某日。
咲と和はサークル活動が昼に終わったので椿を連れて近くの公園に来ていた。
以前椿に一人で留守番をさせ、寂しい思いをさせた穴埋めである。
また咲と和は椿に同年代の友達が出来たらいいなあとも考えていた。
公園に到着すると椿は一目散にブランコへ走る。
「わあーい!ブランコー!」
楽しそうに遊ぶ椿を見守り、二人は適当なベンチに腰かける。
すると、椿と同い年くらいの小さな女の子がやってきた。
「あの女の子…和ちゃんに似てる…」
「え?そうですか?」
「うん、そっくりだよ!」
その女の子は赤みがかった肩よりも少し長い髪の毛を高い位置で二つに結んでいた。
「本当にそっくりだなあ…。うーん、椿と仲良くならないかな~」
そんな咲の期待も裏腹に女の子は椿と離れたところで一人遊んでいる。
だが寂しそうにも見えるその姿に椿は興味を持ったのか話しかけた。
「ねえねえ、何してるの~?」
「…お城作ってるんです。」
「ふーん、すごいね!」
「……」
「……」
「……」
「……私も手伝う!」
そう言って椿は城作りを手伝い始めた。
やってるうちに最初は警戒していた女の子もやがては椿と笑顔で遊んでいた。
「ねえ!お名前何て言うの?」
「櫻です。」
「櫻ちゃん?私は椿!」
「椿さん…素敵な名前ですね。」
「咲と和がつけてくれたの!」
「さきとのどか?」
「うん!あそこにいるの!」
そう言って椿は咲と和を指さす。
「いいですね。羨ましいです…」
「櫻ちゃんの名前は誰が…」
「…先生です。……施設の。」
「……」
「…私は小さいときから施設にいたので…おとうさんとおかあさんはよく分からないんです…」
「そっかあ…
私と同じだね!」
「えっ…」
「私もおとうさんとおかあさんよく分からない…でも、咲と和が私のおとうさんとおかあさん!」
そう言った眩しすぎる椿の笑顔に櫻は思わず見入ってしまった。
すると、咲と和が向こうから椿を呼ぶ。
「そろそろ帰るよ~!」
「は~い!じゃ、またお城作ろうね!櫻ちゃん!」
「…はい!もちろんです!」
椿は咲と和と手を繋ぎ、歩いて行った。
途中、何度も振り返り櫻に手を振った。
櫻は椿が見えなくなるまでずっと手を振り続けた。
しばらくすると施設の先生がやってきた。
「櫻ちゃん、今日のお城おっきいけどお友達と作ったのかな?」
「…うん…」
「そっかあー!また会えるといいね!」
「……………………………うん!」
櫻も公園を去ろうとしたその時、櫻はせっかく作った城を崩した。
「あら!どうしてせっかく作ったお城壊しちゃったの?」
「……また、一緒に作る約束をしたからです。」
先生は櫻に向かって微笑んだ。
「きっと、また会えるわ。」
今度こそ櫻は公園を後にした。
今日会った焦茶の髪の少女に、また会えることを期待して。
ONE DAY⑧完
最終更新:2010年04月24日 23:02