※若干、下ネタ描写有り?
9月某日。
私は朝早く、英雄の部屋に来ていた。
まだ英雄は寝ている。当然だ。昨日は練習もあったみたいだし、まだ時刻は7時前。あの英雄が起きているはずがない。
素早く机に置かれたノートパソコンを持って、リビングへと足音がならぬように駆け下りた。
「持ってきたわよ千春」
「おっ! さすが沙希さん」
リビングのソファーには、すでに千春、岡倉さん、梓ちゃんが待っていた。
そうして私もソファーにおきて、ソファーの前にあるテーブルに、ノートパソコンを置いた。
「ここからは千春ちゃんの仕事ね。お願い」
「はい!」
そう返事をしてから、素早くパソコンを起動する。
彼女は何度も英雄のパソコンをいじっているらしい。そのせいでパスワードをつけたらしいけど、解けるのかしら?
「あっ、パスワード来たね」
岡倉さんが、画面を見ながら呟いた。
私も画面を伺う。確かにパスワードが必要だった。
「どうするの千春?」
私はパソコンを操作している千春に聞いた。
「安心してください! パスワードは知ってます!」
「えっ? 知ってるの?」
「えぇ、正確には恵那がパスワードを聞いて、私に伝わっただけです」
普通に言っているが、正直妹って凄いと思った。
「はい! 解けました!」
そう言って、ノートパソコンを私達へと向ける。
思わず「ありがとう千春!」と元気な声で感謝していた。
「それじゃあ、英雄のパソコンの中身を見ていきますか!」
私の号令の下、英雄のパソコンの中身を調べていく。
こんか事になったきっかけは数日前。
梓ちゃんとメールをしていた時だった。
この日も、英雄の事で盛り上がり、ふとした疑問が、梓ちゃんから返された。
――英雄君のパソコンの中身には、何が入ってるんだろう?
その疑問に、私も疑問を覚えて、こうして身内の力も借りてパソコンの中身を見ている。
岡倉さんに話したところ、岡倉さんもみたいらしいので、私達の仲間入りをしている。ちなみに、かなりの機械音痴らしい。
「まずは、フォルダね」
私もパソコンを使っているので、手馴れた動きでフォルダを確認する。
ウィンドウ上に書かれたフォルダ名は「俺の成績処理」「他校選手レポート」のみしかなかった。
どちらも確認したが、フォルダ名通りの内容だった。
「馬鹿な! あのエロい英雄のパソコンに、エロいフォルダが一つもないなんて!?」
思わず驚いてしまった。
いつも嘉村と下ネタ話で盛り上がっている英雄のパソコンに、そういった類のフォルダがないなんて、私には思いもよらなかった。
「おそらく、あいつの事だから、隠しフォルダにしてるでしょうね」
ここで千春が口を開いた。
「隠しフォルダ? でも、パスワードをしてるんだよ?」
「あの人は警戒する時は、とことん警戒しますから、貸してください。大体、あいつの隠しフォルダ名は分かります」
そう言って千春は、私の手からパソコンをもらうと、素早くフォルダ検索にかける。
そうして、再び返されたときには、「windows system321」と書かれたエロフォルダが発掘された。
「……英雄」
思わず英雄の警戒ぶりを感じながらも、なんとも情けない気分になった。
覚悟を決めてクリックしても開けない。思わず首を傾げた。
「おそらく決められた文字列を押したことによって、別なプログラムにしたのでしょう。貸してください」
鋭い目をした千春が、またも素早い動きで、英雄のエロフォルダの謎を解いた。
そして、眼下に広がるのは、様々なフォルダ。タイトルだけで、どんなものか分かってしまう。
「…梓ちゃん、岡倉さん。覚悟は良い?」
一度、彼女らに問う。二人はコクリと頷いた。
そうして一つ目のフォルダを開く。
エロフォルダの中身は、想像外だった。
「えっ? 動物?」
そのフォルダ内には、犬や猫を始めとした動物ばかりだった。
「馬鹿な! あいつが、これでエロを保存しないだと!?」
千春も驚いた様子。おそらくこれもダミーなのだろう。
なんと英雄の警戒は凄いものか。
しかし、時間制限があることだし、フォルダの事は一度忘れて、インターネットへと移る。
まず登録されているお気に入り登録を見た所で、絶句してしまった。
数えるのも面倒くさいぐらいの数のサイトが登録されていたが、全て野球に関することだった。
それは、プロ野球関係から高校野球、果ては中学の野球にまで精通している。
一つ一つ見ていたが、最初の5個程度は本物であったと認識する。
それだけで、調べる気も起きなかった。
英雄の野球に対する情熱は、冗談や嘘には使えないみたいだ。
「それじゃ、本題に入るわね」
そうして、私は検索履歴へとマウスを持っていく。
今回の目的、それは英雄がいつも何を調べているのか、それだけが知りたかった。
そして、いざ押そうとした所で、リビングのドアが開いた。
「何してんだお前ら? 朝っぱらから」
寝ぼけ眼で入ってくる英雄。しかし数秒後、テーブルに置かれたノートパソコンを見て、どんどん目覚めているように見えた。
「てめぇら! 何しとんじゃ!」
完全に目を覚ました英雄が、慌ててノートパソコンを取り返した。
「お前ら、何を見た!?」
「えっと…windows system321って書かれたフォルダ」
「そうか」
英雄の口から、あっさりとした返答が飛び出た。
「あれはダミーだから、別に見られても平気か」
「ちなみに英雄、あんたのPCにエロいの入ってるの?」
兄に対しての言葉遣いがなっていない千春が、英雄に聞いた。
「あっ? そんなのねぇよ。エロフォルダは削除したからな」
「えっ?」
思わず声をあげたのは私だった。
「ってか、一度バレた場所に置くわけないだろう。いまどきHDDと言う代物があるんだからな。そこに全て保存してるんだ」
勝者の余裕を見せる英雄。
それを見て、一同、残念な気持ちをこめた溜め息と、安堵の溜め息が一度に吐き出された。
しかし、英雄はHDDについて語ってしまった。
まだまだ私達の戦いは続きそうだ。
最終更新:2011年08月20日 22:49