某日。
和は夕飯の買い物をしていた。
サークルが終わると咲はバイトに行ってしまうので、週末は大体こうして近くのスーパーで食材を買い込む。
一週間の献立から算出される食材、不足した調味料の補充など完璧に計算して買い揃える。
もちろん女一人で運ぶには大変な量なのだが、和は咲も頑張ってると思い愚痴や弱音は漏らさない。
咲も一度、自分のバイトが休みの日に行こうと提案したことがあるが、休みの日まで手伝わせては咲の身体を休める日が無いと考え、なるべく咲のバイトが休みの日は予定を入れず、ゆっくり過ごすようにしている。
「ふう…これで全部ですね。」
全て買い揃えた和はエコバッグに荷物をまとめ、店を出た。
「あ、和ちゃーん!」
「さ、咲さん?!バイトじゃなかったんですか?!」
「店長が早く上がっていいって言ってくれたんだ!」
「そうなんですか、よかったですね。」
「ん、持つの手伝うよ、和ちゃん!」
「だ、大丈夫です!」
「だって重そうだし…あ!そうだ!」
咲と和はエコバッグの持ち手を片方ずつ持った。
「やっぱり重いね…」
「…でも随分軽く感じます。有難うございます、咲さん。」
「えへへ、いいんだよ」
「今日の晩御飯なに?」
「今日はオムライスです。」
「やった!和ちゃんのオムライス好きなんだよね~」
「ふふ、有難うございます。」
そのうちに家につき、中に入ると珍しい人物を見つけた。
「ただいま~」ガチャ
「って…お友達ですか、椿?」
「おかえりなさい!この間公園行ったときお友達なったの!」
「は、はじめまして…櫻です…」
和はやたらと緊張している様子の櫻に優しく笑いかけた。
「はじめまして。今ココアいれますね。」
「あー和!私も!」
「ふふ、はいはい。」
「和ちゃん、私も。」
「じゃあ皆でお茶にしましょう。」
「「わーい!」」
喜んでいる咲と椿と対照的に、櫻は静かに和の側に移動し、和の服の裾を引っ張った。
「あの…有難う。」
和は一瞬驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「いいんですよ。出来るまで椿と遊んであげてください。」
「うん!」
櫻は走って行った。
お湯を沸かしていると今度は咲がやってきた。
「和ちゃん、手伝おうか?」
「いえ、咲さんはせっかくバイト休みなんですからゆっくりしててください。」
「じゃあ、ここで和ちゃん見てよ♪」
「ど、どうぞ…」
「椿に友達できてよかったね!」
「そうですね。私も嬉しいです。」
「しかもあの和ちゃんに似てる子だよ~!」
嬉しそうにする咲に和も嬉しくなった。
そのとき二人は、いつか椿の両親が現れ咲や和と離れても、あの二人が今の咲と和のようにお互いに支え合って困難を乗り越えて欲しいと、親心のようなものを椿や櫻に感じた。
「椿、櫻ちゃん!できたよー!」
咲が二人に呼びかけるとぱたぱたと走ってくる。
「「はーい!」」
二人の顔には心からの幸せな笑顔があった。
「あちっ!」
「だ、大丈夫ですか?椿さん…」
暗く悲しい過去など、微塵も感じさせないほどの。
ONE DAY⑨完
最終更新:2010年04月24日 23:15