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ソルティーケーブの探索


夜には静まり返る街もまた、先日まで居た賑やかな喧騒にあふれる街を恋しくさせる‥‥
何故だろう、この街は侘びしい
あんなにも嫌だと思っていた、暑く活気あふれるアリアンを思って小さくため息をつく
壁にもたれ、片膝を抱えるようにして床に座り込み、リンはぼんやりと仲間の報告を聞いている

「‥‥まぁ、と言った次第だな」

寝台によりかかるようにしてアレンが大きく伸びをする
アレンが雇い主から仕入れた情報も、マルが住民から聞いた情報も、ごく一般的な噂に過ぎず
リンがシーフギルドから仕入れた情報が一番新しいようだった

「モンスターがおかしいらしい。異様な活動形態と増殖が起こっているようなんだ」
「それは私も聞いたわ。ソルティケーブのモンスターの凶暴化。」
「ソルティケーブ‥‥ケープ族に何かあったのでしょうか‥」

書見台の椅子に腰掛けたまま
マルが祈るような動作で十字を切り
聖典の間に挟まれた封書を取り出し、目礼を捧げて開封する

「ジャキド卿より戴いた書簡です
 ‥‥これによると隣接するトワイライト滝でもモンスターの活性化が見られるとか‥‥」

考え込む様に目を閉じ、祈りの言葉を捧げている姿を見ながら、
信仰ってなんなのかしら‥と、ぼんやりと、リンは思った。
神様に祈る事で力を得るんだから、神様は力なのかしら?
私たち傭兵には神様なんて必要ない。自分自身が力であり、ゆるぎない真実。
でも‥そう言えば神様を信じる傭兵が居たっけなぁ
ぼんやりと昔に浸ってしまうのは、ここが思い出のある街だからだろうか‥‥
通り過ぎただけの、過去の記憶の街‥‥

アレンの気配に緊張が走った
マルも小声で祈りの言葉を唱え始める
リンは何気ない素振りで立ち上がり、窓際に足音を立てて近づいた。

「もぉ、暑いのもやだけど、磯臭いのもやだわ」
「だから磯臭いと言うのは街の方に失礼ですよ」

窓を開け放ち、周りを見回す‥
祈りの朗詠も終わり、発動前の補助呪文の力を左手に蓄え、にマルが調子を合わせる様に揶揄する
街の外に、不思議な静けさが広がっている

「しかし、静かな街だな」

のんびりとしたいつもの口調でアレンが窓際に寄って来た
その口調とは裏腹に、目はいつものアレンとは違い笑いが消えている
‥‥長く傭兵と言う職業に就くと、自分に対しての殺気だけでなく、他者に向けられた殺気であっても
気配と空気の緊張感から敏感に察してしまう
緊張は解かれる事無く、常時危険と隣りあわせであり、そんな生活にも慣れてしまった自分と仲間に
奇妙な安心感を感じていた

「あはは、まーねー。体が鈍っちゃいそうよ。」

ふざける様に槍を振り回す真似事をする
アレンも合わせるかのように磨き上げられた斧を手に取った
殺気の主はどこだろう…
誰に向けられた殺気なんだろう…
緊張したまま、3人は窓際から少しづつ平静を装いながら離れた

「シーフギルドが分裂してるらしいの。古き良きは去れって事みたいよ」

ぼそっとリンは囁く。
アレンの顔がさっと固くなるのが見えた
あぁもう。だから言いたくなかったのに…
リンはどさっと寝台に腰をかけた

「つけられたと言う事はないですか?」
「ないと思うわ。そんなにバカじゃないつもり。」
「リン、危ない橋は渡るなってあれほど言ってるだろ…」

アレンの困った様な怒った口調は、リンを申し訳ない気持ちにさせる
負けるか、と言う反抗心が芽生えるのもこんな時だ
保護者は要らないわ
私は強い
まるで自分に暗示をかけるように、リンは心の中で呟く

ふと、緊張が解かれた
気配が消え、3人は顔を見合わせた

「消えた、ね」
「ああ」
「そうですね」
「この街、結構いろいろ有りそうね」

明日、ソルティケーブでの探索は気を抜けないわ…
念の為交代で休むことに決め
港町での不穏な一日の幕は静かに閉じられるかに思われた

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最終更新:2007年06月05日 16:07