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墓地最下層。
 モンスターたちを何とか退け、そこへ辿りついたフィーナの前には、予想だにしなかった光景が広がっていた。
 直径15ヤードほど、高さ4ヤードほどのホールのような空間。
 周囲の壁には至る所にルーン文字が書き込まれており、また床面は、水路を流れる地下水を利用し、入り口にあったのとよく

似た紋章が描かれている。
 魔力の影響か、床の紋章と壁のルーン文字からほのかな青白い光が放たれており、室内は薄暗い、神秘的な明るさを保って

いる。

 そして何より、部屋の中央。
 そこには、厳重に鎖で封印された、二振りの剣があった。

「何、これ――!?」

 あまりに予想外の、神秘的な部屋の様子に思わず息を呑む。

「表の封印も、この墓地の構成も、全部これを封じるため……? でも、宝物を封じるなら、封印を内側に向けるはずがない…

…封印される必要があったってこと? この剣に――」

 ゆっくりと、罠や術を警戒しながら剣に近づいていく。
 だが、警戒していたようなトラップは一切なかった。
 本当に純粋に、この墓地はこの剣を封印する、そのために造られたらしい。

「綺麗……」

 フィーナが今までに見たどの剣より――そう、彼女の家に飾ってあった、それでも一振り数十万ゴールドは下らないと父が言

っていた精緻な細工の施された儀礼用の剣などより――それは美しかった。

 刀身を構成するのは、鉄ではなく水晶。
 内側に淡い魔力の光を湛え、それがなければ向こう側が透けて見えそうなほど。
 さらにその刀身を、精霊銀と紫金、白金で補強し、柄に填まっているのはそれ自体が高い魔力を持つといわれる稀少石だ。
 片方の剣には紅の稀少石、もう片方は蒼の稀少石。
 蒼の稀少石は、フィーナがつけているイヤリングについているものと同じものだ。

 如何なる美術品にも勝るとも劣らない、しかし純粋な戦闘用の剣。
 そこには、洗練された殺戮兵器だけが持つ、一種の美も兼ね備えられている。

 ふと気づけば、フィーナは思わずその剣に手を伸ばしていた。

 いや、誰も彼女を責められまい。
 これだけ美しい剣、どれほどの聖人であろうとも、無関心でいることはできないだろう。
 そう、例えるならば、倒したモンスターが伝説の武器や防具を隠し持っていたのを発見したときのように。

 剣を繋ぎ止めていた鎖は、フィーナの手であっさりと外れた。
 おそらくそれ自体がある種の術的存在であったのだろう、外された鎖はその瞬間、光となって消え去る。
 瞬間、フィーナのイヤリングの輝石が、その光を反射してわずかに煌く。

 そして、ゆっくりとその剣を手に取った。
 1ヤードよりわずかに短い刀身を持つその刀は、驚くほど軽く、しかし軽く振るとしっかりとした手応えが返ってくる。

「重量制御術……剣本来の重さはそのままに、ただ持ち手にはそれを感じさせない……」

 驚くべき技術だ。
 これだけの名剣だ、どこかに製作者を示す刻印でも入っていないかと剣を調べる。

 そして、その刻まれていた銘に気づいた。

「ヴェイア=ザノス=クランバーク――!? 嘘、これって英雄ヴェイアの……まずい!!」

 慌てて剣を元あったところに戻そうとするが、既に遅かった。
 次の瞬間、凄まじいまでの瘴気が爆発した――

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最終更新:2007年08月19日 23:33