アットウィキロゴ

ウルフマンの苦悩


1

472 名前: 470 投稿日: 2005/08/11(木) 17:14:34 [ S90OkTG6 ]
ここは古都ブルネンシュティング。多くの冒険者でごったがえし、商店や露天商が所狭しと
並んでいるが、所々で古都としての趣も感じさせる。
俺はスマグを旅立ち、人が多く集まるというこの地を目指した。数ヶ月前のことである。
最初は古都の西でコボルト達相手に経験を積んだものだ。ウィザード、ウルフマンの技能ともに
未熟であった俺にとって、最初はとても辛かった。だが今ではいっぱしの冒険者だ。
最近は路上強盗団のアジトの探索に明け暮れ、そろそろ新天地を目指していたある日のこと…
「アルパス行きのパーティメンバー募集だよ~!あと2人~!」
叫び声が聞こえる。
アルパス監獄か…。まだ行ったことないな。
噂では、かつては監獄として機能していたものの、現在ではその働きを失いゾンビどものの巣窟だとか。
最も、その宝目当ての冒険者も数多くいる。帰ってこない者もいるという話も…
一人じゃ怖いけどパーティなら面白そうじゃないか、行ってみよう。
「アルパス行きお願いしまーす。」「はーい、よろしくお願いします。」
そこで俺の視線は一人のアーチャーに止まった。
彼女は軽装で細身ながらも、精悍な体つきをしていた。熟練した冒険者のようだ。
よく手入れのなされた、竜の皮でできたとおぼしき鎧を身にまとっている。
その左手にはこれまたよく手入れのなされた弓が握られている。小型ではあるが、
まるでその手の一部かのようであった。
髪の赤い羽根飾りが印象に残る。顔立ちは美しかったが少女らしさもまだ残し、
どことなく寂しさを感じた。故郷に残してきたあの子の面影も…
「よろしくねー!」
ぼーっとしていた俺はふと我に返る、「よ、よろしくお願いします」

通りなれた道を駆け抜け、監獄に直行する。
監獄の中に入ると、嫌なかびくささと、どことなく漂う邪気に武者震いした。
パーティの仲間たちはそれを気に留めていない様子で、さらに奥へつきすすむ。
そして地下2階に到着した。邪気はさっきにも増して強くなっているようだった。
するとさっきのアーチャー、両手で槍を握って強く念じていた
槍は眩い光を放ち、それを地面に突き立てた。
そして弓に持ち代えると、右手には何も持っていないのにこれまた光輝く矢を放っていた。
槍は凄まじい轟音を放ち、敵に対し稲妻を落とす。
あれはなんだ? 新手の魔法なのか?
それに見とれていると、仲間に置いて行かれていることに気づく。
「ま、待ってくれよ~。」とっさに後を追う。
ゴンッ! 鈍い音が聞こえたかと思うと、俺は地面に突っ伏した。
どうやらジャイアントに不意打ちを食らったようだ。
背中と後頭部に激痛が走り、動くことすらできない。
そこにあのアーチャーと剣士が戻ってきて、手際よくジャイアントを片付ける
ビショップはひざまずき祈りを捧げる。「リザレクションッ!」
ようやく意識を取り戻し、立ち上がることができる。
「す、すいません…。」俺にはまだここに来るのが早すぎたようだ。
その後も仲間たちが手際よくモンスター達を片付けるのを尻目に、俺は何もできずにいた。
探索を終えて古都に戻るも、悔しい気持ちでいっぱいになった。もっと修行せねば…。
俺は古都ブルネンシュティングを後にし、オアシス都市アリアンへと旅立った。

2

473 名前: 470 投稿日: 2005/08/11(木) 17:15:32 [ S90OkTG6 ]
ここはオアシス都市アリアン。古都ほどは冒険者が多くないものの活気に溢れていた。
町の人々に話を聞くと、西の砂漠に冒険者が集い狩りをしているらしい。
絶好の修行の機会だ、行ってみよう
途中でミイラや盗賊に襲われながらも、パーティを発見した。
剣士にビショップ、ウィザードの姿が見える。
「パーティに入れていただけませんか?」「いいですよ~」
リーダーとおぼしきビショップが快く受け入れる。
「よろしく~」「よろww」「よろ^^」
何か嫌な予感を感じぜずにはいられなかった。
剣士は腕こそは筋骨隆々としているのの、体つきは貧弱に見えた。鎧も粗末なものであった。
左手には盾ではなく小型の剣のようなものが握られている。
ウィザードはというと、片手に小さな杖を持ち、長い丈のコートを1枚羽織っているのみである。
いくらウィザードとはいえ、そんな軽装ではまずいんじゃ? 砂漠だから暑いのも仕方がないけどさ…
そして嫌な予感は的中した。
周りにモンスターがいなくなると、剣士は北へ、ウィザードは南へ一目散に飛び散る。
そして多くの幽霊鎧、ミイラを引き連れてこちらへ向かってくる。
当然倒しきれるわけもなく、剣士、ウィザードは力尽きる。俺とビショップが懸命に戦う。
「リザよろww」「ウルフさん、ちゃんとタゲとってくれよwwっうぇwっうぇwww」
空しい叫び声が聞こえる。
ビショップが祈りを捧げる。「リザレクションッ!」
彼らは立ち上がると「エンチャおねwww」
するとまた地平線を目指し駆けていった…
これが幾度となく繰り返され、さすがにビショップも堪忍袋の尾が切れたようであった。
「別世界の用事を思い出したのでここで失礼します。」
そう言うと彼らもまた…。「POT買ってくるわww」
ちょ、ちょっと待てよ、俺一人…?
辺りを見回すと幽霊鎧、ミイラの大群!その数あまた!どうやら怒った奴らに包囲されてしまったようだ。
俺はなすすべもなく倒されてしまった。
「・・・、あれ?」
気がつくと敵は全て消え、広大な砂漠にぽつんと座っていた。辺りは静寂そのものであった。
「大丈夫ですか?」
そこには聞きなれた声が。赤い羽根飾りのアーチャーだ。
「助けて…、くれたんですか?」
彼女はにこっと笑った。
「あ、ありがとう。」
「呼ばれてるので行かないと。またねっ。」
そう言うと彼女は地平線の彼方へと消えていった。砂漠に再び静寂が戻る。
そうか…。また世話になってしまったんだ…。
俺はその後より一層修行に励んだ。


ここは古都ブルネンシュティング。以前にも増して人々で溢れているようであった。
世間では「だめおーん」とか「さーばー強化しる」などという声をよく聞くが、俺には関係のないことだ。
人々の叫びが絶え間なく響き渡る中、所狭しと並ぶ露店に注意深く目を通す。
「アルパスB3行きPT募集だよ~!あと3名!」
聞き覚えのある声が響き渡る。行ってみると赤い羽根のアーチャーの姿が。
「アルパス行きPTお願いします。あ…っとこの前はどうも」「は~い」
「よろしく~」「よろ~^^」
そこの一人の剣士の姿に目を奪われた。彼はかなり上等そうな鎧を身にまとっている。
そして右手には静かに脈打つ青色の光を湛える剣があった。
左手の盾は小型なものの、ある程度の殺傷能力を持ち合わせているようである。
…っとそろそろ出発のようだ。はたまた見慣れた道を駆け抜け、アルパス監獄B3へ。
監獄の地下3階ともなると、かつて味わったことのないような邪気が襲ってくる。
ここで死んでいった罪人達の怨念、はたまた冒険者に踏みにじられた怨念だろうか。
敵を倒しながらさらに奥に進んでいった。フロア中央の牢屋の一部を狩場として定めたようだ
修行を積んだだけあってここの敵とも互角に戦えるようになった。
しかし今度は剣士の動きに見とれていた。
敵を倒すと、その懐から手際よく金銭や所持品を奪っていく。
彼は剣士というより、むしろトレジャーハンターといった印象である。
床に散らばったアイテムも慣れた手つきで回収していく。世間では「ぶーん」などというようだが、
俺には関係のないことだ。
数時間狩り続けた頃だろうか。釣りに行った剣士が血相を変えて逃げてきた。「助けてくれ~!」
その背後に目を向けると、そこには通常の1.5倍の背丈があろうかというキアンクロプスの姿が。
奴からはとてつもない怒りのようなものを感じた。
俺と剣士は奴に向けて突撃する。剣士は小さな盾ともいえぬ盾で攻撃を受け止めようとするも、
奴の強烈な蹴りで壁に跳ね飛ばされた。俺も続いて奴に爪をつきたてるも、
鋼鉄の体の前にびくともしない。
ふと目を開けると逃げ惑うアーチャーとそれを大きな盾で必死にかばうビショップの姿が。
…このままでは仲間が危ないっ

3

474 名前: 470 投稿日: 2005/08/11(木) 17:16:12 [ S90OkTG6 ]
とその時である。体の中に煮えたぎる何かを感じた。あの時と同じ感覚である。故郷が襲われた時の…。
俺は叫ばずにはいられなかった。と思うや否や、耳を劈く(つんざく)ような咆哮を上げた。
「ウワァアアオオオォオオオッッ!!!」
次の瞬間、体中にとてつもない力が湧いてきたのを感じた。同時に身が羽のように軽くなり、敵の動きまでが
手に取るようにわかる。どうやら野生の研ぎ澄まされた感覚を手に入れたようだ。
…そうか、これだ! 俺は直感した。ビーストベルセルク、厳しい修行を積んだウルフだけが
使うことを許されるという奥義…。
俺は逃げ惑う仲間の前に立ちはだかり、奴の蹴りを掻い潜って得意のチェーンドクローを浴びせる。
ベルセルクのお陰で、いくらかは奴の体に傷をつけることができたようだが、奴は臆することなく襲い掛かる
ドスッ! 奴のパンチが俺の腹に命中した。たまらず吹き飛ばされてうずくまる。
そして目の前には奴の足が…。もうだめかっ。
…「待てよ、お前の相手はそいつじゃない、この俺だ。」
倒れていたはずの剣士が起き上がり、低くも辺りに響く声でそう言った。
剣士は先ほどとは異なり大きな盾を構え、胸を張って奴を「挑発」しにかかった。
奴の足は俺の頭上寸前で止まり、剣士に矛先を変え動き出した。
今までの欲深い目つきとはうってかわって、真剣な中にも優しさを感じる、そんな眼差しだった。
その隙にビショップは倒れた仲間を起こし、剣士を援護する。
顔を真っ赤にし、頭から煙を上げた奴は、剣士をひたすら蹴り続けていた。
剣士は大きな盾と強靭な腕でその攻撃を受け止める。
「さぁ、今だ!」彼の瞳がそう訴えているようであった。
俺は再び咆哮を上げて気合を入れなおすと、一目散に奴に向けて飛び掛る。アーチャーも続けて眩い矢を放つ。
奴は全身傷だらけになり、稲妻や矢を何十発と食らいながらも剣士を蹴り続けていた。
このままでは彼が危ないっ!そう思うや否や、奴の体が少し傾いた。
その隙を逃さず、喉元に噛み付きチェーンドクローを浴びせる。
ドシーーーン!!奴は力尽き倒れた。その巨体がとてつもない地響きを作り出す。
「オマエラ・・・マサカ・・ソウハ・・サ・・セル・カ・」
巨体はその主を失い、もぬけの殻となった。

「お前がいなかったら俺は死んでいた。命の恩人だよ。」
剣士がこう言った。俺は照れながらも答えた。
「君がいなかったら俺はおろか、このパーティが全滅してたさ。」
「俺は、お前が奴の気を引きつけるのを見て、自分も何かしなきゃ、と思ったんだ。
そうだ、この前手に入れた物だがぜひ使ってほしい。」
彼はそう言うと、荷物の奥から格闘用の爪を取り出した。見慣れぬ品だった。
虎の爪のようにも見えるが、何か禍々しさも感じる。
俺は爪を受け取ると、早速身に着けてみた。
小さいがよく手になじむ。敵の急所を狙うには最適なようだ。
「これは… 本当にいいのかい?」
「ああ。お前のような持ち主なら爪もきっと喜ぶだろう。
これからは欲に目をくらませず、仲間の助けになろうと思う。」
狩りを終え、古都への帰路につく。疲れ果てたはずだが、その足取りはなぜか軽かった。
そうか、俺はもう独りぼっちじゃないんだ。
夕日を浴び、頼もしくなった仲間達の背をいつまでも追いかけていた。


     -   ひとまず完   -

<前   ▲戻   次>

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年07月07日 21:29