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白銀の弓兵-4


1

 あの時も、こんなふうに雪が降っていたのを覚えている。それはまだ私が幼く、魔法学校の上級学年の時だった。当時の私はまだ16歳、初歩的な魔法しか使えず、学校の問題児でもあった。
当時の私は、悪仲間達と学校をサボったり、備品を壊したりして先生達の頭を痛めていたことを良く覚えている。校則違反だったタバコにまで手をつけ、一度は停学を食らうものの、すぐに復帰してはまた悪ふざけを続けていた時だった。
 そんな中、私の学校に一人のランサーがやってきた。ソレが師匠との最初の出会いである。
師匠はウィザードの私たちに基本的な体術と攻撃作法を教えてくれる教員の助っ人としてやってきた。
学校の理事長と知り合いだったらしく、というよりは彼女の母親が知り合いだったようだ。師匠は私の一つ上で、まだ幼い顔立ちは残っていたのを良く覚えている。当時の彼女はそれでも腕利きのランサーで、賞金首や狩人、敵を回すことも少量ながらやっていたという。そんな彼女が持っていたのが普通とは少し違った魔力の弓、”琥珀の人”がソレだった。
琥珀の人は、通常の弓に魔力増強装置を組み込み、自らの魔力を高める効果を果たしている。彼女自身弓なんて使ったところは一度も見てはいないが。
変わって槍は何処にでもあるような遠投用の槍。特別何か仕掛けがあるとは思えなかった。だが彼女自身の魔力はこの学校の中でもトップクラスに近い能力を持っている。ランサーにしておくのが持った無いほどだとよくみなで口をそろえて言ったものだ。



 師匠からの話で森へと狩りをする事になった、補助魔法を掛けようとしたとき彼女は手をだしていらないと一言。いくら彼女の魔力が高くてもこの辺のモンスターは強い。凶暴ではないが一度暴れだすと手が付けられなくなる。
森の中を探索し、師匠は品を定めるように木々を物色し始める。そして一つの木に目をつけて槍を構える。
「師匠、このあたりは木に扮装したモンスターが現れる場所です。いくら師匠の魔力が高くてもさすがに…」
そこまで言うと師匠は槍から灼熱の炎を出し、ソレを頭の上で回し始める。槍ごと頭上でクルクルお回した後、その槍を目の前に叩きつけるように地面へと振り下ろした。するとその槍から中心に外へと炎の渦が瞬く間に広がる。森の木々を焼き払い、木に扮装していたモンスターは一瞬にして灰になった。続けざまに師匠がやりを動かす、炎の渦が消えない間に師匠は何かしらの詠唱を始める。そしてその炎は次第に色が変わり、濃いオレンジ色から淡い青色へと変貌していく。その炎は燃え盛る木々を一瞬にして凍らした。
「ん、何か言った?」
それはまるで瞬きのように一瞬で、呼吸をするほど長い時間だった。一面燃え盛る森から凍れる森へと変貌した。師匠の技をはじめてみたが予想以上のものだったと自分自身が納得する。
「…本当にランサーですかあなた。」



 思い出すだけで懐かしい、あの時のあの技。正確な名前までは知らないが多分、あの技を使えるランサーは師匠ぐらいなモノだろう。
そう今だからこそ思う。いくつモノ仕事で調査及び駆除でランサーと組んだ事はあったが、未だに師匠を超えた人は見た事が無い。これが現実、これが真実。そしてその人もまた、行方不明という事実も真実。
「あれから幾年、一体ドレぐらい探し回った事だか…。」
口にくわえていたタバコを手に取り、そしてもう何年も使っていなかった携帯灰皿を取り出して火を消す。そしてその中にタバコを入れてすくっと立ち上がり部屋へと戻ろうとした。
「…ん?」


2

 部屋の中ではミルと少女が喋っている、まずミルが自己紹介をしてそしてアレンの事も少しだけ話した。
「私の名前はミト・メーベ、南の方にある”港町ブリッジヘッド”から人探しで旅をしているんです。」
「人探し?」
「はい。」
ミトはベッドの上に置かれている弓を手に取り、すこしだけ目を細めてその弓について語った。
「これは、私の育ての親みたいな人がくれた弓なんです。アレンさんの言うとおりこの弓の名前は琥珀の人といいます。」
弓をゆっくりと下ろし、再びミルのほうへと顔を向けて口を開く、弓について、その弓をくれた育ての親についてミトは語りだす。
「もう…五年前の話しです、この弓をくれた人の名前はオリエンタル・アラトール、大陸一のランサーだと聞かされていました。」
「オリエンタル…。」
ミトは頷くと窓の外を見る、もうすっかりと日は暮れて夜が深まりだし。雪は相変わらず降り続いている。当然その夜の外など見えるはずも無かった。
「五年前、その人は最後に私にこの弓を渡してどこかへと行ってしまったんです。一枚の置手紙と一緒に。」
ミトはアレンが持つ鞄のほうへと目線を向け、そしてミルもその方向へ首を回す。だが動かずに鞄だけを見つめていた。
「どうしてアレンさんがあの人の名前を知っていたのか、どうして琥珀の人を知っていたのかはわかりません。」
「うーん、アレンも昔の話だけはしないからねぇ~。でもねミト。」
ミルは一度椅子から立ち上がり、コーヒーカップを二つ用意してその中に温かいコーヒーを入れる。二つとも砂糖とミルクを入れてだ。そのカップを再びベッドの脇に置いてある椅子のところまで持って行き、ひとつをミトへと渡す。
「アレン君も私も、今旅をしているの。人探しなら私たちと一緒についてこない?」
「え…。」
「本当のことを言うとね、あなた一人でこの先旅をさせたくないのよ。ついさっきまで生死の狭間に居たあなたなら尚更な事よ。」
そこまで行ってミルはミトの頭に手を置いて髪の毛をくしゃくしゃにする、そして笑顔のまま立ち上がり自分もコーヒーを口にした。
一口飲んでテーブルにカップを置いて立てかけていた槍に手を伸ばす。そしてカツカツと音を立ててドアの前まで歩き、そして止まる。
「それとねミト。」
「はい?」
「なぜか知らないけど、この町についてからずっと私たちをつけてたこういう人たちも居る事だし…ね!」
ミルはドアを思いっきり蹴った、ドアは壊れ廊下へと飛ばされた。飛ばされたドアは床に落ちる前に大きく弾き飛ばされた。ドアのしたからそれほど大きくない男が現れ、腰からナイフを取り出してミルめがけて切りつけてきた。
だがミルもその事を想定してか既に槍を構えていた、きりつけてくる男の左手に握られているナイフ目掛けて勢いよく突き、ガツンと音を立ててナイフを弾いた。
そして一瞬ひるんだ男の喉仏に槍を突き立てる、寸前で止めて左手を離し半回転して男の顔に手の甲をぶつける。
「がはぁ…。」
こめかみに命中した、バングルが男の目の脇に辺り。動脈を一瞬だけ閉じるだけの衝撃を与え脳を揺らした。
「…まったく、風通しが良くなったわねこの部屋。」
「あぁ、そうだな!」
廊下の隅に隠れていたもう一人の男が急にあわられた。ミルに肩からぶつかりバランスを崩させる。油断しきっていたミルはそのまま床のタイルに叩きつけられその上から男が覆いかぶさろうとしている。だが、その男もまた油断していた。覆いかぶさろうとしたその瞬間、自分の胸に数本の矢が突き刺さっている事にようやく気がつく。
「…小娘…。」
ミルが倒れた瞬間を狙ってミトが素早く近くにあった自分の矢を取り出して、その一瞬に五本の矢を放っていた。
「…お見事。」
「ミルさんこそ。」
ミルはお見事と言ったが内心は驚いていた、見たことも無い弓矢の早撃ち。顔の脇を同時に五本の矢が空気を切る音が聞こえた刹那男の胸へとそれは命中していた。
ゆっくりと立ち上がり、廊下の先に見える階段を見る。真っ暗でないも見えないその先。すこしだけ見つめそして部屋の中へ戻ろうとしたその時だった。
「ミルーー!」
アレンの声がした。ミルは血相を変えて部屋を飛び出す、階段をものすごい音を立てておりそして宿屋の入り口のドアを開けた。そこには数人の男と、その男に捕まって首元にナイフを突き立てられているアレンの姿があった。
「アレン君!」


 白銀の弓兵-4
 END


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最終更新:2009年06月04日 04:31