4-634氏 ONE DAY⑩

某日。

咲と和が帰ると、櫻が遊びに来ているのがすっかり当たり前になっていた。

「ただいま~」

「櫻さん、いらっしゃい」

「おじゃましてます!」

「本当二人仲良いね!」

何気なく咲が言うと椿はにこにこと笑顔を見せ、櫻は顔を赤く染めた。

「あれ?櫻ちゃん、熱?」

椿は櫻のおでこに自分のおでこをくっつけた。

「ん~…よく分からない!」

「は…はひ…」

「(天然なところまで咲さんそっくりです。)」

自分の高校時代のことを思い出しながら、台所に立ち晩御飯の支度に取り掛かる和だった。

一方咲はリビングで二人の子供の相手をしている。
最初はよそよそしかった櫻も、朗らかな咲や優しい和に心を開きなついていた。

「和ー!何作ってるの?」

「今日はカレーです。」

「やったあ!かれー!」

「かれー…」

「櫻ちゃんも一緒に食べよ!」

「い、いいの?」

「もちろんだよね?和ちゃん!」

「ええ、最初からそのつもりでした。」

櫻の顔が明るくなり、可憐な笑顔が咲き誇った。

しばらくするとカレーができあがった。
新しく買った4枚目の皿にカレーをよそっていく。

「「「「いただきます!」」」」

元気のよい声のあとは美味しい、という賛同の嵐。
思わず和は嬉しくなり、笑みを溢す。
そんな幸せな光景に櫻はもっとここにいたいと感じた。そして櫻の心を読み取ったかのように椿が言った。

「櫻ちゃん、お泊まりしてきなよ!」

「こら椿、櫻さんに迷惑でしょう」

「そ、そんなことないです!先生に連絡すれば…」

櫻は勇気を出して言ったため、声は震え涙目だった。
人前で大きな声を出すのは初めてだったが、もっと椿と一緒にいたい、という思いが櫻の口を開かせた。

「…櫻ちゃん。」

神妙な面持ちで咲が言った。
その重たい空気に櫻は若干怯えた。

「……はい…」






「番号わかる?」

「…!はい!」

「ん、私が電話するよ!保護者代わりとして。」

咲が櫻から番号を受け取ると電話をかける。
一同緊張して咲を見つめるが、櫻が我が侭を言うのは珍しいらしく、また椿を預かっている事情や咲の必死の説得により信用してくれ、許可してくれた。
咲が受話器を置き、振り返ってピースをつくると椿と櫻は大喜びした。
和はやれやれといった感じだったが、その顔は微笑んでいた。

「櫻ちゃん、一緒に寝よーね♪」

「は…はい…」

真っ赤な顔でうつ向く櫻に、和は昔の自分を見るようだった。




ONE DAY⑩完
最終更新:2010年04月25日 23:25
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