あるウィザードが残したもの-2 (少年時代)
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私の名はメリック・アルベナート。
ブルン暦4819年8月9日、私は魔法都市スマグで生を受けた。
その頃は今と違い、スマグとハノブの間に通路があり、経済的にもかなり発展していた。
しかも有能な魔法使いたちが大陸中から集まってくることもあり、スマグは一時ブルンネンシュティグを超える大都市となっていた。
私の両親はどちらも魔法使いだったらしい。
父はアルベナート家の生まれでウェイクと言った。母はエバンズ家の生まれ、メナという名だった。
父は口数が少なく孤独な感じもあったが、根は優しく、仲間の間ではいつも頼れる奴だと言われていた。
そんな性格からは想像できないほど魔法の腕は天才的で、一時は神をも凌ぐとまで噂されていたらしい。
母は温和で人当たりもよく、しかも妖精のような美しい顔立ちをしていることから、魔法学校では誰もが憧れる存在だったらしい。
攻撃的魔法は父ほどは優れていなかったが、支援魔法に関しては父に勝る力を発揮した。
私が生まれたときには両親は涙を流して喜んだらしい。町の中央の噴水に投げ入れられてしまったほどだ。
思えば彼らが一番幸せだった時期はあの時だろうということは私にも分かる。
私が生まれて一年も経たないうちに、この世を後にしてしまったのだから・・・・。
そう、魔法使いなら誰でも知っているであろう、ブルン暦4820年5月22日。
スマグ大混乱である。
十数年前にも旧レッドアイ関係の事件があったが、あれとは比べ物にならないくらい大きな事件だったと聞いている。
長のウィザードが、人口削減目的でハノブとの交通を絶ってしまったことが原因だった。
方法は信じられないものであった。自分の全ての力を注ぎ、ハノブとスマグの間に標高何千mという山を創り出した。今だにあるあの山のことだ。
今までに無い混乱で、夥しい数の悪魔達が目を醒まし、スマグになだれ込んできたのだ。
町は復興は不可能だと言われるまで悪魔と怪物、そして名も知らない悪の神獣たちに徹底的に破壊されてしまった。
魔法使いたちも勇敢に戦った。最初は人間優勢と思われていた戦いも、時間が経つにつれて互角に、さらに人間劣勢に落ち込んでいった。
何しろ数が多い。まるで限界などないように次から次へと襲い掛かってくるのだ。数に限りのある人間側が勝てる余地などなかった。
勇敢に戦った人間側は全滅した。
そう、フランデル大陸中部の旧巨大帝国エリプトと同じ道を辿ってしまったのだ。
ある人に聞いた話だが、私の両親も勇敢に戦い、十分に自分の能力を活かし戦っていた。
しかしその戦っている最中に、苦戦している仲間が見えてしまった。
彼を助けようと真っ先に飛んでいった父は、負傷を負ってなお攻撃を受けていた仲間を庇い、悪魔達から集中攻撃を受けていた。
母は仲間を安全なところへ避難させ、急いで戦場に戻った。
しかし、そこに待っていたのはネクロマンサーの群れであった。強烈なフレイムストームを浴び続けても父は耐えていた。
母もそこへ飛び込んだ。そこで・・・・原因不明の大爆発が起こった。
メテオだと言う人もいれば、ネクロマンサーが自爆したと言う人もいる。
父も母も助からなかった。ただ、母は少しの間生きていた。
母は彼に「ジェイ・・・・メリックを・・・・」と言い残したらしい。
孤児となった私を、彼は引き取ってくれた。
彼の名はジェイ・エバンズ。そう、母の弟だった。
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二頁目。
ジェイの家はブルンネンシュティグにあった。
当時、秘密組織レッドアイ・ブルンネンシュティグ王国の崩壊などがあって、ブルンネンシュティグは荒れていた。
もっとも、当時のスマグに比べればまだずっと良い方だろう。王政は崩れはしたものの、人々は貧困に陥らずに生活していた。
私は引き取られた後、しばらく何も口にしなかった。
直接両親の死(と自分が本当の家族ではないこと)を知らされたのはもっと後のことだったが、その時には大体感じ取っていたのだろう。
ジェイは魔法使いだったが、母のように魔法が強くなかった。
だが母はそんな弟をいつも見守っていて、同年齢のように厳しくも優しく扱ってくれた。
いつも一緒にいてくれていた姉がいなくなった彼の嘆きは大きかった。
そこで後追い自殺まで追い込まれなかったのも妻のクレアの励ましがあったからだろう。
この新しい両親は、なかなか心の開けなかった私を温かく見守ってくれた。
私は外に出ることを嫌がったが、それだけはいけないと無理やり外に連れて行かれた。
だがそんな生活にもなれていき、農業を営んでいた家を手伝うこともあった。
そして私は5歳になった。家に完全に馴染んだとき、義妹のユナが生まれた。ユナは病弱で、散々ジェイとクレアを困らせた。
しかし疲れている中、ジェイは少しずつ私の魔法の練習をしてくれた。
初めて火を出した時は本気で泣いてしまい、ジェイに口の中に菓子を詰め込まれたのを覚えている(できたご褒美としてらしい)。
そして他人より早く習得を始めたことで、私は驚くべき速さで魔法の力を磨いていった・・・・。
私はすでに17歳になっていた。
病弱だった義妹は武器を持たず、その代わりに驚くべき音楽的才能があることが分かった。
両親に似て優しかった義妹は、友達との戦いの訓練でコブを作るたびに「大丈夫?あんまり無理したらだめだよ。」と手当てしてくれた。
今考えてみれば年下の女の子に手当てされるなんてはずかしかっただろうに、当時の私は逆に嬉しがっていた。
農業も行き詰ることもなく生活していた。私達は幸せだった。
そんな時、彼女に出会った。そこが、私の人生の最大の転機だったんだろう。
ページはここで切れている。
切れ目にしては変じゃないかな、と思いながら次のページへ目を走らせる。
・・・何も書いていない。しかも、次のページにも、その次のページにも何も書いていない。
-字が浮き出てきたりする本を前に見たことがあった。
そのことを思い出し、白紙のページを見つめていた。
・・・・・10秒ほど待った次の瞬間だった。私は気を失った。
最終更新:2009年06月03日 20:55