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破壊するもの、灰の王、イェルムの槌
1.神話と歴史シャーガシュは古のダラ・ハッパの戦神であり、イェルムの忠実な息子の一柱である。イェルムの治世のあいだ、シャーガシュは父の敵どもを滅ぼそうと起こった闘いすべてに駆けつけていた。ウーマトゥム(Umatum) が天空を引き裂いたときには、シャーガシュは彼を天から放り落とした。“水の母”が娘オスリラの復讐のために吠え猛ったときには、シャーガシュはその盾で彼女を叩き伏せた。だが、イェルムは闘いを止めるようシャーガシュに命じた。敵どもが「イェルムの正義」の力で改心するやもしれぬと考えたのである。忠実なシャーガシュは、それに従って引き下がった。そうして彼は、ただ敵たちについて学び、新たな闘いに備えていた。 優れた息子の言葉に耳を貸さなかったばかりに、イェルムは殺害された。シャーガシュはイェルムなき世界を統治した。彼は「良き土地」を蹂躙する怪物、悪霊、異邦者たちを貪り喰った。彼は“雄羊の神”(Ram God) を打ち負かし、その鉄でできた死骸を北に置き、北方よりきたる氷河を砕くために使った。彼は“偽りの太陽”セデーニァ (Sedenya) を天から放り落とした。彼は、エレマルス(Elemals) が盗みを働きに来るとそれを不具にした。彼は“残虐なる神”(Cruel God) 、“身勝手なる神”(Selfish God) 、そして“貪り喰うもの”(Devourer) と戦った。そして彼は従う全ての人々、愛する全てのものさえも破壊し、アルコスの「封殺の地」(エンクロージャー)へと置いたのである。 ついに、シャーガシュは「全ての善なるものの堕落」である、カツクルトゥム(Kazkrtum)と相対した。カツクルトゥムは「封殺の地」へと入り込むために、シャーガシュによって殺されることを望んでいた。だがシャーガシュは全く賢き神であった。その偉大な力をもって、彼はカツクルトゥムをバラバラに引き裂いた。それから彼はその破片を埋め、偉大な魔術によってそれを護らせたのである。 全世界がついに浄化されると、シャーガシュはビジーフ・イェルムの下へゆき、世界を修復するよう命じた。“不滅の神”は覚醒し、シャーガシュに死せるもの全てを世界に戻すよう命じた。かくしてシャーガシュは世界へ帰還し、全ての生命もそれに従って世界に戻ってきた。またもシャーガシュはイェルムの正義を保ち、守ったのである。 シャーガシュは当初ダラ・ハッパの第一の軍神であったが、コルダフ帝の御代(訳注:在位ST.221~247)に、カルトは最盛期にあった政治的な力と名声の多くを失った。ダージーンへ対して行った狂戦士的な争乱によって、カルトは続く皇帝たちの不興を買った。シャーガシュ信者が竜族との戦い(訳注:ドラゴンキル戦争)で甚大な被害を被ると、これを機に皇帝はポーラリスを帝国の軍神としたのだった。 シャーガシュは信者に確信を与え、彼らを救う。シャーガシュ信者はみな、自分らをカツクルトゥムの不浄と不正な統治よりシャーガシュが護ってくれること、魂は常に神の偉大な意志と共にあることを知っている。 「赤き道」の戦士たちは、彼らの中で最も優れた者は、「血色の惑星」、すなわちシャーガシュの大いなる天空の宮殿へと昇ることを知っている。そこで英雄たちはシャーガシュを喜ばすために相戦い、ふたたびイェルムがシャーガシュを解き放つ日を待ちわびているのである。その時が来たれば、彼らは軍を召集してふたたび世界を破壊するだろう。ときに英雄は信者によって血色の惑星より喚び降ろされる。アルコスにある連隊のいくつかは、特定の英雄への信仰を中心としたものである。英雄の位に達しなかった赤き道の戦士たちは、地界へと赴き、貪り喰われ、再びシャーガシュ信者として生まれ変わる。 「緑の道」に従う者たちは、彼らがみまかる時にシャーガシュが迎えに訪れ、その魂を安らかに「封殺の地」へと置いてくれることを知っている。死体は一年の聖なる期(sacrid period)に荼毘に付され、儀式の中でシャーガシュを呼び起こして魂を死者の地へと送る。そこで全ての魂はビジーフ・イェルムにより裁きを受ける。正しき者は、次の破壊と再生のサイクルまで地界の封殺の地に留まる。正義を欠く者はシャーガシュによって貪り喰われる。彼らの精神は破壊されるが、そのエッセンスは死体の灰を通して大いなるサイクルへと再び加わるのである。 シャーガシュの像は、古代の木彫りや粘土細工では、しかめ面をし棍棒を持つ男として表されている。時代が下り、葦製の敷物に描かれた絵では、シャーガシュは長髪と長い髭を生やし、強靱な体格の赤い肌の男として描かれている。そこではシャーガシュは逆巻く雲の間に姿を現し、手には稲妻と天空の槍を持っている。彼はまた炎のイメージ、数多の人間を貪り喰う姿、怪物、大きな物体としても表される。現代ではルナー様式によって、シャーガシュは四本の腕を持ち、舞踏を舞う姿で描かれる。
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シャーガシュは多くの名を持つ神なり以下は誰もが知る一般的な名である。
雷を呼ぶもの―最初の反逆者ウーマトゥムが天に乱入したとき、それを地へ落としたのはシャーガシュだった。シャーガシュはウーマトゥムを二つに畳むと、その嵐の力を奪い取った。それからというもの、ウーマトゥム一族の反逆者どもは真っ直ぐ立つこともできず、よたよたと歩くことしかできなくなったという。 シャーガシュは多くの名を持つ神なり以下は聖者のみが知る秘された名である。
小杖にして石―シャーガシュは豊穣の力を持つ。ちょうど藪火事のあとに新芽が芽吹くように。
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2.カルトの生態“破壊するもの”シャーガシュは、ダラ・ハッパ神殿の嵐と戦の神である。ダラ・ハッパ人の多くはシャーガシュをなだめるだけだが、アルコスでは「万物の王」として彼を信仰している。血色の惑星にある彼の宮殿から、シャーガシュは戦さと破壊を轟きのように送り、地界にある彼の領土では、シャーガシュは死者の再生を導いている。彼の社はダラ・ハッパ中の太陽神殿で見ることができる。アルコスと古ヘンジャール地方では、「封殺寺院」(エンクロージャー)と呼ばれ大寺院が幾つか存在する。アルコス人は、イェルムに解き放たれたときにはダラ・ハッパの敵を滅ぼすことに同意している。社では《粉砕》を教えている。 アルコスの地はシャーガシュにとって常に聖なる地であり続けてきた。彼の霊気は封殺寺院の中で感じられる。中でも最大の寺院は、アルコス市そのものである。万物に遍在する畏るべきシャーガシュの存在に対し、アルコス人は“破壊するもの”を崇める。彼の精神は彼を崇める民の中に織り込まれる。信者は、生命活動の中のほとんどあらゆる事象をシャーガシュの浄化の炎の燃料と見なす。 ダラ・ハッパの人々は、シャーガシュに貪り喰われないために彼を信仰している。古ヘンジャール(Henjar)地方では、多くの者がシャーガシュを祖先神、守護神として信仰する。アルコスの住民(都市の最奥より響き続ける古代のドラムの音を聞ける者)は、皆なんらかの形で彼を信仰している。戦士たちは、シャーガシュを喜ばすため、彼ら自身の魂を奪い去ってくれるよう祈願する。シャーガシュはグローランサ全土から間接的な貢ぎ物を受け取っている。戦さと破壊は彼のものだからである。 司祭、ルーン王、王たちは戦士たちを戦闘へ送り出し、生者と死者を結びつけ、世界に正義が残っている事を確認するために、シャーガシュの神秘を舞う。 シャーガシュの信仰は高度に儀式的である。一般人は他の生活に関わる神とともに、守護の神としてシャーガシュを礼拝している。高位の信者は二つの道に従って編成される。 「赤き道」は“破壊者の舞い”であり、世界を貪り喰い、封殺の地の中にある善きものに全てをもたらすシャーガシュの仮面である。これは戦士の道であり、封殺の地の外界と関わる者の道である。赤き道の大司祭は都市を戦争へ導き、外界との関係を監督する。この大司祭は「赤き王」として知られる。 「緑の道」は“灰の王の舞い”であり、封殺の地の内にある者全てを守るシャーガシュの仮面である。この道にはシャーガシュの息子であり、都市内部の問題を解決し農地の豊穣を維持するアルコーの道が含まれる。「緑の王」は緑の道の全ての下位カルトを統べている。これは行政官、司祭、そして神秘的な「十一者」(緑の王の忠実な部隊兵として知られる)の辿る道である。
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我、ダージーンの簒奪者どもを憎むしばしばアルコス人は集団で破壊的な大略奪行を行い、ダージーンの人々を殺戮し、物品を破壊する。 彼らの行動は神話的には正しい。『イェルムの輝ける再昇』では、ダージーン人は天蓋帝マナルレイヴァス(訳注:小暗黒時代の皇帝)の御代に滅ぼされた古代の不浄な都市、ニヴォロスの破廉恥漢たちの子孫であるとされているのである。
「……かくて好色なるアオサギの女神シュール・エンスリーブ、民をしてマナルレイヴァス帝とダラ・ハッパの万象は取るに足らぬ、邪悪ぞと公言させるに至った。イェルムのフッツストールを模したジグラットで、きゃつらは自身の「皇帝」を選出したのである。 (『イェルムの輝ける再昇』、30ページ)
「封殺の大寺院」には、ダージーン人の生皮と骨を使って作られた巨大なドラムが置かれている。ときに、シャーガシュの精霊がざわめく時には、司祭、また通行人さえも太鼓を叩くようにせき立てられる。 |
3.世界におけるカルトアルコスの人々にとって、シャーガシュは宇宙の中で卓越した位置を有している。彼は燃え盛る太陽であり、破壊神であり、雷、浄化する者、激怒する父、そして死の神である。シャーガシュは世界が堕落するやそれを破壊し、善きもの、純粋なるものに新たな生命を与える。シャーガシュは全ての風、炎、世界中の戦さの中に現れるが、アルコスがその特別な領土である。 ルナー帝国の勃興により、帝国の第一の軍神はヤーナファル・ターニルズとされるようになった。シャーガシュは今もアルコスの全住民、ライバンスにある皇帝親衛隊の一連隊、ときに他のダラ・ハッパの兵士に信仰されているが、アルコス人のみからなる僅かな連隊をのぞけば、現在では戦略決定権と軍団指揮権は全てターニルズの士官の手にある。甚大な被害をもたらした「ジャニソールの反乱」にシャーガシュ信者が加わったことは、赤の皇帝にシャーガシュのイェルムへの反乱を思い起こさせることなった。以来、赤の皇帝はアルコスとシャーガシュのカルトの管理に細心の注意を払っている。 |
シャーガシュ、かくの如きものなり:貪り喰うもの、 『イェルムの輝ける再昇』 |
4.入信者破壊の館の住人
成人に当たり、アルコスの男子は“守護者”シャーガシュのカルトへPOWを1ポイント捧げて入信する。彼らは神話を語ることでシャーガシュの様々な道についての理解を示し、アルコーの司祭の審問で自らの功績の証だてねばならない。 信者はその生涯のほとんどを平和に送るが、危難の際には仕事をなげうち、メイスを手にアルコス防衛の栄につらなることになる。 精霊呪文:《シャーガシュの護り》、《筋力》、《治癒》、《鉄の手》、《発火》、《光》。 雷鳴者の舞い (赤き道)
彼らは「赤き道の戦士」のシャーガシュの入信者である。赤き道の戦士は“破壊するもの”の激怒に満たされており、シャーガシュ信者でない全ての者に恐れられている。 また彼はシャーガシュの様々な道と、その神話についての深い知識を証だて、その勇気と服従を示さねばならい。これは“戦士の舞い”に参加することで示される。この儀式の中で戦士たちは集い、舞踊を舞い、太鼓を鳴らし、かの神の醸した血を飲む。その中で司祭は“破壊するもの”を喚び起こす。シャーガシュはその存在を戦士の一人の意志を奪い、僚友を徹底的に攻撃させることで示す。その後、戦士たちは儀式的な敵たち、またお互いと何時間ものあいだ戦い続ける。戦闘はしばしば家路へつく途上、街の路上にまで続く。この儀式の中で多くのアルコス人が殺されるが、それでもこれは愉快な盛儀なのである。 精霊呪文:《棍棒》、《鉄の手》、《火剣》、《火の矢》、《治癒》、《加速》、《惑い》、《抵抗》、《シャーガシュの護り》、《熱狂》、《筋力》、《スタミナ》、《機敏》、《活力》、《早足》、《発火》、《光》。
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シャーガシュ 特殊精霊呪文《シャーガシュの護り》Protection 可変
シャーガシュ 特殊神性呪文《贄(にえ)》Immolate 3ポイント
《崇拝者鼓舞》Inspire Worshippers 1ポイント
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5.破壊者の舞い(ルーン王) (赤き道)“破壊者”は「赤き道」のルーン王兼司祭であり、世界におけるシャーガシュの粉砕の力そのものである。彼らは死と破壊に飽きることはない。なぜなら彼らが殺し滅ぼした生あるもの全ては、カツクルトゥムの不正と不浄の及ばない「封殺の地」の中に保護されることを知っているからである。 シャーガシュの破壊者は数多の敵対者を生贄の儀式戦闘あるいは戦場で殺すこと(過去に少なくとも一つの偉大な戦功を上げていること)でシャーガシュを喜ばせていなくてはならない。通常儀式戦闘では神話上の敵──カツクルトゥム、カルグザント、エレマルス、雄羊の神、セデーニァ──の代理となるものが選ばれる。また候補者は〈メイス攻撃〉および〈槍攻撃〉に90%以上を持ち、以下の技能のうち少なくとも3つが90%以上であること:〈(第三の武器)攻撃〉、〈手技〉、〈盾受け〉、〈舞踏〉、〈集団戦〉、〈ドラム演奏〉。またPOW×3で表される聖試験に合格しなくてはならない。 破壊者が同盟精霊を得るためには、さらなる聖試験(POW×3)に合格した上で4D6のPOWを持つ恐るべきカルトの魔物をうち負かし、服従を誓わせねばならない。 軍事的指導者として、彼らは猛然たる戦いを好む。しかしならがら、シャーガシュは戦の手練手管に精通しており、決して敗北することはなかった。ほとんどの破壊者は軍学院で適切な戦略と強い指揮力の価値を学んでいる。 破壊者の舞いは神性介入を1D10で行うことができ、以下の神性呪文を再使用可で使用することができる。
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《シャーガシュの筋力》Strength of
Shargash 3ポイント 遠隔、特殊、複合不可、再使用可 この呪文は標的の筋力を強化し、STRを3倍にする。呪文が効果を持続する1ラウンドにつき1D6の疲労ポイントを失う。CON×5の目標が疲労により0にまで下がった段階で、呪文は破れ、標的は疲れ果てて倒れる。
《落雷》Thunderbolt 3ポイント
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6.十一者(侍祭) (緑の道)十一者は“貪り喰うもの”として知られるシャーガシュの「緑の道」の相を直接信仰するものたちである。これは死と再生の相である。彼らは「魂の死」儀式を再演することにより、生命のサイクルの中に転生することを求める者として自身を象徴化する。その魂は儀式的に死に、アルコスの大封殺寺院でシャーガシュに捧げられる。この儀式は十一者の魂と正義を試す恐るべき試験が含まれる。もし万一資格に欠けることが判明すれば、彼らは二度と戻ってこない──肉体は火葬され、精神はシャーガシュに貪り食われる。 十一者となるためには、〈(第一の武器)攻撃〉、〈(第二の武器)攻撃〉、〈(第三の武器)攻撃〉に成功し、POW×3で表される聖試験に合格しなくてはならない。また3D6のPOWを持つ精霊との精霊戦闘に勝利を収めなくてはならない(呪文の使用は禁止される)。失敗は死を意味する。 その価値を証明できれば、候補者は十一者となることができる。その魂は“貪り喰うもの”のいる地界に縛り付けられるが、精神と肉体は地上へ残ったままとなる。彼らに《霊魂放逐》は効果がない。十一者はシャーガシュへの奉仕を終えその純粋性を証明できるまで、地上を歩く死者となるのである。これには十一年間にわたる厳しい服従の期間を要する。通常彼らはこの期間が終わる前に死ぬが、もし生き残ることができたのなら、彼は完全な「緑の道のシャーガシュ信者」、高名な戦士となるだろう。死にあたっても、忠実な十一者は周期の中に自らの場所を与えられる。 地界についての知識のため、十一者は戦闘中の恐怖や志気の問題とほとんど無縁になる(シャーガシュその人と“死者の地”を目にした戦士を恐怖させる事がこの地上にあろうか?)。彼らには《惑い》、《熱狂》、《恐怖》、《狂気》、《精神破壊》などの精神に影響を与える呪文は効果を持たない。この恐怖への免疫により、十一者は全く恐れを知らぬ戦士としての評判を得ている。 彼らはまたその残虐性で名高い。彼らは殺害を始めるや、慈悲や善悪の観念を持たない。彼らは最後には全てのものは「封殺の地」へ入ることを知っているのである。 多くの道を完全に理解しようと望む「赤の道」の戦士が十一者となることがある。この戦闘に長けた戦士たちは十一者の将官となり、狂信的にその身を捧げる。 十一者は「破壊者の舞い」と「灰の司祭」の両方の神性呪文を一回限りで使用できるが、「破壊者の舞い」となることはできない。十一者は通常の侍祭の技能制限を受けない。
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《火葬》Cremate
Dead 1ポイント 儀式(浄化)、複合不可、再使用可 この呪文はロウドリルのものと同じである。
《精霊喰らい》Devour Spirit 2ポイント
《煙の舞い》Smoke Dance 1ポイント
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7.灰の司祭 (緑の道)「緑の道」は死、地界、そして再生を包括する大いなる神秘の一つである。この「道」の中心は、シャーガシュの“灰の王”の相である。灰の司祭は儀式を統制し封殺寺院に跳梁する精霊を管理するという重大な役目を務める。 緑の道はまた贖罪と精神的充足の道でもある。人生のやり直しを求める多くの者が十一者に加わり、自由を求める奴隷は封殺寺院で灰の司祭と共に働くことを選ぶ。赤の道の「破壊者」が神の探求の一端として十一者と共に供儀を行うことも稀ではない。 灰の司祭となるのを望む奴隷は、少なくとも十一年間を封殺寺院で下郎として仕えることで教えを受けなければならない。彼らは死体を運び、灰を運び、儀式に使われる物品の配置を行う。十一者として奉仕期間を終えた者は、封殺寺院で短期間の訓練を受けるだけでよい。 灰の司祭になることができるのは、封殺寺院で従者として過ごした者のみである。かような啓蒙を求めるアルコス市民がいても、特別な扱いを受けることはなく、他の候補者と同様の時間を奉仕せねばならない。 候補者は11年間を封殺寺院の奴隷として過ごすか、もしくは十一者として過ごさねばならない。さらに〈浄化〉、〈召還〉、〈舞踏〉、〈ダラ・ハッパ語読み書き〉が50%以上であり、10ポイント以上の神性呪文を持っていなくてはならない。またPOW×3で表される聖試験に合格しなくてはならない。
“灰の王”の司祭は封殺寺院で行われる儀式を統括する。彼らはアルコスの都、その地下にあるカタコンブ、封殺寺院に跳梁する無数のカルト精霊と魔物を扱う。
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大図書館
ビューゼリアン寺院の大図書館は、アルコスを訪れるものにとって最も人気のある訪問地の一つです。図書館は一見小さく見えますが、その地下にある古文書の蔵書は莫大なものになります。トゥル葦で編まれた最近の巻物、羊皮紙の本などが、粘土・銅・骨・ごく稀に鉄(!)製の書字版のある本棚に収められています。ですが、この図書館の聖なる洞窟には、戦の物語や略奪品目録以上の価値有るものが存在します。イェルムガーサ帝が長く忘れられていた『イェルムの輝ける再昇』の書を探索し、発見したのはこの図書館でした。 |
8.下位カルト赤き道の英雄カルトこれまで多くの“破壊するもの”の英雄たちがいた。彼らはシャーガシュの諸王であり守護者であり、神の破壊の完遂の全側面を体現した者たちである。これらの英雄は皆、血色の惑星の上にそれぞれの宮殿を持っている。彼らは従う者たちにその道を示している。 エウスブス Eusibusエウシブスはアルコス出身のシャーガシュの息子の一人であり、戦車皇帝でも騎馬皇帝でもない。彼は古のオヴォスト帝の儀式により皇帝に帯冠した。 この偉大なアルコス人はひとたびは皇帝であったが、コルダフが現れその「神の正義」を示されたとき、コルダフに帝位を譲った。エウシブスは蛮人を同盟者として使い騎馬遊牧民と戦わせたことで名高い(訳注:第一評議会と騎馬遊牧民との間の戦いのこと)。怪物の軍団までもがヴォンラース、コスターディ、ダージーンの各地方の略奪に加わった。後年、コルダフを帝位にふさわしいと認めると、エウシブスは遊撃軍団の王、神器(レガリア)の守護者として皇帝に仕えた。彼はアルコスがムルハルツァーム帝の偉大なる都の一つであることを確認した。彼に従う信者はこの偉大なシャーガシュの戦王の将器、指揮力、部下への寛大さといった特性を見習おうとする。 エウシブスの下位カルトへ属する者は、馬に乗ってはならない。また〈集団戦〉、〈雄弁〉のチェックに成功せねばならない。また彼は寛容であることを期待される。エウシブスに従う者は、通常のシャーガシュ信者にましてイェルムの言葉に従うことを求められる。イェルムの正義への服従が至上のものとされるのである。 ヴォルダンサス Vhordanthus信じられないような筋力とその食欲で知られるこの戦士は、カルマニアの攻城兵器をバラバラにしたことでその名を轟かした。他にもドラストールからの襲撃の際、エリンフラース川の交通を妨げていた“六の角持つナメクジ”を引き裂いたこともある。ドブリアンへの略奪行の際には、カルマニア帝国の守護者、“ライオン馴らし”カダッシュと格闘し彼を投げ倒した。一度など、“貪り喰うもの”への敬愛を表するために、彼は野蛮人どもが見守る中で遊牧民のカーンの愛馬を食べ、その後にそのカーンも喰ってしまったこともあった。 ヴォルダンサスの下位カルトに属する者は、生死を賭した格闘試合で勝利を収めた者でなくてはならない。また肉は生で食べなくてはならない。この英雄カルトの信者は素手のみで戦うときには《筋力》の呪文の効果が倍になる。また食事や飲酒に関係する判定では、CONを+5して判定できる。 トゥロガス Turrogus“騎馬王”として知られるこの英雄は、配下の騎馬戦士を率いはるか遠くまで遠征した。彼はペントの平原を踏破し、クラロレラなるカージョールキの地を略奪し、さらにテシュノスという眠れる地を襲って戦利品と奴隷を民にもたらした。彼は馬術と騎射を知悉していた。トゥロガスは敵を奇襲し恐怖を与えることの価値をよく理解していた。 魔のカーンの治世の間、トゥロガスは邪悪な遊牧民たちを寄せ付けず、武力によってシェン・セレリスの憤怒からアルコスを救った。堕落したダージーン人たちが裏切ってシェンの側にまわり、アルコスを攻撃してきたとき、彼は弓とメイスでそれを叩き潰した。その無礼に復するに彼らを足下に屠り、生き残った者はその好色さを正すために去勢した。トゥロガスは純粋性を守るために世間一般の楽しみに対して節制していたことで知られる。彼が楽しんだのはポロのみだった。このゲームは彼の治世のあいだに再び人気を取り戻し、それは現在まで続いている。 この下位カルトに属する者は、〈騎乗/馬〉、〈弓攻撃〉のチェックに成功し、自分の馬のみでアルコスの外で血色の惑星の一周期(訳注:2年。“ブック・オブ・ドラスティック・レゾリューションズ プラックスの書”29ページ参照)の間生き延びねばならない。このカルトの戦士は、個人的な懲戒を厳しく守らねばならない。彼らはポロを愛しており、全ての都市のチームから引き合いを受ける。物理的な安楽は忌避されねばならない。また出来る限り騎馬の背の上で過ごさねばならない。 トゥロガスは《火焔弓》の呪文を提供する。トゥロガスの堅忍不抜はCON抵抗ロールにおいてCONに+3のボーナスを与える。
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エウシブス特殊神性呪文《渉外》Liaison 2ポイント トゥルガス特殊神性呪文《火焔弓》 Flame Bow 2ポイント
ルカリウス帝の物語
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9.友好カルトイェルム Yelmアルコスではイェルムは曖昧で遠く離れた神だと受け取られている。イェルムは皇帝であり、シャーガシュの父である。イェルムはシャーガシュの「正義の仮面」にすぎないと考えているものさえいる。 イェルムは代々アルコスの外の世界と交渉を持つ人々によって崇められてきたが、それはイェルムのカルトに属することがダラ・ハッパでは強い影響力を持つことになるからである。アルコスにおけるイェルムの重要な相に、ビジーフがある。彼は“殺害された神”である。秋に行われる祭儀ではイェルムの殺害が再演され、シャーガシュの治世の開始を祝う。 聖祝期には、ビジーフを“生まれ変わった神”とするための集団礼拝が行われる。アルコスのイェルムの大寺院は緑の丘の上にある。この場所は、ダラ・ハッパ中の敬虔で勇気のあるイェルム信者にとって特別な巡礼先とされている。神話的な理由から、シャーガシュ信者はイェルム信者の命令に従うよう要請される。シャーガシュ信者はイェルムの命令に従わないこともあるが、これはどうしても避けられないときのみである。 イェルムは「破壊者の舞い」に《天空の槍》(=《太陽槍》)を再使用可で提供する。 オスリラ Osliraオスリラはダラ・ハッパの中心に流れる大河の女神である。彼女は十万人以上の入信者を擁し、河の中に足を入れようとする者すべてになだめられている。アルコスでも千人以上もの人々(ほとんどは女性である)が彼女を信仰している。オスリラとその娘“稲の母”エヴェーリナは、現在は都市周辺の平原を守護している。オスリラの女祭は都市の下水道を洗い流す儀式を執り行い、危急の際にはアルコスの地下門を洗い流すこともある。彼女は《溺死》を灰の司祭に一回限りで提供する。 サジトゥス Sagitusサジトゥスはシャーガシュの“神弓”である。他のダラ・ハッパ人は彼をイェルムの息子、弓使いの神と呼ぶ。彼は《命中》を「破壊者の舞い」に再使用可で提供する。 ハスタトゥス Hastatusハスタトゥスはシャーガシュの“神槍”である。他のダラ・ハッパ人は彼をイェルムの息子、槍使いの神と呼ぶ。《神槍》を「破壊者の舞い」に再使用可で提供する。
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その他のアルコスの重要なカルトビゼルエンスリーブ |
10.その他アルコー、シャーガシュの息子 Alkor,Son of Shargashアルコーの入信者は儀式と都市管理に秀で、シャーガシュの法を知り、以て都市内で正義を施行せねばならない。またアルコーの司祭は一年に一度の穀物蒔き換えの儀式を執り行う。封殺寺院から持ってきた灰を農業の開始にあたって農地に撒くのである。 アルコーの入信者は、アルコスの市民でなくてはならない。加えて1ポイントのPOWを捧げること。アルコーの入信者は時間の5%と収入の1%を捧げるのみでよい。アルコーの神性呪文や神性介入はアルコスや封殺寺院の領域内でしか仕えない。入信者は祈祷師または魔道士であってもよい。 通常、アルコーの司祭は代々続く司祭階級から選ばれる。〈ダラ・ハッパ語読み書き〉、〈ダラ・ハッパ語会話〉が90%以上であること。司祭職に空きが生じたときのみ選抜が行われる。神性呪文はアルコスと封殺寺院の領域でしか使えないが、神性介入はアルコスの外でも行うことができる。司祭は祈祷師や魔道士であってはならない。アルコスのほとんどの官位と同じく、アルコー信者は位冠を得るために儀式的な競争を行う。競争はアルコーの大司祭、緑の王によって裁定される。 一般神性呪文:《破門》、《精神結合》、《聖別》、《隔離》、《アルコー礼拝》。
赤き王の宮赤き王の宮はアルコスの市壁の中にある砦である。砦は赤き丘の高所にあり、都と周囲の地方を望むことができる。宮殿は赤き王の戦士団の兵器廠(しょう)、訓練所として機能する。また宮は破壊者の赤き道の最高寺院でもある。 暗き道の王シャーガシュはあまり知られていない「仮面」を一つ持っている。それは「超越せる暗黒」である。この仮面は、「赤き道」と「緑の道」の両方を歩み、さらにそれらを越えた秘密を見いだした神秘主義者によって信仰されている。 この苦行者はアルコスの街路や地界への道を彷徨い、さらなる神秘を探求し、通りがかる者に時折金言を与える。多くはもはや世間一般の心配事に悩まされることはない。彼らは普通食うや食わずで、ぼろを纏い、灰をかぶっており、泥だらけで酷い傷を負っている。 アルコスの住人は啓蒙の言葉や力の歌を期待して彼らに食事を与え、一時の慰めを与えられることを非常に幸運だと考えている。ときに彼らは彼ら“暗き道の王”の祝福を受けることができるが、そのためには酷い傷を負ったり、ときに死を賭けねばならない。どちらにせよ、寄進者はシャーガシュによって祝福を受けることを非常に喜ぶ。 “破壊するもの”を赤き王が、“灰の王”を緑の王が体現しているように、「黒の王」が存在することが知られている。彼の正体や力は知られていない。「黒き道」を歩む者たちの中、みすぼらしい格好で街路を彷徨っているのだと言う者もいる。黒き王の中のシャーガシュは非常に強力なため、もし彼が怒りを露わにしたなら軍団でさえ士気を失うだろうと言う者もいる。 |
シャーガシュへの祝詞
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アルコスとシャーガシュに関する記事は、Dennis Hoover, Harald Smith, グレッグ・スタフォード, John Medway, Pam Carlson, Martin Laurie の間の議論の中で書かれた。