「原村さん、海に行こうよ!」
宮永さんはそう言って私を誘ったのは一週間前。
夏休みになり少しだけ暇もできて、部活もあるけれど、以前より更に2人でいられる時間が増した。…嬉しい。
私の家に来ていた宮永さんは、2人で眺めていた雑誌の写真を見てそう言った。
「でもこの写真、外国ですよ?」
「ハワイか…いいなー。でも私たちで行くのならやっぱり近場かな…」
私たち。宮永さんは確かにそう言った。
それって…やっぱり。
「ふ、2人きりでですか?」
「うん。…やだ?」
「い、いえ!決して嫌では!むしろ…あの…そっちの方がいいです」
かくして私たちは海へ行くことになった。
―――
海までは電車で移動することになっていて、今私たちはその中にいる。
「いい天気でなによりです」
「そうだねー。嬉しいよ」
私たちの地元は海に接していないから、物凄く楽しみ。
一緒に行くのが宮永さんと、しかも2人きり、人生で一番幸せかもしれない…。
「こうゆうのって…初めてだよね」
「え?」
こうゆうのって…どうゆうのですか?
「ほら…私たち、せっかく恋人になれたのに…それらしいこと全然出来なかったから。だから嬉しいんだ、私」
それは…そうでしたね。
あの日、私の想いが宮永さんに知られてしまった日、あれ以来私たちは恋人になった。特別に、なれた。
だけど…恋人らしい、例えばデートとかをしていなかった。
部活が忙しくて、なかなかそういう機会がなかった。
「私も…凄く、嬉しいです…誘ってくれてありがとうございます…!」
私はお礼を述べた。宮永さんと一緒に旅行。幸せをくれる宮永さん。
私はますますあなたを好きになってしまうようで。
窓際のボックス席、相向かいになれるから、宮永さんの笑顔が真っ直ぐ私に向けられる。…顔が赤くなってしまうのがわかる。
だって、こんなに可愛らしいから。
ショートカットの髪、柔らかな微笑み、宮永さんを象徴するかのような明るい色のTシャツ、とても似合うジーンズ姿…あなたの全てが好き。
などと想うとますます顔が熱くなるから止めておこう。
旅行はまだ始まったばかり。
「原村さんの服って可愛いよねー」
「え?そ、そうですか…?ありがとうございます」
「うん。私も着てみたいよ、そういうの…私には似合わなそうだけど」
「そんなことないですよ!きっと似合いますよ」
宮永さんなら何着ても似合うんだから。
「今度、私のでよければ…貸しましょうか?」
「本当に?ありがとー!」
嬉しそうにする宮永さんを見るとこっちまで歓喜してしまう。
こんなに笑顔が似合う、可愛らしい人を私は知らない。
「…原村さん」
「なんですか?宮永さん」
「ううん、何でもない♪呼びたかっただけ」
「…み、宮永さん」
「何?原村さん」
「何でもないです♪」
などと言い合ったりして、暫くして景色が変わり始める。
「早くつかないかな~」
「着くのはお昼過ぎでしたよね」
「うん。あと二時間くらいか…お昼食べちゃおっか?少し早いけど」
「そうですね。食べちゃいましょう、着いたらすぐ遊べますしね…」
お昼は宮永さんが作ってきたお弁当。
「どうかな…美味くできてるか不安だよ」
宮永さんはサンドイッチを作ってきてくれて、とても美味しそう。
「じゃ、いただきます…」
… 美味しい。レタスとハムが挟まれた、みずみずしいサンドは…なんというか、宮永さんの優しさの味がして。
「美味しいです…!宮永さんは料理が得意なんですね」
「本当に!?ありがとう!朝早起きして頑張った甲斐があったよ」
あなたが朝、台所で一生懸命作る姿を想像するとたまらなく愛おしくなってしまうから困る。
「原村さん…あーん」
「え!?」
「あーん、やだ?」
「あ…あーん」
宮永さんの手から食べさせてもらう。
「お、美味しい…」
「さっきまでのと一緒だよ?」
多分、宮永さんが…くれたから。一層、美味しいんだ。
「あ…見て、原村さん!」
そう言う宮永さんの指差す方を見ると…紺碧の海が広がっていた。
「わぁ…綺麗…」
「もうこんなに来ていたんだね。早く泳ぎたいね♪」
「はい…」
海が近づく。
―――
電車は目的地に到着し、そこから歩いて旅館へ行った。
すぐそばにあったその旅館は、決して新しくないけれど、歴史を感じる佇まいがあった。
海のすぐそばにあるそこは、多くの旅行者が利用している。
2人で泊まるから、さほど広くない座敷の部屋にした。
…狭い方が宮永さんに近づけるのもあるけれど。
「早速海に行く?」
「はい…」
水着に着替えようとするも…一つ気付く。
裸にならないとだった。
顔にすごい勢いで血が集まる。
ど、どうしよう…み、見られちゃう。
合宿の時は、その時も既に好きだったけれど、まだ恋人でなかったからそんなに意識していなかった。
優希たちもいたからかもしれない。だとしたら今は2人きり…。
もしかして…何か、起こってしまうのかな…。
さ、宮永さんになら何をされてもいい、むしろ…されたかったりするんですけど…でも、まだ心の準備が!
「どうしたの?」
「あ、いえ!…着替えるので…」
「あ、見ちゃだめ?」
「えええ!?」
「嘘、冗談だよ…背中同士でいい?」
じ、冗談ですか…。
何だか残念。…宮永さんは私の身体には興味はないのかな…。
「み…み、見てもいいです…よ…」
恥ずかしくて死にそう。何を言っているんだ私は。
でも好きな人だし、ほら…うん。
見られたいのも必然なのだと勝手に思っておこう。
やだな…私はもしかして…淫らな娘なのだろうか。
「そんな、無理しないでよ。恥ずかしいでしょ?」
「いえ…確かに恥ずかしいですけど…み、宮永さんなら…見られてもいい…」
ああ、私の馬鹿…。本音をつい言ってしまう。
「原村さん…ありがとう。私も好きな人だし、見られちゃってもいいよ」
あ…私、自分が見られることしか考えてなかった。
宮永さんの、肢体を…見る?私が?
「いえ、いいです!み、見られません…!」
「え!?」
「あ、違うんです…見たくないんじゃなくて、むしろ見たいんですけど…じゃなくて!あの…」
「わかったよ。原村さんの気持ち、伝わったよ…やっぱり、背中同士にしよう」
「… ごめんなさい」
なぜか無性に申し訳なくなって。
勝手に暴走してしまった。
宮永さん、気を悪くしなかったかな…。
「… 私こそごめんね。原村さんの気持ち、全然考えないであんなこと言っちゃって…」
かくして私たちは背中向かい合わせで着替えるのでした。
ですが…後ろで、布がすれる音がやたらに、耳に入ってしまう。
私は水着に着替え終えた。
「もういい?原村さん」
「はい…もう大丈夫です」
「わぁ…可愛い水着だね♪似合ってる」
「み、宮永さんだって…可愛らしいですよ」
ワンピース型の水着はよく似合っていた。
「いいなー、ビキニが似合う体型で…私なんか全然無いから」
「え!?いや、あの…ありがとうございます…み、宮永さんはこれからですよ」
私には無駄に大きな胸がある。
いつからだったか急成長した。
これのせいで男子に変な目線を向けられて嫌な思いをしたことがあってから、私はあまり好きでない。
「そうかなー。どうやったら大きくなる?」
「わかりません…よく寝てたからかもしれないです」
「そっかー。…あ、早く行こう?」
宮永さんと一緒だとつい長話になってしまうから。
ずっとずっと話し続けたくなってしまったり。
「そうですね…行きましょう」
―――
「わぁ…綺麗…」
青い空の下、更に青い海がそこには広がっていた。
「…広い…ですね」
「…凄いね」
「…はい」
…凄い。海はこんなに青かったのか、私は以前も海には来たことがあったけれど、その時より遥かに綺麗な青がそこにはあった。
「なんだか感動しちゃいました…」
「うん。…入ろ?」
「はい…」
人は沢山いて、でも物凄く混んでいるわけではなく、場所は結構簡単にとれた。
レジャーシートの上に、旅館から来る際に羽織っていた服を脱ぐ。
「行こう、原村さん♪」
「はい…♪」
暑い日照りの中入る海水は冷たく、気持ちがよかった。
「えいっ!」
宮永さんは私に水をかける。
わ、私も。
バシャバシャと、水をかけっこ。
「冷たいね…」
「気持ちいいですね…」
「もう少し深いところまで行こう?」
「はい♪」
手を繋いで、更に進む。腰くらいの深さで止まった。
「なんか楽しいね…ただ海に入っているだけなのに…」
「そうですね…いい心地です」
宮永さんが私を見て笑う。
私も、笑ってしまう。
楽しかった。
これまでのどんな時よりも、宮永さんといるこの今が、どうしてか心の底から幸せだと言える。
…幸せなんだな、私。
「…宮永さんは…今、幸せですか?」
同じ気持ちだったら嬉しい。
「うん、勿論だよ!」
繋いでいた手を少し強く握る。
あなたもまた、握り返す。
水の冷たい中、あたたかさを感じた。
―――
浮き輪で浮かんだりした後、少し休憩をすることになった。
「ジュース買いに行く?」
「あ、いいですね…」
店には沢山の人がいて、並ぶ列は結構長かった。
「何飲む?」
「どうしましょう…」
「トロピカルジュースだって…私それにしようかな?」
結局、2人でそのトロピカルジュースにした。
だけれど。
「あ…!」
宮永さんは浜辺で予期せぬ石につまずいてしまった。
「あちゃー、やっちゃった…」
宮永さんはみんなこぼしてしまった。
「私って何でこんなドジなんだろ…」
肩を落とす宮永さん。
「元気出してください。私の、一緒に飲みましょう?」
「…ありがとう。嬉しいよ」
そうして戻ってきて座り、2人で飲むことになった。
「はい、宮永さん…」
私は一口飲み、渡す。
「ありがとう…でもこれって…間接キス?」
…全く意識をしていなかったから。
また顔が熱くなる。
今日何回目の赤面だろう。
こくこくと飲むあなた。
「おいしいね…原村さんの味もするし」
「~~~!!!」
言葉にならない。なんだろう、この気持ち。
―――
沢山遊んだ後。
さっきまで青かったのに、今はオレンジ色の景色へ変わった海。
「さっきまでとは違う綺麗さがあるね…」
「はい…」
暮色蒼然。沈みゆく太陽は、私たちに別れを告げるかのように、徐々に姿を隠していく。
波打ち際、私は砂浜に落ちていた木の欠片で落書きをする。
それは相合い傘…。
…何かいてるんだか。
「…消しちゃうの?」
「!…見られちゃいましたか」
ずっと夕日を見てるから、気付かないと思っていたのに。
いつからかこちらを見ていたみたい。
「まだ名前書いてないよ…?」
私が書いたのは傘だけで、中には誰もいない。
「…完成、させますか?」
「… うん」
2人で、名前を刻む。
小さな相合い傘だったからか。
手と手がぶつかった。
思わず、見つめあってしまう。
どちらともなく、顔を近づけてゆく…。
目を閉じる。
唇が、触れ合う。
宮永さんの柔らかいそれは、私の心臓を激しく揺さぶる。
どきどきが止まらない……。
夕日が照らす中、私たちはキスを交わした。
―――
海から旅館に戻った私たち。
「お風呂に入ろう?」
大浴場に向かう。
「髪がごわごわしちゃってます…」
タオルを体に巻いて、中に入る。
他にも人は年齢問わず結構いて、小さな子もいた。
「広いね…」
「はい。合宿の時よりずっと…」
私たちは髪や体を洗うのだが。
「ねぇ…原村さん…」
「なんですか?」
もじもじする宮永さん。
「… イヤじゃなかったら……あのさ、髪…洗いっこしない?」
…。可愛いすぎます!
「はい。しましょう♪」
私が先に洗ってあげました。
「痛くないですか?」
「うん、気持ちいい…」
ゴシゴシと、強すぎず、弱すぎない力で。
ふと、宮永さんの背中に目をやる…。
宮永さんは前だけタオルで隠してて、つまり背中は…見える。
「… きれい」
「え!?」
「あ!いや…」
つい言葉が漏れてしまった。
「次は私が洗ってあげる♪」
宮永さんは嬉しそうに私の髪を洗う。
「んっ…」
気持ち、いい…。
「ねぇ… 原村さん。聞いて…」
耳元で小さな声で。
…なんだろう。
突然、まるで小さな子供のようになってしまったみたいな宮永さん。
「……今日……したり、する?」
「…えぇ!?」
したり、する…って、それって…。
「…するって…あれ…ですか?」
「…うん」
「……わ、私で…よければ…あの…」
「…… ありがとう」
それだけ言って、宮永さんは普段通りに戻った。
…今日、私は…結ばれるの?
鼓動が速まる。
「洗い終わったよ」
「あ、ありがとうございました」
ふと気づくと、小さな女の子がこちらを見ていた。
「?なんだろ…」
すると、その子は母親らしい人の元へ行き。
「ねー、ママー!イチャイチャしてるー!!」
「「…!!?」」
私たちは驚いてしまった。
「あ、あはは…」
「…イチャイチャ、してるんだね私たち…」
「… みたいですね」
人前でそんなことしていたなんて恥ずかしくなってしまった。
その後体も洗って、湯船に入る。
「あつっ…」
「大丈夫ですか?」
「あ、うん…」
確かに少し熱い。
徐々に体は慣れたのか、肩まで入る。
一応マナーだし…タオルはとらなければならない…。
つまり、私たちは、一糸纏わぬ姿なわけで。
無性に恥ずかしい。
私の視線は、つい…宮永さんの身体にいってしまう。
「原村さんのエッチ」
「あぅ… ごめんなさい…」
「嘘。…ねぇ、原村さん…合宿の時の流れ星、覚えてる?」
合宿の時か…何故か遥か昔のように感じられました。
「…懐かしいです」
また、あのメンバーで合宿をしたい。
優希、須賀君、染谷先輩、部長、そして…宮永さん。
好きなメンバーで、好きな麻雀。とても楽しかった。
「私…清澄に入って本当によかったです…」
「原村さん…」
「私は優希が清澄に入学するというので入ったんですが…もう清澄以外に入っていたらなんて考えられません…」
この入学してからの半年を別の場所で過ごしていたら、なんて考えられないし考えたくもない。
「私もね…清澄入って凄く楽しいよ。あと…麻雀部に入れて。原村さんに感謝してるんだ、麻雀の楽しさを教えてくれて」
「私こそ、感謝してます…宮永さんみたいな凄い人に出会えて…」
私は知らない世界に踏み込むことができた。オカルトは信じたくないけれど、宮永さんなら…信じたい。そう思うようになって。
「… 熱い…のぼせそう…」
「もうですか?」
「うん…多分お風呂の熱さだけじゃないと思うけどね…」
「…?」
「…は、原村さんと…一緒だから、熱くなっちゃって」
…宮永さんが私を意識してくれる。それがとても幸せで。
「もうあがりましょうか」
「そうだね…く、くらくらする…」
「わ、大丈夫ですか?」
立ち上がりふらつく宮永さん。大丈夫かな…。
「うー…だるいよ」
「…!!」
み、宮永さんがふらふらして、私の…体にもたれこんで…み、密着…!
「みみ宮永さん…あ、あの…」
「むぅ~…あぁ、ごめん…」
「あ、いえ!今のままでいいです!」
「は、原村さん?」
宮永さん…身体が熱い…。
私は彼女を脱衣場まで連れて行った。
―――
晩御飯は海鮮料理。
「わぁ、美味しそー!!」
「ですね…」
座敷の部屋で、浴衣を着た私たちは、2人で机を囲って。
「お刺身は久し振りです…」
「食べよう食べよう♪」
美味。口いっぱいに旨味が広がる。
「はい、あーん」
「あーん…」
気付いたらごく自然にやっていた。
…バカップル?かもわかりないですが。
「美味し…?」
「はい…」
何とも言えない、甘ったるい雰囲気が私とあなたの間にあった。
それがますます私の心に染み込んで、またホカホカというか、そういった何かで満たされる。
「今日は楽しかったね♪」
「はい!宮永さんと来れて幸せです…」
「あ…写真とか、撮ってないね」
「あ…すっかり忘れてました」
優希にたこの写真を撮ってくる約束でした。
「今からでも遅くないし撮ろっか」
「はい…」
というわけで記念撮影。
デジカメで、レンズをこちらに向けて。
「プリントして部屋に飾ろうっと」
「…私にもくださいね」
「うん♪」
―――
夜が来た。
それは生き物が体を休め、明日への体力を回復させるとき。
でも、私たちは…それと違ったことをするみたい。
というのは、…あ、愛の…営み…とか?く、くだらないごまかしはいけませんよね。
つまり、私は宮永さんと、これから、そういったことをしようとしていて、…私はすごく緊張している。
だって…お、大人が…することをこんな私なんかが…うぅ、恥ずかしい。
私は旅館内にある自販機で、気を落ち着けるための水を買った。
一口飲むと…うん、大丈夫。多分。
部屋で待っている宮永さんの元へ向かう…ドキドキがとまらない。
部屋に入る。施錠OK…。
敷かれた二人分の布団。
そこに、1人…横になっている彼女。
「宮永さん…?」
あれ…寝てる!?
まさか…もしかして。
「むにゃむにゃ…はらむら…さん…」
完全に眠りの世界の住人と化した彼女。
もしかして…今日はできないのでは…。
力が抜けた。
「酷いですよ~、宮永さん…しようって言ったのはあなたからじゃないですか~…」
とは言うものの、安らかに眠るあなたを起こせるはずもなく。
「…くす♪可愛い寝顔…」
朝、早起きしたって言ってましたものね…。
沢山遊んだし、疲れちゃったんですね。
「…おやすみなさい、宮永さん…」
彼女に布団をかけ、私も眠ることにした。
少し、残念だったけれども…。
―――
「ほんっとにごめん!」
朝起きて早々、宮永さんは私に謝った。
「いえ、いいんですよ?」
「…私からあんなこと言っといたのに…したかったでしょ?」
「え!?いや、あの…その…はい」
確かにそうですが…。
「また今度でいいですよ、だからそんなに謝らないで下さい…」
「… ごめん」
「そうだ、朝の海でも見に行きませんか?」
というわけで海へ。浴衣から私服に着替え、昨日来た砂浜へやってきた。
「わぁ、また違う景色だね…」
「写真、撮りましょう」
「誰かに撮ってもらおっか…」
近くにいた、若い女性に撮ってもらうことになった。
…横を見ると、なんと昨日お風呂で会った小さな女の子がいた。
「あー、またイチャイチャしてる!」
などとまた言われてしまいました。
私たちは苦笑しかできなかった。
「ごめんなさいね、うちの子が…」
「いえ!全然…」
イチャイチャしてるのには変わりないわけで、あまり人前では自重しなくちゃ。
「いい写真が撮れたね♪原村さん」
「はい…♪宮永さん」
―――
「また来たいね…」
「はい。今度も、2人で…お願いします」
「うん、勿論だよ♪でも他に、部員のみんなっていうのも楽しそうだね」
「そうですが…合宿になっちゃいそうですね」
今は帰りの電車の中。
帰りの電車はやたら速く感じた。
楽しい時間はあっという間。
もう、終わりを告げようとしている。
隣をみる。
そこには私が大好きな人がいて、私に幸せをくれる。
繋いだ手から伝わる優しさ。
あたたかくて、ずっとずっと離したくない。
「…宮永さん…」
「… 原村さん…」
「…好きです」
「…私も、好き…」
以心伝心というのかな。
…心まで繋がった気がした。
こうして、楽しかった旅行は終わりました。
あっという間で、もっともっと一緒に居たかったけれど。
それはこれから、きっと果たされていくだろう願い。
私はまた、隣にいる、最愛の恋人を想った。
最終更新:2010年04月22日 02:55