某日。
「これなんだっけ?」
「それは萬子です、椿。」
「おお!さすが櫻!」
「覚えるの早いね~」
「椿もそのうち覚えますよ」
櫻もすっかり椿を呼び捨てで呼ぶのに慣れ、いつものように遊びに来ていた。
すると椿が突然「まーじゃん教えて!まーじゃん!」と暴れ出したので咲と和は、驚きつつも楽しそうに二人に教えていた。
「2枚の組1つと3枚の組4つで役をつくるんです。」
「「やく?」」
「うん、例えば…平和とか、混一色とか色々あるけど…役はやるうちに覚えてこうね。」
椿と櫻は興味津々に説明を聞いた。
大体の説明を終え、皆で一局打ってみようということに。とはいっても、最初はどうすればいいのかわからないということで、咲・和とそれぞれがペアを組み二麻をすることにした。
ペアはじゃんけんで、咲・櫻ペアと和・椿ペアに決められた。
「じゃあ、椿。サイコロのボタンを押してください。」
「はーい!」カチッコロコロ…
咲と和が山から牌をとっていく。それをチビッコ二人が丁寧に理牌していく。両ペア配牌二向聴だった。
「親は私たちですから要らないと思うものを捨ててください。」
「んとー…これ?」
「そうですね。」
「ほい!」タン
「ほら櫻、そこから一個ひいて。」
「は、はい!」
「何捨てる?」
「うーん…これですか?」
「うん、いいと思う。」
ゲームが進むと、咲・櫻ペアが一足早く聴牌した。櫻の無駄のない捨て牌に咲も飲み込みが早いと感心した。
それに数順遅れ和・椿ペアもやっと聴牌。そのとき咲・櫻ペアは待ちが良くなり立直をかけた。
「よ~し!櫻、立直だよ!」
「は、はい!立直!」
そういって櫻は牌を横に置き、立直棒を場に出した。
「のののののの和!どどどどうしよおぉおぉぉ!」
「落ち着いてください、椿。まずは自摸を…」
そこまで言いかけ和にある考えが浮かんだ。
「(咲さんにそっくりな椿ならひょっとして…)」
「椿。自摸は駄目です。」
「へ?」
「櫻の捨てたその牌をカンです。」
「かん?」
「4枚ペアはカン…ってさっき教えたじゃないですか!」
「おお!わかった!カン!」
「そしてここから自摸ってください。」
「え?ここから自摸ってもいいの?」
「いいんです。カンした時はここから自摸るんです。」
そう言われた椿は恐る恐る牌をとる。
「…ん?2、3、3、3…ねえ、和。これって…」
「(まさか本当に和了るとは…)
はい、和了りです。」
「やったあー!」
目一杯喜ぶ椿。それとは対照的に悔しそうな櫻。聴牌していただけに残念なのだろう。
「残念だったね、櫻。でも櫻はなかなか筋がいいよ!和ちゃんみたいな麻雀だった!」
「ほ、本当ですか?!」
"和ちゃんみたい"その言葉は和のようになりたいと思う櫻にとって非常に嬉しかったようで、一瞬で笑顔になった。
「…咲さん。椿も咲さんみたいでしたよ、あの嶺上開花なんか特に。」
「櫻も牌切るの早いのに的確で和ちゃんみたいだった!」
「二人とも覚えるのが早いですね。」
「そうだね…さすが私たちの子、だね?」
「…!そ、そうですね!」
咲と和は幸せそうに、はしゃぐ子供たちを眺めていた。
「櫻!もっかいやろ!」
「今度は負けないです!」
"家族"麻雀がもう一局始まった。
ONE DAY⑬完
最終更新:2010年04月25日 23:41