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山城singo


1

「ハァハァ・・・」
やっぱり無理だった、まだ早過ぎたんだ。こんなことなら、みんなの忠告を聞いておけば
よかった・・・。
ソルティーケーブで食人サソリに殺られるのか・・・。それにしてもなんて硬さ!!
私のGPなんて全然きかない・・・。
目の前の蠍に私はどうすることもできず、
ただ呆然と、迫り来る死に耐えていた。
「ごめん・・・」
蠍の毒が全身にまわり始めたらしく視界がだんだんとぼやけてきた。薄っすら見える光は
おそらく最後のGPだろう・・・。ここまで来たのに終わるのか・・・。
私はそのまま気を失った・・・

気が付くと私は冷たい地面の上に横になっていた。辺りは暗く、
目の前には誰か人がいるのか、微かに気配を感じた。
私はみんなの忠告も聞かずに、シャープベンダーを探しにアルパスB3から
ここへやって来たんだった。今考えれば、なんて愚かなことをしてしまったんだろう。
キクロだって、私には敵わなかったから?自惚れていたんだ、きっと。それにしても・・・。

「気が付いた・・・?」
「え?誰」
「よかった、意識がもどって・・・たまたま、通り掛かったら君が蠍に襲われていたから。」
「もしかして・・・助けてくれたの?あなたが?」
その人は恥ずかしそうに、そうだと言った。
私は、立ち上がりお礼を言うとあらためて彼を見た。
薄暗い洞窟の中で見た彼は、美しい顔立ちをしていた。
でも、どこか鋭くて・・・寂しそうだったのを覚えている。

「でも、なんでこんなところへ?」
私は、シャープベンダーを探しに来た事、みんなに止められたのに自惚れできてしまったこと、でも敵わなくて蠍に死を覚悟したことを正直に話した。彼は、時には笑いながら
真剣に私の話を聞いてくれた。
「そうだったんだ。でも、とにかくよかった。」
「ええ・・本当にありがとう」私は心からそう思った。
「でもこれからどうするの?今から古都へ帰るには、遅いし・・・。
君も疲れただろうから、今晩は家に泊まっていけばいいよ。」
「そんな・・・悪い・・・」
「いいよ。何にもないところだけどね。」
屈託なく言う彼に、私はうなずいた。
途端に溜まっていた疲れがどっと出てきたのか彼の言うように
本当に古都へは帰れそうにはなかった。
私は、まだ痛む足を少し引きずりながら彼の家へと向かった・・・。

家に着くと彼は夕食の仕度をしてくれた。慣れているのか、すぐにとても美味しそうな
匂いがしてきた。
「ちょっと待っててね。すぐにできるから。」
「いつも自分で?」
「そうだよ。一人暮らしだから、自分でしなくちゃね。」
「淋しくないの・・・?奥さんは?」言ってしまってから、私はひどく失礼な事を
いったと後悔した。彼は、一瞬黙り私の後ろの壁を指さした。そこには大きな
山にそびえている城の絵が貼ってあった。あの城は確か・・・。
彼はそれっきりそのことには何も答えなかった。私も、何となく聞くのをためらったまま
夕食を食べ始めた。

彼はお酒を少し飲みながら、適当に自分の作った物を食べていた。料理はとても美味しかった。私は話すのも忘れ、しばらく無言で食べていた。そんな私を見て
彼は少し酔ったのか、時々冗談を言って私を笑わせてくれた。
「でも、君みたいな娘が槍を地面に突き刺して戦ってるなんて想像できないね。」
「そう?今度一緒に狩りにでも行く?想像できなければ見せてあげる。」
「そうだね、一緒に行こうかな。シャープ探しも手伝えるよ。」
「お願いするわ。私は、休んでるから。もうあそこは懲り懲り。」
「あはは、おまかせください^^何なりと」
そんな風にゆっくりと夕食の時間は過ぎていった・・・。

夕食も食べ終り、お風呂に入ると私はすぐに部屋に入り眠りについた。
よほど疲れていたのだろう。初めて来た家なのに、ほとんど一瞬で眠ってしまった。
彼も、いつのまにか自分の部屋へ行き眠ってしまったみたいだった・・・。

2

夜中、私はのどの乾きに目が覚めた。台所まで行き水を飲み、部屋に帰る途中
さっき彼が指した城の絵が目に入った。薄暗い部屋で、そっと近寄りあらためてその絵を眺めた。
大きな山に城がそびえている・・・。
かなり歴史があるみたい・・・。どこか見覚えが?でも、何処だろう?
うまく思い出せない・・・。

「その絵がどうかしたかい?」急に彼の声がした。私はびっくりして振り返ると彼が
後ろに立っていた。
「ええ、見覚えがあるんだけど・・・うまく思い出せなくて。」
「そうだろうね。君は若いから・・・」彼のその言い方が少し気になった。
「この絵は何?あなたが描いたの?」
「君は知らなくていい・・・」悲しそうな彼の表情を見ていると
私は急にいたたまれなくなった。突き放すような態度はどこか少年のようでもあった。

 私はそっと近づき、ゆっくりと彼の瞳を覗き込んだ。薄暗い部屋のなかで
彼の瞳はじっと私を見つめていた。女性のような整った顔立ちに淋しげな表情を浮かべ、
何か私に言いたげだった。私は、ゆっくりと彼の手を握った。彼は少し驚いて言った。
「何・・・?」
「何でもないの・・・。少しだけ・・・」
彼は、黙って私に接吻をした。
それから、どうやって部屋にいったのだろう・・・。よく覚えていない。
それから、私たちは愛し合った・・・。お互いの寂しさを紛らわせるように・・・。一瞬でもすべてを忘れようとしているように・・・。
彼の息遣いに徐々に私の体は熱くなっていった。次第に力が抜けていく・・・そして、私の奥から今までに感じたことのない波が押し寄せて来た。

「あぁ・・来るわ・・・」
「うん・・・」彼にはすでにわかっているみたい。
そして、それから彼は動きを一段と速めた。その動きに合わせて快感が込み上げてきた。・・・あぁ・・。何かが強くはじけ、私の体は3度波をうった・・・。え・・・?同時に猛烈な脱力感が襲ってきた。私は、その余韻の中でパズルが組み合わさるのを知った。否、おそらく絶頂を迎えた瞬間に何かが頭に浮かんだのだ・・・。あれは・・・そう・・・壁に貼られた・・・山と城の絵・・。ネームは・・・singo・・・。あぁ・・・もしかしたら・・・。
私は、蠍の毒に?

私はそっと「ねぇ、私たち今何をしているの?」と聞いた。
彼は少し考えるようにして答えた。

「チョメチョメ・・・」

やっぱり・・・。涙が溢れてきた。彼に気づかれまいと、私は声もなく泣いた・・・。
長い夜になりそう。私は、朝日が昇るのをひたすら待った・・・。

翌朝目覚めると、隣には少し懐かしい感じの小太りの中年が眠っていた。
私は彼に命を救われた・・・。でも、同時に何か大切なものを失ったのかもしれない。
でも、私にはそれがなんであるかはよく解らなかった。古都に戻ろう・・・。
 部屋を出るとき、朝日に照らされた城の絵が目に入ってきた。私は、無意識にその中に
昨日の美しい彼を探した。でも、それはもう見つかりそうになかった・・・。

「山城singo」終

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最終更新:2007年06月05日 06:34