私は巨人骸骨。生前の名を一旗次郎直伴と申します。
1
『アルパス地下監獄。ここは冒険者たちが集まる戦場。
ひとたび衝突が起これば、そこには血の雨が降り、
息つく暇もない修羅場と化す。
剣を振りかざす戦士、 それに歩み行く巨人、
降り掛かる隕石、 耐える木乃伊、 飛び交う矢、
放たれる炎、 神に祈る僧侶、 人狼の断末魔・・・・・・』
・・・・・・と言う感じならなんかこうもっと―――気力が湧いてくるんだがなぁ・・・・。
失礼。申し遅れました。私は巨人骸骨。生前の名を一旗次郎直伴と申します。
生前、というのは一度亡くなっているからですね。
つまり我々は恨みを残して死にゆき、成仏せぬまま
鎧をまとった骸骨となってこの世へ戻ってきたわけです。
しかし私だけは少し事情が違いまして・・・・いえ、今その話はしたくないです。
というよりただ話す気分になれないだけなんですが。
まぁ、また気が向いたら話すかもしれません。
そういや今は木曜日の昼ごろでしたね。なぜかこのくらいの時間帯になると・・・
招かれざる客が来なくなるんですよね。
知人は皆他の場所に移ってしまったものだから、話相手もいなくて暇なんですよ。
少しの間でいいですから私の無駄話にお付き合い頂けないでしょうか?
2
いきなり初めからこんなこというのも難なんですが・・・・・
ここに来る人たちの見苦しいこと見苦しいこと・・・・。
昨日の夜、檻ごしから見ていたんですけどね、
こんな場所で飯を食うと言い出して座り込む輩がいるんです。
それだけじゃないですよ。
やたらと連れに話しかけて迷惑をかけているのがいれば、
いつの間にか誰かさんが人様のすみかで露天を開いてたり・・・・。
ここが何処だかわかっているのでしょうか?
誰か入り口に警告の看板でも立ててくれれば少しはマシになるかな・・・・・。
いやそりゃ私だって、目をぎらつかされて剣やら槍やらで襲われるのは・・・・・正直嫌ですよ。
この前なんか恋人の仇とかなんかで、名も知らぬジャイアントさんが犠牲になっていたし・・・・。
でも急にどかどかと入ってきたと思ったら、突拍子もないことをしだして、
他の人に散々迷惑かけているところを毎回毎回見させられるのは・・・ねぇ・・・・・・。
幽霊になったとはいえども人の魂、情はまだありますから、
そういうものを見てあまりいい気分はしませんねぇ。
まあ、そうやってサボる人がたくさん来てくれたおかげで、
私の旧友ハイジャイアントのガイさんが一月前に晴れてキクロップスに
ランクアップできたわけですが。そういえば彼はこんなことを言っていたなぁ・・・。
「腹の立つ奴がいたら蹴り殺してやりゃいいんだ。
なに、そうゆぅおつむがイカレてる奴ほどこういうところに来たがるんだって。」
……まあそういう意見もあるということです。
―――そういう……意見がね。
……ねっ。
(誰か察してくれないだろうか・・・・)
3
そうそうあれを忘れていた。あれですよ、あれ。あのーなんて言ったかな・・・・・・
まあいいか。しゃべっているうちに思い出すでしょう。
ろくに戦おうともせずに、殺されたモンスターが落としたアイテムを
ひたすらかき集めている人がいたんです。それも他職の装備品まで。
実は殺した時に落ちるアイテムって、
そのモンスターがたまたま拾った物であることが多いんです。
誰かの拾い物ををまた拾って、それも使うのならまだしも使わないものまで。
みっともないったらありゃしない。
生前のかすかな記憶から察するに、そういう物は誰かに売って金にしてしまうんでしょうね・・・・・・。
かわいそうに。金のほしさのあまり頭がおかしくなってしまったんでしょう。
でなけれはよっぽど商人魂が強いのか・・・・・
思い出した思い出した。あれってブーンって言うんですよね確か。
…違ったかな?まあいいや。
名前つけた人、いいセンスしてますよね。アイテムを探して、
まるで飛び回ってるところが「ブーン」って感じで。
そう思いません? ・・・思わないか。
そろそろ来る頃かな? さて、私は戻るとしますよ。
こんな余計な話に付き合ってくれてありがとうございます。
また暇になったらここに来ますね。では。
……「俺様Tueeeeeeeeeeee!!!!!!!!」
『今日もアルパスでは戦場の叫びがこだます。
剣を振り回し迷走する戦士、 それに狙いをつける巨人、
降り掛かる燃やした発泡スチロール、 包帯にさえ燃え移らない木乃伊、
飛び交う叫び、 放たれた炎に焼かれ死にゆく紙、
それでも紙に祈り続ける僧侶、 そして・・・・・・勇者の断末魔が、 今日もこだます・・・・・・』
最終更新:2009年06月03日 20:56