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港町のギルド


1

港町ブリッチヘッド…



砂漠都市アリアンから港町ブリッチヘッドまでの道のりは長い
アレンとリンは物資輸送部隊に傭兵として参加
司祭は旅の運行を安全とする為に無条件で歓待される為、マルの同行に雇い主に依存はなかった

また、アリアン傭兵ギルドで名高い戦士アレンと槍使いリンの噂に、一行の荷物を狙う山賊も無い
道中のモンスターも彼らの敵ではなく、あっけなく一週間の旅は終わった


「んー、磯臭いなぁ」

雇い主からの交渉はもっぱらアレンの役目である
アレンが給金の支払いを受けに行っている間
リンとマルはぷらぷらと港町を見物しながら、情報収集に努めていた
交易港であるブリッチヘッドは、珍しい品物や、各地からの噂話が溢れている
アリアンとの違いはその町並みだけでなく、人々の気風にもあり、慌しいアリアンに慣れてしまっていたリンには
少し物足りなさを感じさせる

「リン、磯臭いと言う表現はどうかと思いますよ」
「なによ、ホントの事でしょ」

嗜めるように諭すマルに対して、リンはいつも喧嘩腰になってしまう

『馬が合わないって言うの?無理、お堅い司祭様なんて』

以前アウグスタでの仕事の時、アレンに言ったけど、生真面目さが更に増した気がするわ…
街で話しかけてくる住民一人一人に祝福の言葉をかけるマルを見ながら、リンはそっとため息をつく
嫌いではない、むしろ安心できる仲間だ
でも、所詮、傭兵と司祭では住んでいる世界が違う

「少し手分けして情報入れてきましょ、集合は宿屋だし」

マルに対して軽く手を上げ、リンは街外れに向かって歩き出す


2

何か言いかけてたみたいだけど、ま、いいわ
リンは独りになった気軽さで、軽く伸びをして回りを見渡す
目指す場所に司祭連れでは、居心地が悪すぎる
古い街並みを歩き、見過ごしてしまいそうな、倉庫街の外れの目立たないドアの前でリンは足を止めた
何の変哲も無い民家のドア
リンの目はドアの脇に無造作に置かれた、古びた馬車の車輪に注がれる

「ここ?」

呟くと、そっとドアを開ける

「おねえさんだぁれ?」

中に居た少女が不思議そうにリンを見上げた
足元には文字の書かれた積み木が散らばっている
故エリプト王国の古代文字
にっこりと微笑むと、リンはしゃがみ込み、積み木を手に取った

「ね、お姉さんにちょっと貸してね」
「いいよぉ」

あどけない声で答えながらも、少女の目は、リンの手元に注がれている
積み木を手に取りながら、一つ一つ、並べ替えると、出来上がった文字を小さく読み上げる

「我求む者なれば汝与える者となれ」 

じっと手元を見ていた少女は、頷くと歌うように答えた

「盟約に従いて勇をなし儀を果たせ」
「ようこそ。マスターの元へご案内します」

さっきまでの様子と一変し、大人びた口調と物腰で、少女は家の奥へと足を向けた

ギルドか、久しぶりだけど、相変わらずだわ

愛用の槍を持ち直し、油断なく気を配りながら後に続く
危険はあるが、情報を仕入れるならば、街のギルドにあたりを付けるのが一番なのだ
ここ、ブリッチヘッドにあるのは、悪名高いシーフギルド
しかし、ギルドにはギルドの掟があり、無闇に人を襲う事もない
手順と義理さえ違えなければ、貴重な情報源となる

アレンは嫌うけど、私はこの方法でずっとやってきたし…
あいつと居ると自分が汚い人間な気がしてくるわ。でも甘い事ばかりでは情報も入って来ないし

相棒の顔が浮かび、言い訳がましく呟く自分に苦笑する

奥まった部屋に通されると、そこには小柄な老婆が一人揺り椅子に腰掛けていた
老婆の足元にちょこんと少女が座り込み、耳打ちをする
頭をなでられると嬉しそうに笑って、リンに手を振り少女が駆け戻って行った

「傭兵かい、昔ながらの作法でここへ人が来たのはいつ振りかねぇ」

老婆はしかし、鋭い眼光でリンを見据えると話し始めた

「今はこの街のギルドも変わり果てたんだよ。人殺しや強奪が当たり前な奴等が台頭しだしてね
 こんな老いぼれには何の力も残っていないが…何を求めてここへ来た?」
「そう…情報が欲しいの。トワイライト滝についてよ」

腰の皮袋から幾ばくかの宝飾品を取り出し、老婆に渡す
受け取りながら、反芻するように老婆が目を閉じて語りだした

「アウグスタのワイン貯蔵庫だねぇ…、ケープ族と言う土着民が居るが、気の良いやつらでな、確か貯蔵を手伝っているとか…
 だが、ここ最近モンスターが活発に動いているとの情報が入ってきてたね…
 あの滝は…アウグスタの奴等も奥には足を入れた事は無いと言うが地下への通路が無数にあるらしいがね…
 最近は戦士が一人、探索に出て行方不明の仲間を探しに潜ったと聞いているくらいだよ
 この対価に出せる情報はこんなもんさね」

老婆が乾いた笑いを含ませながら、リンを値踏みする様に眺めている
対価に見合った情報、確かにこんなもんだろう
リンは頷いて礼を述べ、入り口へと足を早めた
老婆がマスターで無い事は明白で、老婆の背後にあった隙の無い気配の方が気になる
宿まで少し遠回りしてから帰らないと…
リンは何気ない振りで街の中心部へと向かって歩いた


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最終更新:2009年06月04日 06:45