グローランサの異界
グローランサには我々の住む“あたりまえの世界”、いわゆる物質界の他に、《異界》
と呼ばれる世界が存在する。この魔術的世界は3つに大別され、我々の使う魔術は“どの異界から力を引き出すか”(あるいは引き出さないか)によって4種類の魔術体系、すなわち「神教」、「呪術」、「魔道」、「悟法」に大別されることは広く知られる。…
――スロントスの神知者、サルベニウスの「ルーンと諸力に関する考察」より
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グローランサは魔術の世界です。
グローランサではだれでも魔術を使うことができますし、太陽はイェルムという神であるし、風が吹く、水が流れるといった自然現象もすべて魔術的なものなのです。そこで
ヒーローウォーズの解説をはじめるにあたり、まずは魔法ルールはどうなったのか? といったことからお話したいと思います。
さて、グローランサにおける魔法というのは、ほとんどが《異界》
(Otherworld) の力を現実に実践化させる技なのだそうです。したがって、HW
における各魔術体系の魔法のはたらきを理解するには、この《異界》というものについて理解するのが近道となるでしょう。
RQのサプリメント「グローランサ」の「グローランサブック」には「グローランサの六界」という記事があり、これがグローランサの世界構造を規定するおそらく唯一の(ゆえに権威ある)文章となっていました。この「グローランサの六界」では、グローランサは6つの界(内世界、上方世界、下方世界、外方世界、神界、精霊界)から成るとされ、それぞれの世界について簡単に解説されていました。
ヒーローウォーズ
では、その区分の仕方がゲームルールに則し改められました。すなわち、グローランサは4つの界(内世界、神界、精霊界、魔術界)から成るとされ、英雄界(上方世界、下方世界、外方世界)は神界に属すということになりました。内世界/物質界に対して3つの異界は、それぞれ3つの魔術体系に対応しています。
個別の魔法ルールについてもいずれ解説していきたいと思いますが、まずは「グローランサブック」も参考にしつつ、「グローランサの4つの界」と4つの魔術体系について概説し、さらに「Glossary」よりこの異界/魔術体系の関連用語について解説してみたいと思います。
なお、「ワールド・ルーン」はwww.glorantha.comのものを使用させていただきました。
内世界
物質界(Material
World)、俗界(Mundane World)、人間界(Human
World)、地表世界(Surface World)、etc.
と呼び方はいろいろありますが、人間(や古の種族)が住む世界を、とりあえずここではジェナーテラブックに沿って内世界(Inner
World)と呼ぶことにします。通常、「グローランサ」と言えばこの内世界を指します。
内世界は「時」の支配する世界です。この世界の住人は定命の者です。内世界から外へ外へ(あるいは上へでも、下へでもかまいませんが)と移動していくと、“英雄界”に入ることができます。英雄界は神界の一部です。
異界が内世界とどのような位置関係(というのもおかしいですが)にあるのかはよくわかりませんが、異界を《向こう側》 (Other Side)
と呼ぶところからすると、おそらく内世界と重なるように存在しているのではないかと思われます。
ヒーローウォーズ における主な冒険の舞台は内世界になります。
Keywords for Inner
World
ルーン(Rune):異界の力に接触するための魔法的なシンボル。
異質な世界の修正(Alien World
Modifier):異質な異界にいる時に術者にかかる抵抗をあらわす修正。たとえば、神の信者が精霊界や魔術界にいるときにかかる。
異界の障壁(Otherworld
Barrier):異界へと入るためにうち破らねばならない抵抗。通常、その強さは10 3以上。
力ある場所(Power
Spot):通常より異界と内世界が近く、異界の障壁が弱いところ。たとえば神の聖地、精霊のたまり場など。
偶然異界へ渡ってしまう(Accidental
Transition):力の場などを通って偶然に内世界から異界へ移動してしまうこと。
異界魔術(Otherside
Magic):実行のために異界を旅することが必要な魔法能力・儀式。たとえば《蘇生》など。
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神界―神教
神々が住まう、“不変にして、かつ常に移ろう”( Eternal and
Ever-Changing
)世界。大いなる神々、その子供たち、その忠実な臣下が住んでいます。この世界は「時」到来以前の、世界の創造に関わった数々の出来事が今でも繰り返されています。
かつての(神話時代の)グローランサのイメージを反映しているため、神界には内世界と似たような地形が広がっています(あるいはそう見えます)。オーランス神殿の支配する領域に出た人間は、険しい山脈、深い森、逆巻く雲、たなびく雷鳴などを目にすることになります。
3つの異界の中で最も頻繁に訪れられるのが神界です。というのは、神々の信者は、大聖日の儀式において神界に移動して礼拝儀式を行うことになるからです。
神界の地理はおおまかに内世界に対応しています。たとえば、オーランスの嵐の領域から北へ北へと旅していけば、やがてイェルム神殿の文明化された領域に出ることになります(アーカットは、こうした英雄界/神界の地図を作り、ヒーロークエストに役立てたと言われています)。
ヒーロークエストにおいては、まず異界の障壁をうち破って神界に入り、適切な神の領域から「クエスト」を行うことになります。神界は「時」が到来する前の「時」が存在しない世界なので、同じ神の領域でも違う時代に出ることもあります。たとえばオーランスの領域には「黄金の時代」、「嵐の時代」、「大暗黒」の世界が含まれています(「緑の時代」にはオーランスがいなかったので、訪れることはできません)。
神界を源とする魔術が「神教」です。神の行いを再現することで内世界に影響を与える、というのがその原理です。
Keywords for Gods Plane / Theism
供犠(Sacrifice):価値あるものを神に捧げることで見返りに魔法を得る、信仰形態の一種。信仰魔術で用いられる。例としては、羊を屠って捧げる、食事を神に供える、など。
神界(God
Plane):神々のすまう異界。神界はさまざまな神殿の「領域」から成る。
英雄界(Hero
Plane):神界のなかで最も大きく、最も簡単に接触できる領域。神殿の領域や、内世界との境界部分(上方世界、下方世界、外方世界)など。
領域(Realm):神界のなかで神殿が属する部分のこと。
神殿(Pantheon):共同信仰を共有する神々の一群のこと。例:オーランス神殿、大地神殿、イェルム神殿など。
大神(Great
God/dess):通常、神殿の主神である超越した力をもつ神/女神のこと。大神はたくさんの相と大きな影響力を持つ。オーランス、アーナールダ、イェルム、カイガー・リートール、マガスタ、赤の女神など。
神(God/dess):神界にあり、供犠を受ける存在。
小神(Petty
God/dess):神と呼ばれるには弱小だが、直接信仰されている存在のこと。
相(Aspect):あたかも神のように信仰される、大神の「一部」、「役割」のこと。 例:大神オーランスは“冒険者”、“雷鳴轟く”、“神々の王”などの相を持つ。
俗信仰(Communal
Worship):個々の神々ではなく、神殿全体を信仰する共同体の信仰形態。RQにおける「平信者」に相当する。
神性介入(Divine
Aid):共同信仰により、神の助けを求めるもの。
入信(Initiation):一柱の神のみを信仰する信仰形態。時間の30%を捧げねばならない。入信者は神力のみに接触できる。
帰依(Devotion):一柱の神に身を捧げる信仰形態。時間の60%を捧げねばならない。帰依者は神力と神技に接触できる。
神力(Affinity):“類縁魔術”。神や英雄が入信者に与える魔法的能力の、おおまかなくくり。神力の中には神技が含まれる。 例:死の神フマクトの神力は、「死」、「戦い」、「名誉」である。
神技(Feat):供犠の見返りとして帰依者に教えられる特殊な魔法。神話の中で神々の行いを反映している。神技は神力の一部として、あるいは独立して教えられる。例:フマクトの「戦い」の神力には《大いなる一撃》、《盾砕き》、《武器砕き》、《鉄の呪鍛》、《神剣の一撃》の神技が含まれる。例:フマクトの英雄カルト、インドロダール・グレイドッグは《ゾンビ解放》の神技ひとつだけを教えている。
英雄カルト(Herocult):英雄を神として崇拝するカルト。
下位カルト(Subcult):神の重要でない相を信仰するカルト。
奥義(Secret):神の最も最奥の性質にもとづき与えられる魔法能力。強力な魔法的能力を得るに至った帰依者にのみ教えられる。 例:治癒の女神チャラーナ・アローイの奥義は《他者の復活》である。
英雄の降臨(Heroforming):信仰する英雄をよびおこし、自らがその英雄/神の化身となる儀式。通常は英雄カルトの奥義である。
ヒーロークエスト(Heroquest):神界へのクエストのこと。通常は、神話を再演することで英雄に魔法的能力をあたえる。
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精霊界―呪術
精霊界は物理的な現実性を有しない世界で、形のない灰色の霧のような世界です。この世界に住むのが肉体を持たない精霊たちです。精霊界はまた、失われた魂が放浪し、挫折した夢が彷徨い、悪夢が踊り狂う世界でもあります。
精霊界には目印となるようなものが無いので、ここを訪れるのは非常に危険です。この世界を訪れるのは、精霊を探す祈祷師くらいのものです。祈祷師は〈精霊界移動〉(Spirit
World Travel)という技能を持っており、これを持たない一般人が精霊界から戻るのは非常に難しいでしょう。
祈祷師は、精霊界で捕まえた精霊を「呪物」に封じ込めます。祈祷師は呪物の精霊を使役し魔法を使います。また精霊信仰をしている人々もこの呪物を祈祷師にもらい、必要なときに精霊を解放して魔法を使います。また精霊と融合したり、憑依させたりすることで魔法的な力を得るという方法もあります。
Keywords for Spirit World / Animism
恍惚信仰(Adoration/Ecstatic
Worship):精霊を感じるために、意識を変成させる信仰形態。通常、大勢で集まって歌を歌ったり、踊りを踊ったり、ときには幻覚剤を服用したりする。
精霊界(Spirit
Plane):精霊たちのすまう世界。
大精霊(Great
Spirit):恍惚信仰を受ける代わりに、精霊を与える精霊界の存在。たとえば、ワッハやアイリーサ、コーラートなど。
精霊(Spirit):精霊界にある存在。最も普遍的な精霊は、感情精霊(Passion
Spirit)と技能精霊(Skill Spirit)である。
祈祷師(Shaman):精霊界を旅し、精霊を扱うのに長けた、精霊信仰における魔術の実行者。
聖者(Holy
Person):生まれつきの素質として精霊への感受性が強く、そのために魔法的能力を得た者。通常、伝承では祈祷師か聖者のいずれかを持つ。
伝承(Tradition):精霊信仰の魔法を使う知識の一体系のこと。既知の精霊(友好的な精霊、敵対的な精霊)に関する知識、精霊との接触の仕方、なだめかた、屈服させる方法、身の護り方などの知識。例:プラックスではワッハとアイリーサの伝承が中心的。
祖霊崇拝(Ancestor Worship
Tradition):家族や一族の先祖を崇拝する伝承。祖霊崇拝は祈祷師よりも一家の長によって指導されることが多い。
専門伝承(Functional
Tradition):癒し手、憑き物おとしなど、職業に焦点をしぼった伝承。聖者か祈祷師に指導される。
地域伝承(Local
Tradition):特定の地域の精霊を崇拝する伝承。
スンチェン(Hsunchen
Tradition):動物のトーテムを崇める伝承。動物の精霊と融合し、動物に変身することができる。通常スンチェンは祈祷師に指導される。
融合(Integration):精霊を術者に結びつけること。精霊と融合することで、宿能を得ることができる。
宿能(Talent):精霊と融合することで得られた魔術的な能力。
魔精(Fetch):祈祷師となるさいに覚醒する精霊の導き手(あるいは祈祷師の一部)。魔精は祈祷師を助け、精霊界との橋渡しの役割を果たす。
憑依(Possesion):精霊が肉体に入り込み、キャラクターに影響を与える状態。潜伏憑依(hidden)(病の精霊など)と支配憑依(dominant)(ゴーストの憑依やチャネリングなど)がある。
魂呼び(Channeling):強力な精霊を自分の肉体に憑依させる儀式。たとえば、プラックスのワッハの伝承では、部族の祖霊を呼び出し憑依させる方法が知られている。
呪物(Fetish):精霊を封じ込めた物体。持ち主の意図で魔法を使わせることができる。祈祷師から一般の人々へも与えられる。
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魔術界―魔道
魔術界はエネルギーのパターン(=ルーン?)が広がる世界です。神知者はこの魔術界を「六界」にわけて考えていました。すなわち〈見えざる神〉、〈喜び〉(Joy)、〈慰め〉(Solace)、〈聖人界〉(Saint
Plane)、〈練達界〉(Adept
Plane)、〈地獄界〉(Hell)です。通常の魔道士が関わるのは達人界です。なお、〈喜び〉に到達したのはフレストル王子のみ、〈見えざる神〉はマルキオンだけだと言われています。
通常、魔道士たちは魔術界を訪れることはありません。魔道士は「力の門」を開き、魔術界に広がる特定のエネルギーパターン=交点と接触し、これと術具を結びつけます。
魔道士は交点の魔術パターンに「力の門」を通じて接触し、そのパターンを内世界に呼び込みます(プログラムをダウンロードして使うみたいな感じでしょうか?)。その方式が「呪式」であり、魔道書に記された通りに適切に行わなくてはなりません。
Keywords for Magic Plane / Sorcery
崇敬(Veneration):預言者や聖人を通じて、より高次の存在である見えざる神を礼拝する信仰形態。
魔術界(Magic Plane):
三つの異界のひとつ。魔術界は幾多の「交点」から成っている。魔道界(Sorcery Plane)、達人界(Adept
Plane)、見えざる基準(Invisible Measure)などとも呼ばれる。
法界(Law
Plane):魔術界のなかにある、通常到達不可能な、見えざる神の知性の宿るところ。『慰め』(Solace)とも呼ばれる。
交点(Node):魔術界の中にある、聖人や祖師などの心霊が宿る場所。達人は交点から魔術パターンを引き出すことで呪式を投射する。
教会(Church):マルキオン教の宗教的分派のこと。中心的な聖典(『不変の書』(Abiding
Book))を共有するが、それぞれが独自の聖職位、教義などを持ち、何世紀にも渡って互いに争い続けている。
預言者(Prophet):教会を開いた聖人。
聖人(Saint):あるマルキオンへの信仰を典型的に示し、死後崇敬されるようになった人物。
達人(Adept):魔道における熟達した魔術の使い手のこと。達人は魔術師と魔道士にわかれる。
魔術師(Wizard):教会の教団に属する達人のこと。
魔道士(Sorcerer):教会に属さない学院や教団に属する達人のこと。
教団(Order):聖人などを崇敬する組織。教団は二つに大別できる。ひとつは教会教団であり、教会の一部である。もうひとつは魔道教団であり、祖師を崇拝する魔道士たちのグループである。
教会教団(Religious
Order):教会に属する教団のこと。下位教団(一般の会衆と牧師がメンバー)と、上位教団(魔術師が中心)に分けることができる。
魔道教団(Sorcerous
Order):魔道士の祖師を持ち、教会に属さない教団のこと。ザブールの魔道教団など。
力の門(Portal of
Power):交点と接続するために魔術師/魔道士の用いるアイテムや儀式のこと。
術具(Talisiman):呪式の交点と接続するために用いられる物体。呪式を投射するには、必ず術具に触れていなくてはならない。
呪式(Spell):魔術界の交点に接続して力を呼び出す魔法的能力。呪式は魔道書に記されている。
魔道書(Grimore):呪式や祝福の記された書物。通常教団が所有する。
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悟法
悟法の実践者は「この世界は幻である」という態度を取ります(「色即是空」とでもいうのか)。また他の3つの異界も同じく幻の世界であるとし、関わるのを避けます。彼らが異界へ赴くのは、修行の一貫として自らを試すときのみです。
悟法で使われる魔法的能力は単に“力”(Power)と呼ばれます。これは(おそらく)「幻である世界」を自分の意志によって変成させる力なのだと思われます。
Keywords for Mysticism
訓練(Asceticism):悟法の哲学を実践するために行われる、修行、告解、克己などの「非」信仰形態。
誘惑の園(Garden of
Temptation):悟法が3つの異界をひとまとめに呼ぶ呼称。
正信派(Orthodox
Mysticism):世界から解脱することで超越を達成しようとする悟法の一派。通常PCにはならない。
実践派(Manifest
Mysticism):世界と一体となることで超越を達成しようとする悟法の一派。拳道は実践派の一派である。
道(Path):超越へ至るための教え。老師の開いた「道」は、いくつかの流派に分かれている。
悟りを開いた老師(Founder):悟りへの道を開いた人物。照道の師(Enlightened
Master)とも呼ぶ。
(老師の)哲学([Founder]
Philosophy):老師の開いた信念と教え。
道場(Dojo):悟法の教えられる場所のこと。
門人(Student):流派で修行する者。
“力”(Power):流派に教えられる魔法的能力。
《反》(Counter):内世界の事象(攻撃など)に抵抗したり、無視したりする、防御的な悟法の“力”。通常は正信派が使用する。
《否》(Refute):《反》の一種。相手の能力を使えなくするもの。
《撃》(Strike):敵に攻撃する悟法の“力”。通常実践派が使用する。また、ルール的に、悟法などで用いられる特殊な魔法的能力(例:壁を歩く)なども《撃》として扱う。
バランス(Balance):心・技・体の修行レベルのバランスをはからねばならないという、悟法における必要条件。
啓発(Illumination):キャラクターの信仰/精霊/魔道の宗教的繋がりを悟法的なものにおきかえる、しばしば予期せざる哲学的/感情的な転換。
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最終更新:2008年02月16日 06:12