こいのわかれみち-1
扉の開く音が耳に届いた。
クリムスンは反射的に姿勢を整え口元に笑顔を作る。
「いらっしゃい。」
「私よクリムスンおばさま。今日も一日お疲れ様」
店の中に入ってきたのは店の看板娘、ドロシーだった。
「もうそんな時間か」
外を見ると確かにとっぷりと日が暮れている。そういえば腹も減っていた。
どうやら伝票の作成に夢中になってしまって時間の経過に気づかなかったようだ。
商品の在庫を確認するためにカウンタから出ると、エプロンを外したドロシーがにこにこと笑いながら立っていた。
「どうしたんだドロシー、いやに上機嫌じゃないか」
「今日もコリンのおじさまいらしてたわね」
「………。…気づいてたのか」
クリムスンは気まずげな表情で商品の整理を始めた。
「お前は賢く目ざといが、そこが難点でもあるな」
ドロシーはそれを聞くと、ふふっと得意気な笑いを小さく洩らし、エプロンを丁寧に畳みながら口を開く。
「ねえおばさま。どうしておじさまと結婚してしまわないの?」
ガチャン!
ガラスの倒れる音が店内に響いた。
クリムスンの手が滑ってポーションの入れ物を倒してしまったのだ。
ドロシーが慌てて駆け寄る。
「いやだ、大丈夫?怪我はない?」
「…全く…お前は若いね」
駆け寄る姿を見もせずに、クリムスンはぽつりと呟いた。
ドロシーが首を傾げたのに気づいたが、クリムスンはそれ以上何も言うことは無かった。
最終更新:2009年06月04日 06:46