスタっていう!」
『ぐぐぐぐ…。』
私たちはこんな会話をつづけながら少しずつハノブへと続く道を歩いていく、この街道に居るモンスターたちはとても大人しいものだ、こちらから攻撃を仕掛けない限りまるで殺意を向けてこない。これは長い間古都で争いごとや紛争、戦争といった類のものが無かったからであろうと推測される。
困った時はモンスターに道を尋ね、そして情報をくれたお詫びに少量のお金を渡す、これだけで十分だった。
もう少し行ったところで最初の詰め所が見えてくるはず、そこで少し休ませてもらおう…そうアレンと相談した。



 「すいませーん。」
私が詰め所のドアをノックして挨拶をした、その挨拶をしている脇で息を切らしてかばんを下ろし、そして地べたにしゃがみこむアレンの姿があった。
「…おかしいわね。」
「はぁ…はぁ…どうしたんですミル。」
言い争いの後私が勝ち、アレンは私のことをミルと呼ぶようになった。敬語は多分生まれつきというよりは教育の過程でこうなったのだろうと思われる。
「ここの詰め所に人が居ないなんて…それも年の暮れに…。」
私はドアノブに手を掛け、そして右にノブを回した。するとドアに鍵は掛かっておらず、簡単にドアが開けられた。中は真っ暗で何も見えない、私は持っていたランプに火を灯し部屋全体を照らした。
「っな!
「どうしたんですかミル…これは…。」
私の目に飛び込んできたのは、ソレは残酷な光景だった。壁には一面に血がこびり付いていて部屋の中には元人間だったソレが横たわっていた。
「…うぅ…。」
無残な光景の中、一人の男性の声が聞こえた。それは詰め所に勤めている一人の古都警備兵だった。彼は傷だらけになりながらも意識だけはは何とか保っている状態だった。
「た…たすけ…。」
苦しそうに私たちの方に手をさしのばす、私はその手を握ると一度脈を取った。とても弱まっていて今にも危険な状態である事がわかる。
「アレン!薬を!」
「了解です!」
アレンは外においてあった道具鞄の中から一つの箱を取り出し、その中から魔法薬をとりだした。その魔法薬を薬と混ぜて融合させる。それをコップに移して急いで私のところまで戻ってきた。
「大丈夫、必ずたすかります…。」
私は男に安心させるような言葉を一言述べてから口へとコップを運んだ。男は口をゆっくりとあけてそのコップの中身をゆっくりと飲む。すこし時間は掛かったもののコップの中身を全て飲み干しす。
アレンはもう一つの部屋の確認に走った、その部屋は倉庫になっていて、ドアには鍵が掛かったままだった。休ませる場所を確保するためにアレンは鍵の掛かったドアを蹴り破り、そして同じ高さのダンボールを横に並べてその上から持ってきていた毛布を二重に重ね、そして私と一緒に男をその部屋まで運んだ。部屋に明かりを少量付けてアレンは男の看病を続ける、私はあの残酷な部屋のドアを閉めて鍵をした。そしてその鍵を遠くに投げた。
まだ降り止まぬこの雪の中、一体何があったというのであろう。古都からそれほど離れた場所ではない。かといって近くでもないその場所での惨殺かつ猟奇的殺人。深々と降り積もるその雪は、数時間前まで残っていただろうと思われる白い結晶に着いた血液を全て白く染め上げていた。


 白い悪魔-1
 END


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最終更新:2009年06月03日 20:51