某日。
咲と和が帰ると、櫻が遊びに来ているのがすっかり当たり前になっていた。
「ただいま~」
「櫻さん、いらっしゃい」
「おじゃましてます!」
「本当二人仲良いね!」
何気なく咲が言うと椿はにこにこと笑顔を見せ、櫻は顔を赤く染めた。
「あれ?櫻ちゃん、熱?」
椿は櫻のおでこに自分のおでこをくっつけた。
「ん~…よく分からない!」
「は…はひ…」
「(天然なところまで咲さんそっくりです。)」
自分の高校時代のことを思い出しながら、台所に立ち晩御飯の支度に取り掛かる和だった。
一方咲はリビングで二人の子供の相手をしている。
最初はよそよそしかった櫻も、朗らかな咲や優しい和に心を開きなついていた。
「和ー!何作ってるの?」
「今日はカレーです。」
「やったあ!かれー!」
「かれー…」
「櫻ちゃんも一緒に食べよ!」
「い、いいの?」
「もちろんだよね?和ちゃん!」
「ええ、最初からそのつもりでした。」
櫻の顔が明るくなり、可憐な笑顔が咲き誇った。
しばらくするとカレーができあがった。
新しく買った4枚目の皿にカレーをよそっていく。
「「「「いただきます!」」」」
元気のよい声のあとは美味しい、という賛同の嵐。
思わず和は嬉しくなり、笑みを溢す。
そんな幸せな光景に櫻はもっとここにいたいと感じた。そして櫻の心を読み取ったかのように椿が言った。
「櫻ちゃん、お泊まりしてきなよ!」
「こら椿、櫻さんに迷惑でしょう」
「そ、そんなことないです!先生に連絡すれば…」
櫻は勇気を出して言ったため、声は震え涙目だった。
人前で大きな声を出すのは初めてだったが、もっと椿と一緒にいたい、という思いが櫻の口を開かせた。
「…櫻ちゃん。」
神妙な面持ちで咲が言った。
その重たい空気に櫻は若干怯えた。
「……はい…」
「番号わかる?」
「…!はい!」
「ん、私が電話するよ!保護者代わりとして。」
咲が櫻から番号を受け取ると電話をかける。
一同緊張して咲を見つめるが、櫻が我が侭を言うのは珍しいらしく、また椿を預かっている事情や咲の必死の説得により信用してくれ、許可してくれた。
咲が受話器を置き、振り返ってピースをつくると椿と櫻は大喜びした。
和はやれやれといった感じだったが、その顔は微笑んでいた。
「櫻ちゃん、一緒に寝よーね♪」
「は…はい…」
真っ赤な顔でうつ向く櫻に、和は昔の自分を見るようだった。
ONE DAY⑩完
最終更新:2010年04月25日 23:25