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452 名前: ◆ypgWyZmY9U 投稿日: 2005/08/07(日) 14:24:52 [ nIo6N19c ]

こいのわかれみち-5


真っ直ぐな視線を向けられて、ドロシーは思わず眼を逸らした。
「何者だなんて。私、そんな大層な人間じゃあ…」
「………」
「……ないわ…」
ケイルンは何も言わずただドロシーを見ている。
ドロシーは気まずげな顔をして、視線をそらして地面に向けた。
そして暫く考え事をするように顎に手を当てていたが、やがてゆっくりと視線を戻して口を開いた。
「……もしも貴方の言うように、私の動体視力が常ならぬものであるのなら…
 きっとそれはクリムスンおばさまのおかげよ」
「クリムスン…君の上司か」
ドロシーはケイルンの様子を窺いながら頷いた。
「実際血も繋がっているの。小さい頃からおばさまに連れられて、色々な所で修羅場を経験したわ。
 だからだと思う」
「…それにしても……」
ケイルンの煮え切らないような表情に、ドロシーは苦笑した。
「ケイルンさんも以前は冒険者だったのよね。」
「…随分昔の話だがな。それがどうか?」
「初めてソルティケープ地下8階を制したパーティの話を聞いたことはない?」
ドロシーはどことなく自慢げな表情でケイルンを見上げる。
「三人の有名な男達と一人の女性の伝説だな。…まさか」
僅かに目を見開いたケイルンに、ドロシーはどことなく自慢げな微笑を返した。
「三人の有名な男性の名はコリン、アサス、コジ。一人の女性の名前はクリムスン。
 おばさまがあの三人と協力しあったのは一度だけだと聞くけれど、今でも交流を続けているわ」
「………」
ケイルンは肩を竦めて空を仰いだ。
「…幼い頃からそんな連中と行動を共にしてきたというのか…。
 それならば君のその人並外れた視力も頷ける」
ドロシーの正体が判明したことで、ケイルンのドロシーに対する怪訝な感情はすっかりなくなっていた。
それを悟ったドロシーは、ようやく褒められたことに心から嬉しそうに笑った。

だが、翌日からケイルンのドロシーに対する態度が変わった…というようなことはなかった。
お互いあの一件から特別意識するような素振りは見せなかったし、人々もそうなどと思わなかった。
週に一度ドロシーがケイルンの密やかな鍛練場にひょっこり現れても、
鍛練を中断して彼女を迎え入れるようなことはなく、それまでそれが普通だったのでドロシーもさして気に止めなかった。
ただひとつだけ変わったのは…ある人物がケイルンに妙に懐いてしまったことだけだった。


つづく

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最終更新:2007年12月20日 06:45