だるま市からの帰り道。
露店の喧騒は既に遠く、暮れなずむ田舎道に二人の影が静かに伸びている。
茜色の空を雁の群れが渡って行くその下で、咲はペダルに乗せた足にありったけの力をこめ、和は自転車を漕ぐ恋人の背中にひしと掴まっていた。
今は夕顔嬉しいけれど 別れ朝顔袖に露
恋人でいられる放課後の時間は短い。
夜を跨いで朝日が昇り、いつもと変わらぬ暮らしが始まれば、人目を思って口付けを交わすこともはばかられる。
まるでそのしがらみから逃れて二人だけの空間を目指すかのように、自転車は走って行く。
早くも宵の気配を帯び始めた空気が、彼女達の頬をかすめていくが、それは世間の風にも似て冷たい。
「和ちゃん、寒くない?」
「大丈夫です」
「それなら良かった……」
「はい……」
先程から、二人の会話は少なかった。
一緒に過ごす時間が幸せであればある程、何故かそれが儚く感じられるのは何故だろうか。
何かを振り切るように自転車は進み、やがて辿り着いた咲の家。
かまちを跨いで扉を閉めた瞬間、二人の唇が合わさる。
「どうして泣いてるの、和ちゃん?」
「わかりません。でも、いつかこの時間が終わってしまうような気がして……」
彼女達の他には誰もいない家に、沈黙が満ちる。
玄関の明りに照らされて、二人の足元に言い難い悲しみの影が落ちる。
それでも
分ければ二つの朝顔なれど 一つにからんで花が咲く
咲その影を振り払うかのように和の体を抱きしめると、
「そんなことないよ」
耳元で囁いた。
「これからもずっと一緒だよ」
「咲さん……」
「汗かいてるね。早く着替えないと風邪ひいちゃうよ?」
「え、え、あの咲さん?」
慌てる和に構わずタイを外すと、咲はその裾に指をかけてセーラー服を一気にまくりあげた。無理矢理万歳させられた和の上半身は、次の瞬間下着を纏うだけとなっている。露わになった桜色のブラを隠そうと咄嗟に腕を回した和だったが、しかしその華奢な両手首を咲の掌に抑えられ、逆に曝け出す格好となってしまった。
「…咲さん……恥ずかしいです」
声は小さくかすれ、目を合わせることも出来ないのか瞼も固く閉じられている。耳まで真っ赤に染めて口にした和だったが、しかし咲はそんな様子に構わず、両手を広げた格好のまま彼女を壁に押し付けた。
「私も時々怖くなるんだ」
「な、何がですか?」
「和ちゃんと一緒にいる時間が幸せすぎて、いつかそれが終わっちゃうんじゃないかって、怖くなる」
「咲さん…」
「だから、もっと和ちゃんのことを感じたい」
そう言うと、咲は無防備に晒された和の胸元に顔を寄せ、下着越しに唇を這わせた。
「や! 咲さん、駄目!」
もどしそうに体を震わせ、いやいやをするように首を振り始めた和を見ながら、咲はその反応を楽しむように下着に覆われていない柔らかな部分にまで唇を這わせていく。
「んん!」
「どうしたの和ちゃん? 変な声出して」
「そんなこと決まって、、、きゃっ!」
咲が下着を咥えて脱がせようとしているのを見て、和は抑え込まれた両手に力を入れて必死に抵抗を試みたが、しかし振りほどけないまま胸を覆う下着はずらされていった。
「駄目です!待って下さい!」
そんな声と共に何度か背中が壁にぶつかる音が響き、
「咲さん!!」
一際大きく口が開かれた後、とうとう彼女の乳首はパットから零れてしまった。蛍光灯の明かりの下、何も隠すものがなくなってしまった我が身を前に、和が恥ずかしさのあまり涙を浮かべる。しかし、
「咲さん、乱暴過ぎます」
「……和ちゃんはしたくないの?」
「それは……」
「私はしたい。和ちゃんと、もっと」
咲に上目遣いに見ながら乳首を口に咥えられ、その瞬間、彼女は涙目のまま顔を跳ね上げた。甘噛みされ、舌先で弄られて、もどかしさに耐えきれなくなるが、しかし抑え込まれた体は動かない。
「うぅぅぅぅぅぅ」
悩ましい声が部屋に響くのを聞きながら、咲は自分の柔らかい舌から逃げることも出来ず、瞼を閉じて睫毛を震わせる和の様子をじっと見守っていた。その額は既に汗ばみ、開きっ放しの口から
「あぁ、んん、あっ」
普段の彼女から想像も出来ない吐息が漏れている。露わになった乳房、壁に貼り付けられた四肢、白い肌、その全てを上目遣いに見ていた咲は、やがて和が脱力するのを認めて彼女のスカートの中に手を忍び込ませた。あれ程嫌がっていたにも関わらず、和は下着の縁から咲の指が侵入してきてももう抵抗せず、ただ咲の体を抱きしめるだけだった。
「和ちゃん、いい?」
返事の代わりに小さく首が上下するのを見て、咲が愛おしそうに口づけする。彼女は下着の中で和の勘所を探り当てると、優しく指を動かした。
「んん!」
「痛くない?」
「大、丈夫です」
「大好きだよ、和ちゃん」
「私も、同じっ、気持ちです」
和が応えて口づけを返し、咲が更に情熱的に勘所を遊ぶ。突き入れられ、かき出されるまま眉間はもどかしげに引き結ばれ、呼吸が早くなる。
「咲さん!」
「うん」
「好き、でっ、す。あぁっ!」
「和ちゃん……」
咲が空いている手を腰に回して和を抱き寄せる。その瞬間
「もう、、駄目っ、です」
和の全身にいきみが走り、そのまま小さく震えた後で彼女は脱力した。
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目を覚ますと私は咲さんの腕に包まれていました。
その細身の体は余分なところなんてありませんが、でも女の子らしい柔らかな感触を帯びていて、抱かれているだけで再び心地よく眠りに落ちてしまいそうなほどです。
出会ったばかりのころは、こんな風に幸せな朝を迎えることなんて想像出来ませんでした。
二人きりでいられるかけがえのない時間が嬉しくて、寝ている咲さんの唇にそっとキスをしたくなります。
「うぅぅん」
柔らかい感触に顔が綻ぶのを感じながら額にかかった髪を後ろに流すと、朝日に白む枕の上に咲さんの涼やかな目元が現れます。何度見ても決して飽きることのないその顔立ちを暫く眺めてから、私は眠っている彼女の稜線が顎や首へと続いていることに気付きました。
それは鎖骨の窪みに薄く影を落とし、更に下った場所、何も着けていない胸に二つの膨らみを描いています。窓からさしこむ朝日の中、その乳房に焦点があった瞬間私は目が離せなくなりました。
それはまるで熟していない果実のよう。触ったら傷んでしまうような無垢なみずみずしさを湛えています。
(勝手に触ったら駄目ですよね)
(でも……)
しばらく逡巡した後、私はとうとう我慢出来なくなりました。恐る恐る、摘み取るようにその膨らみを掌の中におさめ、表皮を剥くように優しく撫でさすります。咲さんの胸に実った果実はまだ少し固いけれど、でもその頂を含むと何とも言えない味わいが口の中に広がりました。
(幸せに味があるなら、きっとこんな感じでしょうか)
思いつつ頂を舌で弾くと、咲さんが
「んん…」
という声を漏らして体をくねらせます。
(可愛い……//////)
私の手の中でもどかしそうに震える彼女の姿に、不思議な充足感がわきました。
「ずっと一緒にいられたらいいですね」
(返事なんてありませんけど)
心に浮かんだままに口にしてもう一度キスをした時、
「そうだね」
眠そうな声が聞こえて驚きました。
「起こしてしまいましたか?」
「ううん。自然に起きたみたい」
「それならいいんですが」
「和ちゃん、もう一回」
「もう一回?」
「もう一回キスして」
(もう! 本当に大好きです//////)
寝ぼすけさんに目覚めの口づけをすると、照れくさそうな笑顔が返ってきました。
おしまい
最終更新:2010年04月25日 23:34