アットウィキロゴ

こいのわかれみち-3


「はははは!往来で告白宣言とは、大物になるねそいつは!」
「笑い事じゃないわよ、お蔭で今日は皆に冷やかされっぱなしでろくに商売もできやしなかったんだから」
大笑いしたクリムスンに、ドロシーはぷぅと頬を膨らませる。
昨日との売り上げを比較して、この差は私のせいじゃないわよ、と突きつけるも、
クリムスンははいはいと軽くあしらいながら店の奥に向かった。
「あんたも変な所でオクテだからね。その坊主を見習って玉砕してくるといいさ」
ドロシーの肩がぴくりと揺れた。
「玉砕だなんて、失礼しちゃう。第一私には玉砕するような相手はいないわ」
店の奥に向かってそう言うと、奥からくつくつという笑い声が返ってきた。
「火の無い所に煙はたたないってね」
「ケイルンさんはそんなんじゃありませんー」
少しだけ頬が赤く染まる。
クリムスンはドロシーから死角の位置にいるにもかかわらず、まるでそれを見たかのような声色で言った。
「だからお前は青いと言うんだ。一度砕けるのを恐れずに当たってみろ、結婚だなんて言えなくなるぞ」
「結婚って、それはおばさまとおじさまのことを言ったのよ」
「同じことさ。じゃあ行ってくる、後は頼んだよ」
ドロシーは頬を膨らませたままクリムスンの背を見送った。
だが扉が閉まると急いで自身も出かける準備を始めた。

クリムスンは今日のように、週に一度のペースで店じまいの後に友人らと出かけるのが習慣になっている。
そしてそういう時ドロシーは、クリムスンを見送った後、ランプと軽い差し入れの品を手にこっそり夜道におどりでる。
フードを深く被りさえすればあとは夜闇が隠してくれて、例え知り合いと擦れ違っても誰も気づきはしないのだ。
ドロシーがフードを脱ぐのは、昼間すら人気の少ない地下水路についでから。
古都でも大半が知らない男の姿を、ランプが照らし出した後だ。
「…さっきの今で来たのか。随分と勇気があるんだな」
汗にまみれ火照った体。その肉体は見るからに鍛え上げられている。
ゆっくりと振り向く男の呆れたような表情が、ランプの光に照らし出された。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年06月04日 06:47